手術支援ロボット
手術支援ロボットは、医師の操作を支援し、精密で低侵襲な手術を可能にする最先端の医療機器です。導入を検討している医療機関の方々にとって、「操作性はどうか」「安全性対策はどうか」「メーカーによる違いは何か」といった疑問や不安は少なくありません。
本記事では、手術支援ロボットの基本概要から、導入によるメリット・デメリット、実際の導入事例、市場動向、現在市場でプレイヤーとして活躍しているおすすめメーカー情報までを網羅的に解説しています。手術支援ロボットの導入や検討において、まとまった情報源として本記事がお役に立てば幸いです。
以降のページに掲載されている内容は医療関係者を対象に一般的な情報や製品などの情報概略を提供することを目的としています。一般の方や患者様への情報提供を目的としたものではありませんので、予めご了承ください。
また、医療情報のため、こちらの記事での紹介は簡単な概略にとどめてあります。なるべく正確な情報の掲載を心がけておりますが、詳細は各社サイトをご確認ください。
目次
手術支援ロボットとは?
手術支援ロボットとは、医師の操作をロボットが正確かつ繊細に再現し、精密な手術を可能にする医療ロボットのひとつです。現在主流となっているのは「マスタースレーブ方式」で、医師が操作するコンソールとロボットアームが連動し、微細な動きまで再現することができます。
腹腔鏡下手術、泌尿器科、婦人科など、多岐にわたる分野で活用が広がっており、低侵襲性という特徴から、特にやデリケートな部位の手術やいわゆるマイクロサージャリーの分野で威力を発揮します。また、近年ではAIや画像解析技術の進化により、術中ナビゲーションや術後データのフィードバック機能も開発されつつあるような状況です。
それでは、手術支援ロボットを導入することで実際に何が変わるのか、メリットとデメリットを見ていきましょう。
導入前と後で何が変わるのか? 手術支援ロボットのメリット・デメリット
手術支援ロボットは、従来の手術方法と比べてさまざまな利点がありますが、一方で課題も存在します。この章では、医療機関や患者にとっての視点から、手術支援ロボットの導入によるメリット・デメリットをまとめました。
手術支援ロボットを導入することのメリットは以下の通りです。
一方で、デメリットは以下の通りです。デメリットを踏まえて、長期的な視点から導入を検討しましょう。
次は、手術支援ロボットを実際に導入した医療機関の事例を紹介します。現場での成功例を通じて、より具体的なイメージを持っていただけるでしょう。
手術支援ロボットの導入事例
日本国内でも複数の医療機関が手術支援ロボットを導入しています。導入した結果手術精度の向上が実現したり、一部報告では患者の術後満足度が改善したりといった成果も紹介されています。
- 東京医科大学病院:泌尿器科においていち早く「da Vinci」を活用。術後合併症の減少と短期退院を実現
- 大阪大学 呼吸器外科:平成26年10月よりロボット支援手術を開始し、平成27年8月までに6例を実施
- 国立がん研究センター:2024年2月にロボット手術・開発センターを開設、がん手術に手術支援ロボットを導入し、難易度の高い手術への対応力を強化
出典①:東京医科大学病院「ロボット手術について」
出典②:大阪大学呼吸器外科「『da Vinci S(Si) Surgical Systemを用いたロボット支援手術に関する臨床研究』についてのご説明」
出典③:国立がん研究センター「ロボット手術・開発センター」
続いて、手術支援ロボットの市場動向と直面する課題について解説していきます。
手術支援ロボットの市場規模と課題
手術支援ロボットの市場は、保険適用の範囲拡大や医師不足への対応、技術革新などの要因により、国内外で急速に成長中です。日本では人工関節全置換術や三叉神経痛治療での保険適用が進み、市場発展を後押ししています。
特に注目すべきは以下の要素です。
- ロボット単価が数億円、維持費も年間数千万円と高額ながら、需要は拡大傾向
- 参入企業が増え、製品の多様化と競争が加速している状態
- 2020年代前半からの前年比成長率が120%〜270%に達するなど、市場は活況
一方で、次のような課題も存在します。手術支援ロボット普及にあたり、解決する必要のある問題として残っています。
- 医師や看護師に対する操作訓練・教育体制の強化が急務
- 導入機関の経営負担を抑えるための補助金制度などの整備が必要
- 認証取得やガイドライン整備が国ごとに異なり、国際展開には規制対応が必要
(出典:1台2億5,000万円…高すぎて日本で普及しなかった「ロボット手術」近年急速に普及が進むワケ【医師が解説】)
次は、手術支援ロボットを提供する主要なメーカーとその特徴を紹介します。
代表的なプレイヤーをピックアップ! 手術支援ロボットのおすすめメーカー
手術支援ロボットの選定において、どのメーカーの製品を選ぶかは非常に重要です。ここでは、実績・技術力・導入事例が既にあるおすすめのメーカーを紹介します。特徴を比較しながら、自院に最適なロボット選定の一助にしてください。
医療情報のため、この章での紹介は各社の簡単な概略にとどめてあります。詳しい情報は各社サイトをご参照お願いします。
Intuitive Surgical / インテュイティブ・サージカル
メーカー名 | Intuitive Surgical / インテュイティブ・サージカル |
設立年 | 1995年 |
本社 | アメリカ・カリフォルニア州 |
概要 | 手術支援ロボット「da Vinci」を世界展開する医療機器専業メーカー |
インテュイティブ・サージカルは、1995年に米国カリフォルニア州で設立された手術支援ロボットのパイオニア的存在です。世界71カ国以上に展開しており、累計設置台数は1万台を超え、圧倒的な信頼と実績を築いています。
同社の代表的な手術支援ロボットは「da Vinci Surgical System」で、幅広い診療科目に対応可能なモジュール設計と高精度な動作が評価されています。4アームのEndoWrist機構と包括的なトレーニングエコシステムによる汎用性と教育体制がポイントです。
東京大学病院や慶應義塾大学病院など、日本国内でも750台以上が導入されており、世界累計では1,700万件以上の手術で使用されています。
メディカロイド / Medicaroid
メーカー名 | メディカロイド / Medicaroid |
設立年 | 2013年 |
本拠地 | 兵庫県神戸市 |
概要 | 手術支援ロボット「hinotori」を手掛ける医療ロボット専業メーカー |
メディカロイドは、2013年に設立された兵庫県神戸市に本社を構える医療ロボット専業メーカーです。川崎重工とシスメックスの共同出資で創業されました。
主力製品は「hinotori Surgical Robot System」で、これは国産初の手術支援ロボットとして開発され、日本の医療現場に最適化されています。8軸アームと、日本の手術室環境に適応したコンパクト設計による取り回しの良さが特徴です。
神戸大学病院や九州大学病院では、主に前立腺摘除手術などで導入されており、国内外での実績も着実に積み重ねています。
リバーフィールド / Riverfield
メーカー名 | リバーフィールド / Riverfield |
設立年 | 2014年 |
本社 | 東京都港区 |
概要 | 空気圧駆動の触覚再現型手術支援ロボットを開発する大学発ベンチャー |
リバーフィールドは、2014年に設立された東京発の大学発ベンチャーで、革新的な空気圧技術を活用した手術支援ロボットを開発している企業です。医師の触覚を再現する技術で注目されています。
主な製品は「Saroa Surgical System」およびEMARO Endoscope Manipulatorで、Saoraは力覚フィードバックにより鉗子に加わる力覚を推定、直感的に操作できる点と空気圧制御による安全性が特徴です。
東京医科歯科大学病院での大腸切除症例など、今後の更なる開発の進展が期待されています。
ソニーグループ / Sony Group
メーカー名 | ソニーグループ / Sony Group |
創業年 | 1946年 |
本社 | 東京都港区 |
概要 | 画像・センシングとAIを活かして医療分野へ参入する総合エレクトロニクス企業 |
ソニーグループは、1946年創業の日本を代表するエレクトロニクス企業で、医療分野への技術応用にも積極的です。画像処理やセンシング、AIの分野で蓄積されたノウハウを活かしています。
現在開発中の製品は「Microsurgery Assistance Robot」で、マイクロサージャリー領域に特化した次世代手術支援ロボットとして期待されています。自動器具交換と手振れ補正で超微細血管吻合などのスーパーマイクロサージャリー領域の手術を支援できる点が特徴です。
2024年の国際会議ICRAでプロトタイプが発表され、注目を集めました。
ここまで、手術支援ロボットを開発しているプレイヤーを紹介しました。気になるロボットがあれば、ぜひ詳しく調べてみてください。
手術支援ロボット関連記事
手術支援ロボット関連記事はまだありません。