テレプレゼンスロボット
テレプレゼンスロボットは、遠隔地にいながらまるでその場に「存在」しているかのようにコミュニケーションを可能にする革新的な技術です。
「会議の場に行けない」「遠隔地の現場を確認したい」「リモートでは信頼構築が難しい」など、物理的な距離がもたらす不便に頭を悩ませていませんか?
本記事では、テレプレゼンスロボットの基本情報や選び方のポイントやおすすめのメーカー情報も詳しく紹介しております。是非ご一読ください。
また、JET-Globalでは、テレプレゼンスロボット以外にもオフィスで活躍する全般のロボットについて解説している記事もございます。是非以下からご参考ください。

目次
テレプレゼンスロボットとは? 基本情報や実際の事例も紹介
テレプレゼンスロボットとは、遠隔地にいる人物の存在を可視化・体現することで、まるでその場にいるかのように振る舞えるロボットです。
ビデオ通話機能と移動機能を兼ね備えており、リモートワーカーや入院患者、高齢者、企業の経営者などが、物理的にその場にいなくても、リアルなコミュニケーションを取ることを可能にします。
また、テレプレゼンスロボットは単なる「テレビ電話付き台車」ではありません。周囲の環境や人の動きに対応して動き、視界をコントロールしながら会話できるため、より自然で臨場感のある遠隔参加が可能です。
オフィスでの会議や学校の授業、病院での回診、工場での見回りなど、幅広い現場で活用されています。
実際の導入事例としては、以下のようなケースがあります。
- 在宅勤務社員がオフィスにテレプレゼンスロボットで常駐し、チームとの円滑な連携を維持
- 重度の病気で通学困難な子どもが、ロボットを通じて教室に参加
- 製造業の本社技術者が、遠方の工場をロボットで巡回しながら指導
このように、テレプレゼンスロボットは物理的な距離を超え、コミュニケーションや作業のあり方を根本から変革しつつあります。
続いて、テレプレゼンスロボットにはどのような種類があるのかを詳しく見ていきましょう。
種類ごとにテレプレゼンスロボットを解説
テレプレゼンスロボットは、利用シーンに応じて設計思想や機能が異なります。
ここでは、代表的な「自走型モバイルタイプ」「据え置き型(デスクトップタイプ)」「人型(ヒューマノイド)タイプ」の3分類に分けて、それぞれの特徴と比較ポイントを紹介します。
自走型モバイルタイプ
自走型モバイルタイプは、ホイールやキャスターで床面を移動可能な構造を持ち、ユーザーが遠隔から操作またはセミ自律的にナビゲートできます。
カメラ・スピーカー・マイク・ディスプレイを搭載し、現地を歩くように移動しながら会話できます。
据え置き型(デスクトップタイプ)
据え置き型は、机上や棚上に固定設置して使用されるもので、Web会議用端末にカメラ・スピーカー・ディスプレイなどを一体化した構成です。
ユーザーは主に「視点を提供する装置」としてロボットを活用します。
人型(ヒューマノイド)タイプ
人の形に近い頭部・腕部・胴体などを持ち、顔の表情表示・手振りなど非言語的表現に対応した高機能タイプです。
感情や意図を表情や動きで伝えることができるため、接客・教育・対人支援に活用されています。
以上のように、テレプレゼンスロボットは構造と機能の違いによって用途が分かれています。導入の際は、目的・操作環境・予算に応じて、適したタイプを選定することが重要です。
次に、それらの導入によって得られるメリットについて詳しく見ていきましょう。
導入によって期待されるテレプレゼンスロボットのメリット
テレプレゼンスロボットを導入することで、一般的な遠隔会議ツールとは異なる特有の利点があります。
ここでは、企業、教育、医療など多様な領域で評価されている主な活用メリットを、実際の導入事例とともに紹介します。
1. 離れていても「存在感」を発揮できる
テレプレゼンスロボットは、ビデオ会議と異なり、空間内を自律または遠隔操作で移動でき、相手との視線の調整や身体の向きを変えることで、より自然なコミュニケーションを可能にします。
こうした物理的動作が、まるでその場に本人がいるかのような「存在感」を生み出し、表情やアイコンタクトも含めた対面に近い交流が実現します。
2. ハイブリッドワークの業務連携を支援
遠隔地で働く社員がテレプレゼンスロボットを通じてオフィスに「常駐」することで、現場の進行状況や雰囲気をその場で確認できる仕組みの構築が可能です。
実証例では、雑談や偶発的なやり取りが生まれやすくなったという報告もあり、業務の流れをよりスムーズにする手段として活用が広がっています。
ただし生産性の定量的な向上に関するデータは限定的であり、効果は環境によって異なる可能性があります。
3. 教育・医療など社会的インクルージョンを実現
病気や障害により通学や外出が難しい子どもや高齢者にとって、テレプレゼンスロボットは社会とのつながりを維持する重要な手段となり得ます。
分身ロボット「OriHime」を活用し、病室や自宅から教室・カフェ・イベントに参加する実例が国内外で多数報告されており、孤立感の軽減や社会参加の促進といった心理的な効果が期待されています。
4. 海外との業務連携を柔軟に実現
テレプレゼンスロボットを拠点に設置することで、遠隔地にいる人材が現地の様子をリアルタイムで確認・対話できる体制を整えることができます。
これは時差のある国との連携や、海外拠点での定例チェックなどに活用されており、移動や渡航に伴う時間・コストの削減に寄与します。
ただし、全業務がロボットで代替できるわけではないため、用途に応じた活用が前提です。
このように、テレプレゼンスロボットは従来の遠隔通話では補えなかった「その場にいる感覚」や社会参加の幅を広げるツールとして、さまざまな現場で価値を生み出しています。
次は、このテクノロジーの普及において立ちはだかる課題や制約について解説します。
テレプレゼンスロボットの普及において超えるべき壁や課題
テレプレゼンスロボットは、遠隔地との高度なコミュニケーションを可能にする技術として期待されていますが、普及に向けては現実的な制約や未解決の課題も存在します。
以下では、技術・経済・社会制度などの観点から、現在の主要な障壁について整理します。
1. 高コストと導入ハードルの高さ
テレプレゼンスロボットは、通信、映像、センサー、駆動系など複数の高度技術を統合しているため、1台あたりの導入価格は数十万〜数百万円にのぼることがあります。
加えて、日常運用では高速・安定なネットワーク環境や、充電管理、定期的な保守点検などが欠かせません。
総務省の調査でも、教育機関や中小企業にとってはコスト面が普及の大きな障壁となっていることが報告されています。
2. 操作性やユーザー体験(UX)の課題
遠隔操作における視点切り替えやナビゲーション操作には慣れが必要で、直感的な操作性が求められます。
現在の多くのモデルでは、カメラの視野制限、通信遅延、音声指向性の課題が挙げられており、ユーザーのストレス要因となる場面もあります。
こうしたUX上の改善は、普及に向けた重要な検討課題です。
3. セキュリティとプライバシーのリスク
テレプレゼンスロボットは、カメラとマイクを搭載しながら実空間に移動・接続するため、不正アクセスや盗撮・盗聴などへのリスク管理が必要です。
とくに医療・教育・企業の機密エリアにおいては、録画・録音の制限やログ管理、本人認証の仕組みといった制度面の整備が不可欠と指摘されています。
国立情報学研究所やIPAでも、ロボットを含むIoT機器のセキュリティ強化の必要性が示されています。
4. 人との関係性・文化的受容性
ロボットを介した会話に対して、現場の人々が「違和感」や「距離感」を感じるケースもあります。
これは文化的背景や対面重視の職場風土によって大きく左右されるため、技術の性能向上だけでなく、利用者教育や導入環境の設計が必要です。
また、感情表現や非言語コミュニケーションの伝達に課題が残るという報告もあります。
5. 法制度・運用ルールの未整備
テレプレゼンスロボットの活用には、現行の法制度では想定されていない領域が存在します。
たとえば、病院での遠隔診療支援や地方議会への出席、教育機関での出席扱いなどに関しては、法的な位置づけが不明確な部分もあり、ガイドラインの策定が急がれています。
今後、行政や業界団体による制度整備とルールの明文化が、社会実装を進める上で不可欠になるでしょう。
これらの課題に対しては、技術者・運用者・政策立案者が連携して取り組む必要があります。
ユーザー視点での改良を重ね、制度面・文化面からの受け入れ態勢を整備することで、テレプレゼンスロボットはより現実的で持続可能なインフラとして社会に定着していくでしょう。
次は、テレプレゼンスとビデオ会議の違いについて比較しながら解説します。
テレプレゼンスとビデオ会議の違いを解説
テレプレゼンスロボットとビデオ会議は、どちらも遠隔コミュニケーションを実現する手段ですが、求められる「存在の質」や「空間との関わり方」によって、適した技術は変わります。
テレプレゼンスロボットは、現地の空間を自ら移動しながら関わることができるため、視線の方向や身体の向きまで含めた「場の空気感」を伝えることができます。
一方でビデオ会議は、短時間の情報伝達や決裁のように、空間的な移動を必要としない業務において、シンプルかつスピーディに利用できる手段です。
誰もが簡単に使え、環境構築の手間がかからないため、社内会議やリモート面談などの汎用シーンに適しています。
以下の表では、そうした両者の特性や活用場面、コスト面などを比較しています。違いを整理することで、導入目的に応じた最適な選択がしやすくなるでしょう。
比較項目 | テレプレゼンスロボット | ビデオ会議 |
臨場感・存在感 | ロボットの動きと視線で、現地にいるような存在感を再現可能 | 画面上に映るだけで、空間的な臨場感は低い |
コミュニケーションの質 | 空間内の移動や視線の調整により、自然な対話が可能 | 発言の順番や非言語表現に制限があり、間合いが取りにくい |
利用シーン | 工場巡回、学校出席、接客、現場視察など、物理的な移動を伴うシーンに最適 | オフィス会議、定例ミーティング、1対1の商談に向いている |
導入コスト | 本体価格や維持費用が高く、長期運用での費用対効果が問われる | PCやスマホだけで利用でき、導入コストが非常に低い |
操作性 | 操作に慣れが必要で、通信環境の影響を受けやすい | 誰でもすぐに使える直感的なインタフェース |
テーブルで比較したように、テレプレゼンスロボットは「その場にいること」が求められるシーンにおいて、高い効果を発揮します。
一方でビデオ会議は、日常的な連絡や簡易な打ち合わせにおいて、コストパフォーマンスと手軽さに優れています。
それぞれの特性を正しく理解し、自社や現場の目的に応じて選び分けることで、遠隔コミュニケーションの質と効率は大きく向上するでしょう。
次の章では、テレプレゼンスロボットを導入する際に注意したい、3つの選定ポイントを解説します。自社にとって最適なテレプレゼンスロボットを選ぶためにもぜひご一読ください。
テレプレゼンスロボットを選ぶ際に注目したい3つの重要ポイント
テレプレゼンスロボットは、活用される環境や用途に応じて求められる機能が大きく異なります。
ここでは、特に業務運用や対面コミュニケーションの質に関わる3つの視点から、選定時に確認すべき重要なポイントを解説します。
視線が合うかどうかで印象が決まる「視線同期機構」の有無
テレプレゼンスロボットの選定時には、遠隔操作中にカメラの高さや角度を調整して対面者の目線と合わせられる「視線同期機構」の有無が重要な判断材料となります。
この機能は、カメラのチルト・パン機構、ロボットの昇降リフト設計、操作インタフェースの微調整ステップなど、複数の構成要素に依存するのです。
視線が合わない状態が続くと、相手に不自然な印象を与えたり、発言への心理的ハードルを高めたりする可能性があると指摘されており、特に着席状態の対面者と会話する会議室や商談環境では信頼関係の構築に影響を及ぼす場面もあります。
目線が合うことで「そこにいる感覚」が生まれ、遠隔参加者の存在がより自然に受け入れられやすくなります。
操作遅延200ms以下かの確認でスムーズな遠隔運用を実現
次に確認すべきは、映像・音声・制御操作の往復遅延が200ms以下であるかという点です。
この性能は、ネットワークの帯域やQoS(通信品質制御)、ロボット側の映像圧縮エンジン、制御信号処理速度などの技術要因に左右されます。
遅延が大きくなると、障害物との距離感の誤認や、停止命令が届くまでに余分な動作を行うといった問題が起こりやすくなり、映像酔いや誤操作による接触事故の原因になることもあります。
実際、遠隔操作ロボットに関する研究では、視覚遅延が操作者の作業精度に明確な影響を与えると報告されており、動きの多い工場やイベント空間では応答性の高さが重要です。
スムーズな応答により、操作者が現場の流れに即座に対応でき、生産性や安全性が向上します。
完全自律型かどうかで運用負荷が変化する
もう1つ注目すべきポイントは、SLAMやビーコンを活用した自律移動・自動ドッキング対応の有無です。
この機能には、LiDARやステレオカメラ、IMU(慣性計測装置)などのセンサーと、環境地図をリアルタイムに構築・更新できるアルゴリズムが組み合わさることが必要です。
自律性が不十分な機体では、思わぬ障害物への接触や迷走によって、オペレーターの介入頻度が高くなり、かえって人的負担が増加することがあります。
特に夜間巡回や無人状態での稼働が求められる施設(例:オフィスビル、医療機関、複数フロアにまたがる大型施設)では、この自律機能の有無が運用効率に大きく関係します。
無人時間帯にもロボットが自律的に移動・充電を完了できることで、人的負担を抑えつつ運用コストを削減できるでしょう。
このように、スペック表だけでは見えない「使用環境に応じた適合性」を見極めることが、テレプレゼンスロボットを有効活用するためのカギになります。
次は、テレプレゼンスロボットを提供する代表的なメーカーや製品例を紹介します。
おすすめのテレプレゼンスロボットメーカー5選
テレプレゼンスロボットを導入する際は、機能や価格だけでなく、メーカーの信頼性や提供体制も重要な判断材料となります。
以下では、業界内でも特に注目されている5社を詳しく紹介します。
※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。
アバターイン / avatarin
メーカー名 | アバターイン / avatarin |
設立年 | 2020年 |
本拠地 | 東京都中央区 |
概要 | ANAホールディングス発のアバターロボットメーカー |
アバターインはANAホールディングスから分社化して設立された、アバター技術に特化した国産ロボットメーカーです。
主力製品のnewmeは、遠隔地からロボットを操作して移動・会話・視野操作ができるモビリティ型テレプレゼンスロボットであり、クラウド上の管理基盤により、1人のオペレーターが複数台を一括制御できるスケーラビリティが特長です。
7-Eleven実験店舗や羽田空港無人店舗、地方自治体での観光案内など、商業・公共サービス分野で導入実績があります。
オリィ研究所 / OryLab
メーカー名 | オリィ研究所 / OryLab |
設立年 | 2012年 |
本拠地 | 東京都中央区 |
概要 | 分身ロボットの開発・製造・運用支援を行う専業メーカー |
オリィ研究所は、身体障害や難病を抱える人々の社会参加を支援する目的で創業されたロボットメーカーです。
代表的なテレプレゼンスロボットOriHimeシリーズは、小型卓上型の「OriHime」と移動型の「OriHime-D」に分かれ、視線やスイッチ操作でも利用できる設計となっています。
重度障害者や寝たきりの方でも遠隔で接客・授業参加ができるユニバーサルデザインである点が特徴です。
分身ロボットカフェDAWNをはじめ、日本郵便の在宅業務支援、遠隔教育機関など多分野での活用が進んでいます。
テレイグジスタンス / Telexistence
メーカー名 | テレイグジスタンス / Telexistence |
設立年 | 2017年 |
本拠地 | 東京都大田区 |
概要 | AI・遠隔操作技術を用いたロボット開発メーカー |
テレイグジスタンスは、遠隔操作とAIによる自律補完を融合させたロボット開発を行うスタートアップです。
主力製品のTX SCARAは、小売業向けに冷蔵ショーケースの商品を自動補充するアーム型テレプレゼンスロボットで、24時間稼働を前提としたAI+遠隔操作のハイブリッド制御が採用されています。
ファミリーマート約300店舗に納入されており、物流倉庫や小売のバックヤード業務での自動化を進めています。
ugo / ユーゴ
メーカー名 | ugo / ユーゴ |
設立年 | 2018年 |
本拠地 | 神奈川県川崎市 |
概要 | 警備・点検業務向けアバターロボットの製造メーカー |
ユーゴは、双腕型の遠隔操作ロボット「ugo TSシリーズ」を製造するスタートアップ企業で、旧社名はMira Roboticsです。
このテレプレゼンスロボットは上下昇降機構とモジュール構成により、ドアの開閉、設備確認、簡単な操作などを人間に代わって実施可能です。
最大4台まで1名のオペレーターが同時に遠隔管理できる統合管理プラットフォームを提供しており、警備業界での導入が進んでいます。
羽田空港の警備やJR駅構内の巡回、NTTドコモとの5G実証実験など多くの大規模現場にて活用されています。
トヨタ自動車 / Toyota Motor Corporation
メーカー名 | トヨタ自動車 / Toyota Motor Corporation |
設立年 | 1937年 |
本拠地 | 愛知県豊田市 |
概要 | 自動車およびモビリティロボット製造を行う世界的メーカー |
トヨタ自動車は、自動車の製造に加えてパーソナルモビリティ分野にも進出しており、その一環としてテレプレゼンス技術を活用したロボットを開発しています。
同社の製品であるT-TR1は、等身大の人物表示が可能な4Kディスプレイと、360度カメラを組み合わせた固定型テレプレゼンスロボットです。
高精細映像と広視野で「その場にいるような臨場感」を提供する設計がなされており、東京2020オリンピック・パラリンピックでの遠隔観戦支援や、病院・工場の見学用途として活用されました。
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