ツールチェンジャ
生産現場の自動化を進めるうえで、ツールチェンジャの導入は非常に重要なポイントです。しかし「どんな種類があるのか」「自分の工場に合ったモデルはどれなのか」といった疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。
多くの企業が、この一見シンプルに見える装置の選定を誤ることで、作業効率や精度の低下、さらにはトラブルの原因を抱えてしまうケースが少なくありません。
そこで本記事では、ツールチェンジャの基本を分かりやすく解説するとともに、失敗しない選び方やおすすめメーカーもご紹介します。これからロボットによる自動化や工具交換の効率化を目指している方にとって、ヒントが満載の内容です。ぜひ最後までご覧いただき、作業現場のさらなる生産性アップを目指す一助になれば幸いです。
とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。
目次
ツールチェンジャとは? 特徴や活用例などを解説
ツールチェンジャとは、ロボットや自動化装置などに取り付けられる工具や治具を、簡単かつ確実に着脱・交換できる機構のことを指します。例えば、一台のロボットが製造ラインで複数の工程を担当する場合に、ツール(ハンドや溶接トーチ、バリ取り工具など)の変更のために使用します。
ツールチェンジャがもたらす最大のメリットは、作業の効率化や稼働率の向上です。工具交換時間を最小限に抑えられるため、生産性を高めながら高い精度を維持しやすくなります。また、メカニカルなフェールセーフ機構を採用することで、作業環境でのリスクを最小限に抑える効果もあります。
導入事例としては、自動車製造ラインや食品加工の現場など、多くの業界で活用が進んでいます。
以上がツールチェンジャの概要となります。次に、実際にはどんな種類があるのかを詳しく見ていきましょう。
各種ツールチェンジャのメリット・デメリット
ツールチェンジャにはさまざまな種類が存在し、それぞれの仕組みや特徴、メリット・デメリットに違いがあります。ここでは代表的な方式をご紹介しながら、どのような現場で活用されることが多いのかを解説します。
エア式ツールチェンジャ
エア式ツールチェンジャは、主に空気圧を利用してツールの着脱を行うタイプです。一般的に取り付け・取り外しの操作が素早く行えるうえ、構造が比較的シンプルなのでメンテナンスもしやすいという特徴があります。
油圧式ツールチェンジャ
油圧式ツールチェンジャは、油圧によって着脱を行うタイプです。エア式に比べて大きな力を扱えるため、重負荷での使用が多い現場に適しています。
電気式ツールチェンジャ
電気式ツールチェンジャは、モーターや電磁ロック機構などを用いてツールを固定・交換するタイプです。エアや油圧の配管が不要な分、配線のみで制御が行えます。
ここまでツールチェンジャの種類と、それぞれのメリット・デメリットをご紹介しました。次は、ロボットにおけるツールチェンジャの実際の使い方を見ていきましょう。
ロボットとの関係は? ツールチェンジャの実際の使い方
ロボット ツールチェンジャは、多品種少量生産や作業効率を高めたい現場にとって大きな意味を持ちます。ロボットのハンド部分をツールチェンジャに置き換えることで、ワークの搬送や溶接、組み立てなど、様々な作業に応じたツールを瞬時に切り替えることが可能です。
例えば、自動車製造ラインではスポット溶接から部品のハンドリングまで、ロボットが一台で複数の役割を担います。
ツールの交換が手動では時間がかかり、作業効率を下げてしまいます。そこでツールチェンジャを活用すれば、ラインを止めることなくロボットが自動でツールを切り替えられ、分単位で切り替えていたところを秒単位でダウンタイムの削減が可能です。
このように、ロボットとツールチェンジャは生産性を高めるうえで強力なタッグとなります。次は、ツールチェンジャの仕組みそのものをもう少し詳しく見ていきましょう。
ツールチェンジャの仕組みと構造を解説
ツールチェンジャの構造は、大きく「本体(取り付け側プレート)」と「ツール側プレート」という2つのパーツに分かれています。ロボット側プレートに取り付けた機構が、ツール側プレートの連結部をしっかりと固定し、必要に応じてロックを解除して分離するといった動作を繰り返します。
具体的には、エア式ならば空気圧ピストン、マルチテーパーカム、硬化鋼ロックボールなどから構成されています。エアシリンダーの力でロックピンを押し込んで固定・解除を行ったり、電気式であればモーターの回転や電磁力を利用して接続部をロックしたりと、方式ごとに異なる構造です。いずれの方式も、工具側とロボット本体側が安全にかつ確実に着脱できるよう、厳密な制御と位置合わせが行われているのが特徴です。
ツールチェンジャの仕組みを理解したところで、次はいよいよどのように製品を選べばよいのか、その選定方法を詳しくチェックしていきましょう。
選び方は? ツールチェンジャの比較ポイント
ツールチェンジャを導入する際には、さまざまな観点から最適なモデルを選ぶ必要があります。ここでは重要な選び方を3つ挙げ、それぞれどのような要因で変動し、選定を誤るとどんな影響があるのかを解説したうえで、適切に選定したときのメリットもあわせてご紹介します。
負荷容量や交換精度、交換時間の短縮
ツールチェンジャの選定ポイントとして、まず負荷容量や交換精度、交換時間の短縮を重視する考え方があります。負荷容量や工具交換頻度、作業環境やロボットの可動範囲といった要因によって変動するものです。
もしこの観点を軽視すると、ツールチェンジャの不具合や交換精度の低下、さらには作業効率の悪化といった問題が発生しやすくなります。特に工場で複数の工具を頻繁に交換する場合には、交換精度とスピードの確保が生産性のカギを握るでしょう。
一方で、最適なツールチェンジャを選べば、作業のスピードアップと安定した精度を同時に実現することが可能になります。
自社の生産ラインに合ったロボットとの接続方式
次に注目したいツールチェンジャの選定ポイントとして、自社の生産ラインに合わせた接続方式(機械的または電気的)の選択が挙げられます。これは、ロボットのモデルやインターフェースの互換性、取り付けスペースなどの要因で変わってきます。
もし接続方式を無視してしまうと、ロボットとツールチェンジャの互換性トラブルが起こり、予想外のコストや余分なメンテナンスを強いられることになるでしょう。ロボットとの統合を進めている場合は、なおさら接続方式の選定が重要になります。
しかし、最適な接続方式を見極められれば、ツールチェンジャの交換をスムーズに行え、メンテナンスも過度にやる必要はなくなります。
ツールチェンジャの耐久性と環境耐性
最後に挙げる選定ポイントとして、ツールチェンジャの耐久性と環境耐性を考慮することが挙げられます。使用環境(湿度や温度、振動など)やツールチェンジャの使用頻度といった要因によって変わってきます。
もし耐久性を軽視すると、摩耗や故障が頻発してラインが止まり、ダウンタイムが増加するリスクを伴うでしょう。高温多湿や汚れが多い現場で使う場合は、特に注意が必要です。
ただし、こうした条件でもしっかり選定を行っておけば、長期的なコスト削減と安定稼働を実現し、生産ラインの信頼性を大幅に高めることが期待できます。
ここまでツールチェンジャの選び方をまとめました。続いては、具体的にどのメーカーがどんな製品を提供しているのか、おすすめのメーカーをチェックしてみましょう。
JET-Global編集部おすすめの代表的なツールチェンジャメーカー4選
ツールチェンジャを製造・販売するメーカーの中には、それぞれ独自の技術や強みを持つ企業が多数存在します。ここでは、国内で評判の高い4つのメーカーをピックアップしてご紹介します。
ニッタ / Nitta
メーカー名 | ニッタ / Nitta |
設立年 | 1945年 |
本拠地 | 大阪府大阪市 |
概要 | 産業用ベルト・ゴム製品を主とする工業用部品メーカー |
ニッタは130年以上の歴史で培った技術力と、顧客の要望に真摯に応える現場力が強みです。
NITTAOMEGA(ニッタオメガ)というツールチェンジャを展開し、独自のカムロック方式を採用しているのが特徴です。ほかのメーカーと比較して連結の強度と分離の確実性に優れており、重負荷の作業でも安定した工具交換が可能になります。
自動車工場やスポット溶接、プレス・成型品の取出し、さらには組立やマテハンなど、多岐にわたる製造現場で導入されているのが印象的です。
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鍋屋バイテック / Nabeya Bi-tech
メーカー名 | 鍋屋バイテック / Nabeya Bi-tech |
設立年 | 1940年 |
本拠地 | 岐阜県関市 |
概要 | 機械要素部品メーカー |
鍋屋バイテックは、プーリーで国内シェア80%を誇り、約2万社と取引実績を持つ老舗の機械要素部品メーカーです。
同社のオートツールチェンジャ、FWRシリーズは動力源(エアや電力)を必要とせず、機械式に自動交換が可能な点がユニークです。他のメーカーのツールチェンジャよりも小型・軽量で配線が不要なので、装置スペースを有効活用したい場合に特に重宝されます。
自動車業界での導入が進んでおり、装置レイアウトに制約がある現場や動力源確保が難しい現場で力を発揮しています。
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コスメック / KOSMEK
メーカー名 | コスメック / KOSMEK |
設立年 | 1986年 |
本拠地 | 兵庫県神戸市 |
概要 | 油圧・空圧機器メーカー |
コスメックは、内製化率90%という高い製造能力を誇り、自動車業界をはじめとする多様な分野で実績を重ねてきた油圧・空圧機器メーカーです。
SWRシリーズ(ロボットハンドチェンジャー)を展開しており、2面拘束構造によるガタツキゼロと高剛性設計が特徴となっています。他社製品と比較しても、連結時の剛性が際立つため、溶接工程や精度の要求が高い作業で威力を発揮します。
自動車業界はもちろん、EV充電コネクタの接続や電子部品組立など、軽量から中重量まで幅広い用途に導入が進んでいます。
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ビー・エル・オートテック / BL AUTOTEC
メーカー名 | ビー・エル・オートテック / BL AUTOTEC |
設立年 | 1987年 |
本拠地 | 兵庫県神戸市 |
概要 | 産業用ロボット周辺装置の専門メーカー |
ビー・エル・オートテックは、産業用ロボット手首周辺装置で国内において高いシェアを持つ専門メーカーです。
同社のQUICK-CHANGE(クイックチェンジ)は、メカニカル・フェールセーフ機構を採用しているため、空気圧供給が停止してもツール・プレートが分離しない安全設計になっています。他のメーカーのツールチェンジャに比べて安全性が特に高く、作業者やロボットにかかるリスクを軽減できます。
組立作業やハンドリング、パレタイジングから、バリ取りや研磨、さらにスポット溶接など、さまざまな作業工程で活用されているのが特長です。
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以上が、ツールチェンジャを扱うおすすめメーカー4選の概要でした。各メーカーごとに特徴や強みが異なるため、自社の生産ラインやニーズに合わせて最適な企業を選定してみてください。
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