水上ドローン
水上ドローンは、遠隔操作や自動操縦が可能な無人機器で、水上や水中での多様な作業に利用されています。
この記事では、様々な種類の水上ドローンとその特長、具体的な活用事例について詳しく紹介します。海洋調査や環境保護、救助活動など、最新技術がどのように役立つのかを解説します。
水上ドローンとは?7種類の水上ドローンをご紹介
水上ドローンは、遠隔操作や自動操縦が可能な無人機器で、その活動領域は水上や水中に限定されています。手のひらサイズから数人が乗れるサイズまで多種多様で、専用のコントローラーやスマートフォン、タブレットを通じて操縦されることが多いです。
水上ドローンは、主にROV(Remotely Operated Vehicle)とAUV(Autonomous Underwater Vehicle)の2種類に分けられます。ROVは遠隔で操作ができる無人潜水機で、海底の調査などに使用される一方、AUVは自律型の無人潜水機で、ケーブルを必要としないため、低コストで運用が可能です。
水上ドローンは、大きく分けると7種類に分けられます。
- USV(船舶ロボット)
- ASV(自動航行船)
- ROSV(遠隔操作型航行船)
- 水上点検ドローン
- 水上測量ドローン
- 水上清掃ドローン
- 水上救助ドローン
USV(船舶ロボット)
船舶ロボットはUSV(Unmanned Surface Vehicle)とも呼ばれており、海、湖、河川、ダムなどの水域で作業する無人の船舶ロボットです。一般的には20トン未満の小型水上無人機を指し、遠隔操作や自動航行が可能になります。
USV(船舶ロボット)の強みは、以下の通りです。
- 長期間にわたる警戒監視が可能であること
- 人的リスクの低減
- 大幅なコスト削減
- 環境への影響の低減を実現できる
特に、海洋調査や海底資産の検査、海洋科学、水路調査などのミッションにおいて、その能力を発揮します。
USV(船舶ロボット)は、無人であるため、危険な環境や人がアクセスしにくい場所での作業に適しており、海洋調査、環境モニタリング、貨物輸送、水難救助など、多岐にわたる用途で活用されている。
ASV(自動航行船)
水上ドローン(ASV)は、Autonomous Surface Vehicleの略で、自動航行する小型の無人ボートを指します。これらは遠隔操作や自律航行により制御され、水上を航行することができます。
ASVの強みは、以下の点にあります。
- 無人であることによる長期間の警戒監視
- 人的リスクの低減
- コスト削減
- 環境への影響の低減
例えば、海洋調査においては、広範囲のデータを収集することができ、効率的な調査が可能です。また、海底資産の検査では、人が立ち入れない場所での詳細な検査を行うことができます。さらに、海洋科学の分野では、長期間のデータ収集が必要な研究において、その性能が活かされています。水路調査においても、正確なデータを提供することで、安全な航行ルートの確保に寄与しています。
ASVは、特に海洋調査においては、マルチビーム測深機を始めとする各種計測機器を搭載して使用されることが一般的です。
ROSV(遠隔操作型航行船)
水上ドローン(ROSV)は、遠隔操作型の無人水上艇(Remotely Operated Surface Vehicle)の略で、水面上を航行する無人の船舶ロボットです。ROSVは遠隔操作により制御され、水上の監視や調査、測量などの作業を行うことができます。
このタイプの水上ドローンには、以下の強みがあります。
- 人が直接乗船することなく遠隔から操作できる
- 危険な環境やアクセスが困難な水域での作業に適している
- 長時間の監視やデータ収集が可能
- 人的リスクの低減
- コスト効率の良い運用が可能
具体的な活用事例として、ROSVは海洋調査で広範囲のデータを収集することができ、効率的な調査を実現します。また、海底資産の検査では、人が立ち入れない場所での詳細な検査を行うことができます。さらに、環境モニタリングや水難救助の現場でも、その能力を発揮します。ROSVはAUVやROVのサポートや水上での独立したミッションに使用され、幅広い用途で活用されています。
水上点検ドローン
水上点検ドローンは、水上や水中のインフラや構造物の点検を目的として設計された無人機です。これらのドローンは、通常の航空ドローンや水中ドローン(ROV)がアクセスできない狭い空間や、水中の構造物に対して、効率的かつ安全に点検作業を行うことができます。
水上点検ドローンの強みは以下の点にあります。
- 人が直接アクセスできない場所での点検作業が可能
- ダイバーを使わないため安全性が向上
- コスト削減
- 音響測位装置により正確な位置情報を把握可能
具体的な活用事例として、水上点検ドローンは橋脚や桟橋の下面の点検において、その能力を発揮します。これにより、従来のダイバーを使った方法に比べて、安全性とコスト効率が向上します。また、橋梁やダム、港湾施設などの大規模なインフラの点検にも有効です。音響測位装置を用いることで、GPSが利用できない水中でも正確な位置情報を把握し、詳細な点検を行うことが可能です。
水上測量ドローン
水上測量ドローンは、水中の地形や生物を探究するために用いられる測量技術で、水中に潜水することなく、センサーを用いて水中の情報を収集することができます。これにより、より正確な水深や地形、水質データを収集し、海洋調査や水産業、下水道管理、環境保護などの分野で活用されています。
水上測量ドローンの強みは以下の点にあります。
- 安全性が高い
- コスト削減
- 作業効率の向上
- 高精度な海底データを取得可能
例えば、水上測量ドローンは海洋調査で広範囲のデータを収集し、効率的な調査を実現します。また、水産業では、水中の地形や生物の分布を詳細に把握し、持続可能な漁業管理に貢献します。
さらに、下水道管理においては、潜水士を使わずに正確なデータを取得し、効果的なメンテナンスを支援します。環境保護の分野でも、水質データを正確に収集し、環境モニタリングに役立てられています。水上測量ドローンは、これらの分野での利用により、従来の手法よりも効率的で安全な作業を実現します。
水上清掃ドローン
水上清掃ドローンは、水域のゴミや汚染物質を自動的に回収するために設計された無人船舶です。これらのドローンは、港や水路、湖などの水面に浮かぶゴミを効率的に収集することができます。
水上清掃ドローンの強みは以下の点にあります。
- 特定の水域やルートを指定することで自動で清掃活動を行う
- 1日あたり最大500kgのゴミを回収する能力があり長時間稼働が可能
- 人間が直接関与することなく危険な水域やアクセスが困難な場所でも作業が行える
- pHや塩分濃度などの水質データを収集し水質マップの作成に貢献
具体的な活用事例として、水上清掃ドローンは港湾や水路のゴミ収集に使用されます。これにより、人手不足や安全性の課題を解消しつつ、効率的な清掃活動を実現します。
また、湖や池などの自然環境でも活用され、水質データを収集しながら清掃を行うことで、環境保護に貢献します。海洋廃棄物の問題に対処するために特化したこの技術は、将来的にさらに多くの分野で利用されることが期待されています。
水上救助ドローン
水上救助ドローンは、水難事故や災害時の救助活動を迅速かつ効率的に行うために設計された無人船舶です。これらのドローンは、人が泳ぐよりも速く、安全に要救助者の元へ駆けつけることができ、リモコンで操作され、救命具やロープを搭載して要救助者に届けることが可能です。
水上救助ドローンの強みは以下の点にあります。
- 人が泳ぐよりも速く要救助者の元へ到達できる
- 操作者は安全な場所から遠隔操作できるため危険な状況下でも救助活動が可能
- 救命具の配布やロープを対岸へ渡すなど多様な救助活動に対応できる
- 強化FRPを使用し転覆しても起き上がる構造で強い波間の走行でも確実に目的地へ到達できる
具体的な活用事例として、水上救助ドローンは水難事故の際に迅速な救助活動を実現します。災害時にも、遠隔操作で安全な場所から救助活動が可能なため、救助者のリスクを大幅に軽減します。強化FRPの使用により、強い波間でも安定した走行が可能であり、確実に要救助者の元へ到達できます。
また、救命具の配布やロープの搬送といった多様な救助活動に対応することで、幅広い救助シナリオに対応します。これにより、水難事故や災害時の人命救助に大きく貢献しています。
水上ドローンのメリット・デメリット
水上ドローンを導入する際に、メリットとデメリットの両方に目を向けることで適切な機械選定が可能になります。
メリット
水上ドローンには、以下の3つのメリットがあります。
- 自律性
- 安全性
- 効率性
自律性
水上ドローンはプログラムされたルートに従って自律航行が可能で、波に流されてもGPSを使って目的地までたどり着くことができます。
この強みのため、水上ドローンは特に以下の場面で活躍しやすいです。
- 海洋調査や海底資産の検査など、広範囲を効率よく調査
- 災害時の迅速な救助活動において、要救助者の元へ素早く到達
安全性
人間が直接危険な環境に入ることなく、遠隔操作や自律航行により作業を行えるため、安全リスクを低減します。
この強みのため、水上ドローンは特に以下の場面で活躍します。
- 有人潜水が危険を伴うダムや橋脚の点検作業
- 汚染された水域での調査活動
効率性
水上ドローンは、人間の潜水士や測量船に比べて、作業効率が向上し、コスト削減にも寄与します。
この強みのため、水上ドローンは特に以下の場面で活躍します。
- 海洋構造物の点検において作業効率が向上
- 水産業でのいけす管理
デメリット
一方で、水上ドローンを選ぶ上で、以下のデメリットも考慮する必要があります。
- 視界の制限
- 操縦性
- 悪天候への脆弱性
視界の制限
水上ドローンは喫水線が低く、視界が悪いため、高速での操縦が困難な場合があります。
このデメリットを改善するには、高度なセンサー技術を用いて、視界が悪い状況でも周囲の環境を把握するシステムを搭載するなどの手段が考えられます。
操縦性
水上ドローンは、水上の場合、表面が変わり続け、超音波の反射がうまくいかないため、位置の把握が難しくなります。
この問題を改善するには、GPSや他のナビゲーションシステムを組み合わせて、水上での位置把握と操縦精度を向上させることが有効です。
悪天候への脆弱性
水中ドローンは垂直方向の上昇気流を効果的に緩衝することができず、飛行中の水の浸入や熱の蓄積による損傷を受けやすいです。
この問題を改善するには、防水性能を強化し、気流の影響を受けにくい設計にすることで、悪天候下でも安定した飛行を実現することが有効です。
4つの選定基準 | 水上ドローンの選び方
水上ドローンを選ぶ際は、以下の4つの点を考慮する必要があります。
- バッテリー容量
- センサーの精度
- 通信性能
- カメラ性能
バッテリー容量
水上ドローンのバッテリー容量は、ドローンの連続稼働時間に直結します。容量が大きいほど、長時間の運用が可能になり、より広い範囲での活動が実現できます。
バッテリー容量が大きいと、以下のメリットがあります。
- 長時間運行できるため、一度の充電でより多くの作業を完了可能
- 効率的なデータ収集や監視が可能
- バッテリー交換の頻度が減るため、運用コストが低下し、作業の中断が少ない
これらのメリットは、海洋調査や災害時の救助活動など、バッテリーの交換頻度が低いことが望ましい場面で活躍します。
その一方で、バッテリー容量が小さい場合のメリットは、以下のとおりです。
- ドローンの重量が軽くなり、機動性が向上
- 小回りが効くため狭い空間や複雑な環境での操作に適している
このため、研修や教育、イベント撮影など、一回あたりの使用時間が短い場面で活用されることが多いです。
センサーの精度
センサーの精度が変動すると、水中での物体検出能力、ナビゲーションの正確性、データ収集の品質が変わります。高精度のセンサーは、より詳細な情報を提供し、水中環境の正確なマッピングが可能になります。
センサーの精度が高い場合のメリットは以下のとおりです。
- 精度が高いセンサーは、より小さな障害物も検知でき、水中での詳細な3Dマッピングや物体識別に役立つ。これにより、より正確なデータ収集と分析が可能になる
- 高精度のセンサーは、特に科学的調査や海底資源の探査、海洋生物の監視など、詳細な情報が求められる用途に適している
例えば、海底の詳細な地図作成では、高精度のソナーセンサーを使用して、海底の地形や障害物を詳細にマッピングします。また、環境モニタリングでは、水質の変化や海底生態系の監視など、環境保護活動において正確なデータ収集が求められる場面で活躍します。
センサーの精度が低い場合のメリットは以下のとおりです。
- 精度が低いセンサーは、安定した航行に役立ち、ドローンの操作性を向上させることができる
- センサーの重量や消費電力が少ないため、ドローンの耐久性が向上し、航行時間を延ばすことができる
- 低精度のセンサーは、一般的な監視や簡易な調査に適しており、コストを抑えつつ広範囲の調査を行う際に有効である
例えば、教育目的では、学生がドローンの基本操作を学ぶためのトレーニングや、初心者が操作の練習をする場合に高精度センサーが必ずしも必要ない状況があります。また、レクリエーション活動では、釣りや水上スポーツの撮影など、楽しむための使用や、比較的低い精度で十分な場面で使用されます。
通信性能
通信性能が変動すると、ドローンの遠隔操作のレスポンスタイム、データ転送速度、通信可能距離が変わります。高性能な通信システムは、より安定したコントロールと迅速なデータ伝送を実現してくれます。
通信性能が高い場合のメリットは以下のとおりです。
- 長距離での操作が可能
- 信号の遅延や中断が少ないリアルタイムでの高解像度映像のストリーミングや大容量データの転送が可能
- より詳細な監視や分析が可能
例えば、海上監視・警備では、広範囲の海域を効率的に監視し、不審な船舶や違法操業をいち早く発見することができます。高画質カメラや赤外線カメラを搭載することで、昼夜を問わず鮮明な映像をリアルタイムで伝送することが可能です。また、ソナーを搭載することで、海中の様子も把握することができます。
一方、通信性能が低い場合のメリットは以下のとおりです。
- システムがシンプルになるため、コストが抑えられ、メンテナンスが容易
- 短距離での操作やデータ転送に特化しており、小規模な作業や狭い範囲での使用に最適
例えば、水質調査では、水質汚染の状況を長期的に監視することができます。水質測定器を搭載することで、水温、水深、塩分濃度、溶存酸素量などのデータを定期的に収集することが可能です。また、趣味での使用では、ラジコン感覚で水上ドローンを操縦し、カメラを搭載することで、操縦している様子を録画することが楽しめます。
カメラ性能
カメラ性能が変動すると、水中での映像や写真の品質が変わります。高性能なカメラは、より鮮明な画像を提供し、詳細な観察や分析が可能になります。
カメラ性能が高い場合のメリットは以下のとおりです。
- 低照度でもクリアな映像を撮影可能で、科学的調査や環境モニタリングでの利用に最適
- 細かいディテールを捉えることができるため、海底の地形や生物の観察に有効
例えば、プロフェッショナルな映像制作では、映画やドキュメンタリーの撮影で、高解像度の映像が求められる場合に活躍します。また、環境調査では、野生生物の観察や環境モニタリングで、詳細な画像が必要な研究に役立ちます。
一方、カメラ性能が低い場合のメリットは以下のとおりです。
- シンプルな構造でコストが抑えられ、日常的な監視や簡易な調査に最適
- データの保存や転送に必要な容量が少なく、バッテリーの消費も抑えられる
例えば、レジャー用途では、釣りやボートの楽しみ方として、水中の様子を撮影する際に適しています。また、教育目的では、学校のプロジェクトや環境学習で、生徒たちに水中の生態系を見せるために活用されます。
水上ドローンを製造するメーカー3社
水上ドローンを製造するメーカーには、以下の3社が挙げられます。
- everblue technologies
- PowerVision
- 炎重工
everblue technologies
everblue technologiesは、自動操船ヨットや水上ドローン、除雪ドローンなどの設計・開発、製造を行う企業です。再生可能エネルギーを利用した自動操船ヨットの実現を通じて、地球温暖化の原因となる排出ガスを抑制し、自然と共に歩む豊かな未来を目指しています。
同社は、水上点検ドローン、水上測量ドローン、水上救助ドローンを主に製造しています。
PowerVision
PowerVisionは、産業用ドローン、消費者向けドローン、水面および水中ドローン装置の研究開発、製造、販売、およびアフターサービスを行っている企業です。中国(北京、上海、深セン、蘇州)、米国(シリコンバレー)、フィンランド(ヘルシンキ)、日本(東京)で事業を展開しています。
同社は、水上点検ドローンや水上測量ドローンを主に製造しています。
炎重工
炎重工は、最先端の制御技術を用いて水上ドローンや水中カメラ、生体群制御®などの研究・開発・販売を行っているメーカーです。同社は「制御技術」をコアとした自動化製品、サービスの開発、販売を行っており、水産領域での活動が特に注目されています。
同社は、水上点検ドローン、水上測量ドローン、水上清掃ドローン、水上救助ドローンを主に製造しています。
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