ソーター
ソーターとは、物流や製造の現場で人手を介さずに仕分け作業を行う自動化機器であり、近年の人手不足や業務効率化の流れを受けて、各業界で導入が進んでいます。
しかし、「種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」「導入して本当に効果があるのか不安」——このように感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ソーターの基本情報から、代表的なタイプや選び方、導入時のメリット・デメリット、さらには用途事例やおすすめメーカーまで、体系的に解説しています。
ソーターについて正しく理解し、自社にとって最適な選定・導入判断ができるようになるための情報を網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ソーターとは? 基本情報や実際の事例も紹介
ソーターとは、主に物流や製造現場などで商品や部品を自動で仕分けるための機械装置です。近年では、AIやロボット技術との融合により、より精度の高い仕分けや柔軟な対応が可能となりつつあります。また、人手不足が深刻な課題となっている業界では、作業効率や正確性を向上させる手段としてソーターが注目されているのが現状です。
具体的には、宅配業者の仕分けセンターや倉庫で、荷物を宛先別に分類する場面や、アパレル・医薬品・食品業界などで多品種の製品を素早く処理する工程で活用されています。物流のデジタル化・自動化が進むなかで、ソーターの役割はますます重要になってきています。
大手物流企業でも24時間稼働の仕分けセンターに数十台以上のソーターを導入し、1時間に数万個の荷物を仕分ける体制を構築しました。このような導入事例は、生産性向上の成功例として業界内でも話題となっています。このように、ソーターは単なる機械ではなく、現代の物流や製造業の効率性と品質を左右する要となる存在です。
続いては、ソーターのタイプごとの特徴と、それぞれの種類について詳しく解説します。
ソーターのタイプとそれぞれの種類を解説
ソーターには、用途や処理能力、設置スペースなどに応じて様々なタイプが存在します。主に「コンベアタイプ」と「ロボットタイプ」に大別され、それぞれに細かな方式があります。以下では、それぞれの特徴と違いについて詳しく解説します。
コンベアタイプ
スライドシュー方式
スライドシュー方式は、コンベア上を移動する荷物に対し、シューと呼ばれる部品が横方向にスライドして、荷物を指定のシュート(出口)へ押し出す方式です。
ポップアップ方式
ポップアップ方式は、コンベア上に埋め込まれたローラーやベルトが一部持ち上がって、荷物の向きを変えて分岐させる方式です。
クロスベルト方式
クロスベルト方式は、小さなベルトコンベアが載った台車が主ライン上を走行し、任意のタイミングで荷物を左右に排出する方式です。
ロータリー方式
ロータリー方式は、ターンテーブルのような円盤が回転し、荷物を目的の方向へ押し出す方式です。
プッシャー方式
プッシャー方式は、固定のコンベアラインからアームなどで荷物を横方向に押し出す方式です。
ダイバータ方式
ダイバータ方式は、荷物の流れを制御するアームやベルトで強制的に方向を変えて仕分ける方式です。
チルトトレイ方式
チルトトレイ方式は、傾斜するトレイが荷物を左右どちらかに滑らせて排出する方式です。
ロボットタイプ
立体型仕分けロボット
立体型仕分けロボットは、高さのあるラックや棚を対象に、垂直・水平方向に移動しながら商品を自動でピッキング・仕分けするタイプのロボットです。複数の棚が高密度に並んだエリアでも活用でき、省スペース化と在庫管理の効率化に寄与します。
自律型ロボット
自律型ロボットは、AMR(自律走行搬送ロボット)やAGV(無人搬送車)のように、倉庫内を自律的に移動し、荷物の搬送や仕分けを行うロボットです。マップ情報やセンサーを活用して、障害物を回避しながら複数の地点を自動で移動します。
平面型ロボットソーター
平面型ロボットソーターは、倉庫や仕分けラインの床面上を高速で走行しながら荷物を搬送・仕分けするロボットです。ターンテーブル型や多方向ベルト型を備えた機種が多く、柔軟な導線設計が可能です。
ソーターの種類ごとの特性を理解することで、自社の業務に最適な選択ができるでしょう。 続いては、ソーター導入によって得られるメリットと、人手による仕分けとの違いについて解説します。
導入によって期待されるソーターのメリット|人手による仕分けとの違い
ソーターを導入する目的は、「仕分け作業の効率化」と「人手不足の解消」です。人力による仕分け作業は、スピード・精度・持続性に限界があり、人的ミスや労働環境の問題も発生しやすい傾向があります。
一方、ソーターは一貫して安定した速度と精度で仕分けを行うことができ、ヒューマンエラーを抑えるとともに、作業者の負担を軽減します。結果として、業務全体の効率が向上し、トータルコストの削減にもつながるのです。
さらに、WMS、TMSやAI、センサーと連携することで、リアルタイムでのデータ分析やトラッキングも可能となり、物流品質の見える化と改善にも貢献します。
また、繁忙期や急激な出荷量の変動にも柔軟に対応できるのがソーターの特徴です。人員増強では対応しきれない負荷にも、ソーターは24時間稼働によって対応でき、ビジネスの安定運営に寄与します。
次は、反対に導入時に直面しやすいデメリットや課題について解説します。
ソーターの導入によって生じるデメリットや導入にあたっての課題
ソーターの導入は多くのメリットをもたらす一方で、注意すべきデメリットや導入課題も存在します。これらを把握せずに導入を進めてしまうと、想定外のコスト増加や運用トラブルに繋がる可能性があります。
特に中小規模の現場や初めて自動化に取り組む企業にとっては、慎重な検討が不可欠です。
導入後にもメンテナンス体制の整備やトラブル発生時の対応フローを明確にしておく必要があります。ソーターは高精度な装置であるがゆえに、保守・修理の難易度が高く、稼働停止による影響も大きくなりがちです。
事前に自社の作業量や業務フローと照らし合わせ、必要なスペックや対応力を備えた機器を選定することが、導入成功の鍵となるでしょう。
ソーターの導入はコスト面だけでなく、組織全体の業務体制を見直すきっかけにもなります。 次は、ソーターがどのような分野や用途で活躍しているのかを詳しく見ていきましょう。
どんな分野で使用されるのか|物流などソーターの用途について
ソーターは、その高い仕分け性能と自動化による効率性から、さまざまな業界・分野で幅広く活用されています。特に物流業界を中心に、製造、流通、小売、医薬品、食品など、多品種・大量処理が必要な現場で不可欠な存在です。
以下に、代表的な用途と活用シーンを紹介します。
- 物流センターでの出荷先別・エリア別仕分け
ECサイトの普及により、1件あたりの出荷量が増えた現場では、ソーターによる高速仕分けが導入されています。 - 製造業における部品や完成品の仕分け
自動車・電子機器などの工場では、部品を工程別に分けるためにソーターが使われています。 - 食品・医薬品業界における品目ごとの選別
賞味期限やロット番号など細かい管理が必要な現場でも、正確な仕分けが可能です。
近年ではロボットタイプのソーターを活用し、ピース単位での仕分けが必要なアパレル物流や書籍・雑貨の仕分けにも対応しています。これにより、従来では人手に依存していた業務も自動化されつつあります。自治体や公共機関などでも、リサイクル品や郵便物の仕分けなどにソーターの導入が進んでおり、その用途は年々広がっています。
ソーター選びで押さえるべき3つのポイント
ソーターを導入する際には、自社の業務内容や物流環境に最適な機種を選定することが不可欠です。誤った選択は、期待した自動化効果を発揮できないだけでなく、追加の人員負担やコスト増につながるリスクもあります。ここでは、ソーター選びにおいて特に重視すべき3つの視点について解説します。
処理速度と搬送安定性を左右する仕分け方式の選定
ソーターの選定ポイントとして、まず重要になるのが仕分け方式の選定です。クロスベルト、スライドシュー、チルトトレイなどの方式は、それぞれ処理能力や荷物の安定性に違いがあります。取り扱う商品のサイズ・重量・底面形状、さらにピーク時に求められる毎時処理数などによって影響を受けます。
適切でない方式を選んでしまうと、仕分け速度が不足しラインが詰まり、出荷遅延や顧客への納期遅れが発生する可能性が高まるでしょう。とくに、多品種少量と大量ロットの混在や日ごとの物量変動が激しい物流センターでは、方式選定は慎重に検討すべき重要な項目です。
最適方式を選べばエラー率が下がり、保守停止時間も短縮できて稼働率が向上するでしょう。
荷姿適合性を考慮した商品特性への対応力
ソーターが対応できる商品特性への対応力もポイントです。対象となる商品の最小〜最大サイズや割れ物、液漏れの有無などに対して、ソーターが確実に対応できるかを見極める必要があります。可搬対象のサイズ・重量分布、素材(ガラス、パウチ、紙袋等)は、機器の適合範囲を決定づける主要な要因です。
考慮せずに導入してしまうと、対象外の商品が発生し、人手による仕分けが増加して自動化が機能不全に陥ります。これはヒューマンエラーやコストの増大を引き起こす原因です。とくに、小型医薬品と大型日用品など異なる荷姿が混在するフルフィルメント倉庫では、この観点の重要度が高いです。
取扱商品の100%を自動仕分けできればピーク期でも追加人員なしで安定オペレーションが可能になります。
将来を見据えた排出口数とレイアウト拡張性
排出口数とレイアウト拡張性は、今後物流工程の規模を拡大する際に重要なポイントです。ソーターの導入時だけでなく、将来的な出荷先の増加や配送エリアの拡張を想定した設計が必要になります。倉庫の床面積や今後のシュート数増加計画、さらにはコンベヤ配置などの制約によって決まってきます。
もしこの検討が不十分だと、シュート数が不足し複数得意先の荷物が混載されて誤出荷につながるほか、レイアウト変更のたびに高額な改修コストが発生する可能性があります。EC事業などでSKUと配送エリアが継続的に拡大するような事業形態では、初期段階から拡張性を設計に組み込んでおくことが肝要です。
余裕あるレイアウトなら物量ピークや販路拡大時でも改造不要で処理量をスムーズに増加できるでしょう。
たとえば、以上のような視点を持ってソーターを選定することが、長期的な業務最適化と投資効果の向上につながります。 次は、主要なソーターメーカーやブランドについて詳しく見ていきましょう。
編集部ピックアップおすすめソーターメーカー
ソーターを選ぶ際に重要なのが、信頼性の高いメーカーの製品を選定することです。ここでは、日本国内で特に実績・技術力・製品バリエーションに優れたメーカーをご紹介します。
気になるメーカーなどを見つけたら、以下からお問い合わせください。
※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。
ダイフク / Daifuku
メーカー名 | ダイフク / Daifuku |
設立年 | 1937年 |
本拠地 | 大阪府大阪市 |
概要 | マテリアルハンドリングシステムの総合メーカー |
ダイフクは1937年に設立され、大阪府大阪市に本社を構えるマテリアルハンドリング機器の世界的メーカーです。グローバルなネットワークを活かし、大規模物流案件に対してワンストップでの提案と構築が可能な体制を持ちます。
主な製品にはSurfing Sorter、Surfing Sorter mini、Cross Belt Sorter、Sorting Transfer Vehicle(STV)などがあります。Surfing Sorterは不定形・長尺物にも対応できる点が特徴です。
ダイフクのソーターの導入実績にはSkechers USA物流センターなど、グローバルでの豊富な稼働例があります。
村田機械 / Murata Machinery
メーカー名 | 村田機械 / Murata Machinery |
設立年 | 1935年 |
本拠地 | 京都府京都市 |
概要 | 自動化・物流システムと工作機械を手掛ける総合機械メーカー |
村田機械 は、1935年設立、京都市に本社を持つ自動化と工作機械の大手メーカーです。 物流・クリーンFA・機械分野を融合し、多様な業界に対応したフルライン提案力を有します。
主要製品はCrossbelt Sorter、Shuttliner高速ケースソーターなどです。 リニアモータ駆動により、最大160m/分・1.2万件/時の静音仕分けを実現し、保守コストを低減します。
代表導入先には家具SPA向けホームファニシングDCや半導体クリーンルーム搬送ラインなどがあります。
東芝インフラシステムズ / Toshiba Infrastructure Systems & Solutions
メーカー名 | 東芝インフラシステムズ / Toshiba Infrastructure Systems & Solutions |
設立年 | 2017年 |
本拠地 | 神奈川県川崎市 |
概要 | 郵便・物流自動化機器を中心とする社会インフラメーカー |
東芝インフラシステムズは2017年に設立され、郵便・CEP領域を主力とする社会インフラ機器メーカーです。 画像OCRやビデオコーディング技術を駆使し、読み取り精度の高い物流ソリューションを提供しています。
製品にはTT-1200 OCR Letter Sorter、TT-2000 Flat Sorter、Parcel Sorterなどがあり、高性能OCR、多言語や手書き混在の郵便物にも対応可能です。
採用例としては中華郵政(台湾)やロシアポストのハブ拠点などがあります。
オークラ輸送機 / Okura Yusoki
メーカー名 | オークラ輸送機 / Okura Yusoki |
設立年 | 1960年 |
本拠地 | 兵庫県加古川市 |
概要 | コンベヤ・仕分けシステム専業のマテハンメーカー |
オークラ輸送機は1960年設立、マテリアルハンドリング専門の老舗メーカーです。 独自のスライドシュー式ユニソーター技術により、多様な荷物を高速かつ安定して搬送可能です。
Uni Sorter、SCB-40 Cross Belt Sorter、Angle Sorterなどのソーターを扱っています。 Uni Sorterは0.5kg〜40kgの混載品でも最大2.2万件/時の処理性能を発揮し、薄物・袋物にも強い搬送機構を備えているのが特徴です。
導入先には空港BHSや小売向け店舗別仕分けセンターなどがあります。
日立インダストリアルプロダクツ / Hitachi Industrial Products
メーカー名 | 日立インダストリアルプロダクツ / Hitachi Industrial Products |
設立年 | 2018年 |
本拠地 | 東京都千代田区 |
概要 | 産業機器・物流設備を扱う日立グループの重電メーカー |
日立インダストリアルプロダクツは2018年設立の日立グループの重電機器メーカーです。
リニアモーター制御とIoT連携技術を用いて、静音性と省スペース性に優れたソーターを開発しています。
代表製品はLIMSORTER(リムソータ)で、トレイ式構造による立体的なレイアウトが可能です。2階建ての螺旋搬送ルートなど、省スペースで高密度配置ができる特性があります。
導入の実績としてはコンビニ共同DCでの導入が過去に行われています。