警備ドローン
警備ドローンは、AIや自動航行技術を活用して施設やエリアを常時監視できる、次世代の警備手段です。「人手が足りず巡回が行き届かない」「夜間や広域の監視に限界を感じている」といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、警備ドローンの基本情報から種類の違い、導入するメリットや注意点、実証実験について、さらにおすすめ開発メーカーやドローン警備サービスを展開している企業まで網羅的に解説します。
記事を読むことで、警備ドローンの導入に必要な知識が一通り理解でき、最適な製品・サービスの選定に自信が持てるようになるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
目次
警備ドローンとは? 基本情報や実際の事例も紹介
警備ドローンとは、企業施設や公共空間などにおける警備・監視業務を担うために設計された無人航空機のことです。近年の人材不足や広域施設の監視ニーズの高まりを受け、導入が徐々に進んでいます。カメラ・センサー・AIなどの技術を活用し、不審者の発見・追跡、異常の検知、夜間監視などを自動または遠隔操作で行います。
実際の導入事例としては、空港や大型工場、物流施設などでの定期巡回に加え、イベント会場や災害時の一時的な警備にも活用されています。また、自治体による防犯対策としての運用も増えつつあり、すでに実用段階にあるテクノロジーといえるでしょう。
次の章では、警備ドローンの種類について、機体構造や監視方式ごとに詳しくご紹介します。
どんな種類があるのか? 警備ドローンを機体の違いと監視方式に分けて紹介
警備ドローンには様々な種類があり、用途や施設環境によって適したタイプを選ぶ必要があります。ここでは代表的な4つの型を紹介します。
ドローンボックス常駐型(自動離着陸)
このタイプは施設敷地内に専用のドローン格納庫(ドローンボックス)を設置し、スケジュールに応じて自動離着陸と充電を繰り返します。異常検知時にも自律的に発進し、リアルタイムで映像を送信するなど、高い自動化が特徴です。
テザー(有線給電)型/長時間上空監視
テザー型は地上の給電装置とドローン本体が有線で接続されており、バッテリー切れの心配なく長時間飛行が可能です。主に広域監視や群衆観察、災害時の空撮などに活用されます。
屋内巡回(天井ドック)型
工場・倉庫・ビル内などの屋内空間を対象に設計されたドローンです。天井などに設けた専用のドックを拠点とし、定時でフライトしながら監視や撮影を行います。
VTOL/固定翼ハイブリッド型(広域パトロール)
垂直離着陸が可能なVTOL型は、ドローンと飛行機の利点を併せ持つ構造で、広いエリアの巡回監視が可能です。山間部や広大な工業地帯などでも効率的に活用されます。
次の章では、こうした警備ドローンを導入することで得られるメリットについて、具体的に解説していきます。
警備ドローンによるメリットは?
警備ドローンを導入することで、これまで人手によって行われていた警備業務を自動化・効率化できるようになります。AIやセンサー技術との連携により、従来の警備手法では得られなかった新たな付加価値も提供されます。
特に複数の広大な敷地を保有している企業や、深夜帯における警備強化が必要な施設では、コスト効率の面でもドローン警備の導入が現実的な選択肢となっています。
次の章では、警備ドローンの利点だけでは語れない「課題やデメリット」についても、正確に把握していきましょう。
通常の警備と比べた時の警備ドローンの課題やデメリット
警備ドローンは多くの利点を持ちながらも、導入・運用には一定の課題やデメリットが伴います。特に法律・インフラ・運用体制の観点では、導入前に十分な検討が必要です。
また、AIやセンサーによる異常検知の精度が上がったとはいえ、100%の正確性を保証するものではありません。異常検知後の対応は人手による判断が不可欠である場合もあり、完全無人化にはまだ一定のハードルがあるのが現状です。
次の章では、これらの課題を克服すべく全国各地で実施されている「実証実験」について紹介し、警備ドローンの現在地と将来性に迫ります。
実証実験の実施状況~警備ドローンの現在地
警備ドローンの社会実装を目指して、国内外の企業・自治体・研究機関が連携し、様々な実証実験が行われています。ここでは、最新の代表的な実証実験を紹介し、その将来性についても考察します。
Skydio Dock for X10による施設内自動運航
2025年、神奈川県南足柄市の日本端子株式会社敷地において、セコムとKDDIスマートドローンが共同で自律飛行型警備ドローンの実証を実施しました。ドローンボックスからの自動離着陸、昼夜の巡回、GPS非対応エリアの飛行などを行い、「24時間稼働型ドローン警備」の有用性を確認しました。
太陽光発電所での多数機同時夜間監視
2024年末、NEDOとKDDIは、複数拠点に設置したドローンから1人の操縦者が3機を夜間同時運航する実証に成功しました。盗難対策として、赤外線カメラによる人物検知・即時通報が実現され、無人による防犯監視の可能性が広がりました。
ドローン群による自律協調飛行(災害・警備用途)
2024年秋、福島ロボットテストフィールドにおいて、東京大学、産総研、ALSOKなどが協力し、複数ドローンが連携して3D空間をリアルタイムに把握・記録する実証を行いました。警備に限らず、災害現場や廃炉作業でも応用が期待されます。
警察初動対応での実証(石川県七尾市)
2024年、Skydio X10を活用し、ローソン店舗から警察が遠隔でドローンを発進。最長約5km離れた場所まで飛行し、行方不明者の捜索や事故現場の状況把握を迅速に行う検証が行われました。これは、緊急時の初動対応としてのドローン活用の先駆的な事例です。
その他の注目実証
- 都市部(丸の内)での複数機UTM運航の実証(三菱地所・テラドローン)
- 物流施設屋根点検と監視を一体化(住友商事・センシンロボティクス)
- 農園地帯で果実盗難対策に赤外線と照明での夜間監視(JDRONE・甲州市)
これらの実証を通して、警備ドローンは以下のような将来性があると言えるでしょう。
- 24時間無人運航と多拠点監視の両立
- 群飛行・AIによる高精度監視と分析の実現
- 災害・緊急対応にも応用可能な迅速性と柔軟性
レベル4飛行(目視外自律飛行)制度の施行を背景に、法整備・通信環境・AI性能の進化が進むことで、警備ドローンは今後ますます社会インフラの一部として重要な役割を果たすでしょう。
警備ドローンの選び方~失敗しないための重要ポイント
警備ドローンは単に飛行できればよいというものではなく、施設環境や警備目的に応じて、最適な機体と周辺機能を選定する必要があります。ここでは、警備ドローンを選ぶ上で特に重要となる3つのポイントを紹介します。
RTK-GPSやLiDARによる高精度自律飛行・自動帰還機能の有無
警備ドローンの選定において、まず注目したいのがRTK-GPSやLiDARによる高精度自律飛行・自動帰還機能の有無です。 巡回ルート周辺の障害物の密集度や、GPS信号が入りにくいエリアの有無、さらには精密な飛行ルートの再現性をどこまで求めるかといった要因によって最適解が異なります。
これらを見落とすと、機体が誤ったルートを飛行したり、障害物と衝突する危険性が増し、最悪の場合は墜落や行方不明となって警備が機能しなくなるおそれがあります。特に高層ビルが密集していたり、樹木が多く見通しが悪い広域施設での定時巡回には、正確な航行が重要です。
遠隔操縦なしで毎回同じルートをセンチメートル級精度で再現でき運用負荷を削減できるという点で、高精度飛行機能の有無は押さえておきたい項目です。
光学ズーム・赤外線サーマルなど複合センサー搭載機
次に検討すべきは、光学ズーム・赤外線サーマルなど複合センサー搭載機かどうかという点です。 監視するエリアの明るさの変動や、警戒対象が人なのか車両なのか、あるいは夜間にどれほどの距離で識別したいかといった観点によって左右されます。
センサーの性能が不足していると、夜間や悪天候下では不審者や動物の侵入を見逃すリスクが高まり、誤報が増えて警備体制が形骸化する可能性があります。とりわけ、昼夜を問わず動態監視が必要となる屋外の倉庫や工場施設、プラント敷地では、この項目が重要です。
昼夜天候を問わず熱源や微細動きを捉えられ早期警報で被害を未然に防げるという点で、複合センサーの有無が警備ドローンの価値を左右します。
自動ドッキングステーションの耐候性・充電・データ回収機能
もうひとつ押さえておきたいのが、自動ドッキングステーションの耐候性・充電・データ回収機能です。 パトロールの実施頻度、ドローンのバッテリー容量、そして設置場所における電力供給や通信環境が整っているかによって決まってきます。
以上の検討が不十分だと、充電やデータ回収のたびに作業者が出向く必要があり、無人警備のはずが人件費や稼働ロスの増大につながります。特に365日体制でドローンを巡回させたい物流拠点や、現場人員が限られている遠隔地施設では、自動化の度合いが警備の安定性に直結するため、注意が必要です。
無人で連続運用できダウンタイムを最小化し人的リソースを他業務へ転換できるという利点があるため、ドッキングステーションの性能は導入の成否を分ける鍵になります。
これらの選び方を踏まえることで、現場の警備要件に最も適した警備ドローンの導入が可能になります。次は、導入において信頼できるメーカーや提供企業について紹介します。
警備ドローンを開発するおすすめメーカーやサービスを展開する企業を紹介
ここでは、警備ドローンを開発しているメーカーや、ドローンを使った警備サービスを展開している企業を簡単に紹介します。
※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。
セコム/SECOM
メーカー名 | セコム/SECOM |
設立年 | 1962年 |
本社 | 東京都渋谷区 |
概要 | 総合警備サービス企業 |
セコムは1962年設立、東京都渋谷区に本社を置く国内最大手の総合警備サービス企業です。自社開発のAI画像解析技術と全国の緊急対処網を統合し、遠隔監視員介在のもと、24時間監視を可能とする遠隔運用システムが特徴です。
警備用ドローンとしてはセコムドローンXXを展開しており、高精度な映像監視と異常検知に対応しています。国内初のレベル3商用運用で8年以上蓄積された豊富な実運用データと信頼性の高さがポイントです。
美祢社会復帰促進センターでの施設巡回をはじめ、スタジアム(実証段階)や企業施設などでの常時運用実績があります。
綜合警備保障(ALSOK) / Sohgo Security Services
企業名 | 綜合警備保障(ALSOK)/Sohgo Security Services |
設立年 | 1965年 |
本社 | 東京都港区 |
概要 | 大手総合警備会社 |
綜合警備保障(ALSOK)は1965年に設立され、東京都港区に本社を構える大手警備企業です。全国に240名以上の社内ドローン操縦士を配置し、100機を超えるSkydio製ドローンを活用した即応警備体制を構築しています。
ドローンによる警備ソリューションはALSOKドローンパトロールサービスとして提供されています。GNSSが使えない屋内でもSkydioによる自律飛行が可能で、人手不足の現場に高い即戦力を提供できる点が特徴です。
東京スカイツリータウンでの屋内巡回、メガソーラー施設での夜間警備、外壁点検などの実績があります。
セントラル警備保障(CSP)/ Central Security Patrols
企業名 | セントラル警備保障(CSP)/Central Security Patrols |
設立年 | 1966年 |
本社 | 東京都新宿区 |
概要 | 中堅総合警備サービス企業 |
セントラル警備保障(CSP)は1966年設立、東京都新宿区に本社を構える中堅警備会社です。自社開発の「CSP-Dシリーズ」では、有線給電や狭小空間対応といった特殊仕様のドローンを展開しています。
提供しているドローンサービスはCSPドローンサービスで、巡回警備と点検を一体化したパッケージとして活用可能かどうか実証段階です。一定の制約はあるものの、テザー式給電とGPSレスの自律飛行によって、狭所や暗所でも安定した長時間監視を実現できる点が魅力です。
Liberawareとの屋内巡回サービスや、SEECAT’24でのデモンストレーション実施などが代表的な活用例に挙げられます。
KDDIスマートドローン / KDDI SmartDrone
企業名 | KDDIスマートドローン / KDDI SmartDrone |
設立年 | 2022年 |
本社 | 東京都千代田区 |
概要 | 通信キャリア系ドローンサービスプラットフォーマー |
KDDIスマートドローンは2022年設立、東京都千代田区に本社を構える通信系ドローン企業です。モバイル回線とクラウドによる遠隔運航管理システムを強みに、全国どこからでも複数機を制御できる技術基盤を提供しています。
警備ソリューションとしてはスマートドローン警備ソリューション(Skydio Dock for X10連携)を展開しています。通信インフラと自動充電ドックを組み合わせた常時監視体制を、低コストかつ持続的に構築できる点が魅力です。
埼玉スタジアム2002での実証や、太陽光発電所での夜間トライアル、セコムとの共同Dock実証(2025年)など、多数の実績があります。
警備ドローン関連記事
警備ドローン関連記事はまだありません。