例えば、2020年3月に発売されたiPhone 12 Pro/Pro MaxにLiDARセンサーが搭載されたことが当時注目を集めました。
しかし、この先進的なLiDARセンサーを取り入れる際、例えばミリ波レーダーや超音波センサーとの特徴の違いを理解せずに選んでしまうと、予算価格のオーバーや開発の遅れが生じます。
この記事では、LiDARセンサーとは何か、その種類と選び方を解説し、主要なLiDARセンサー企業5社の比較を紹介します。導入検討前に情報を整理しておくことで、最適な機械選びが可能となるので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
LiDAR(ライダー)センサーとは?原理と2種類の違いを解説
LiDARセンサーは、自動運転の実用化に向けて搭載されていることも多い重要なセンサーです。この章では、その基本的な仕組み・技術的な原理と区別される2タイプについて説明します。
LiDARセンサーの仕組み・技術的な原理
LiDARセンサーとは、“Light Detection And Ranging”の略称で、光を使用して物体や環境の距離や形状を計測する技術を指します。レーザー光を物体に照射し、その反射光が戻ってくる時間を計測したり光の周波数を計測したりすることで、物体までの距離を数ミリから数センチ程度の距離測定精度で算出します。
この操作を高速で繰り返すことにより、物体や環境の詳細な3Dマップを構築できます。
LiDARの主な特徴として以下の点が挙げられます。
- 作成精度が10ミリ程度の詳細な3Dモデルを生成することが可能
- 昼夜や天気の変動に影響されにくい
- 数百メートル先の物体までの距離を確実に計測できる
通常のカメラは物体の色や形の2D情報のみを提供するのに対し、LiDARは物体の深度まで計測できます。
超音波センサーやレーダーも距離情報を提供するものの、LiDARのような高解像度な3Dマッピングは行えません。このため、自動運転車や地形測量など、高精度な3Dデータが求められる場面でLiDARは不可欠となっています。
ここまで、LiDARセンサーの基本的な仕組み・原理を説明してきました。次の章では、LiDARセンサーの基本となる2種類について紹介します。基本の種類を押さえることは情報の整理に繋がりますので、続けてお読みください。
基本的な2種類|LiDARセンサー
ここからは、LiDARセンサーの基本的な種類について説明します。自動運転車やドローンの目のような役割を果たしてくれるLiDARセンサー。大別すると以下の2つに分けられます。
それぞれのLiDARセンサーのポイントは次の通りです。
Point
光位相式LiDARセンサー(ソリッドステート式):高精度な3Dマッピングなどの計測・測量MEMS式LiDARセンサー(ソリッドステート式):ロボットなどに搭載する小型のLiDARセンサー
機械的回転式LiDARセンサー:360度・広範囲のLiDARセンサースキャン
ソリッドステート式スキャニング
ソリッドステート式スキャニングは、可動部分を持たない静的な構造を持つLiDARセンサーの一種です。このタイプのLiDARは、耐久性や信頼性が高く、長期間の使用や過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。ソリッドステート式にはいくつかの種類がありますが、ここでは主要な2つのタイプについて紹介します。
光位相式ソリッドステートLiDARセンサー
光位相式ソリッドステートLiDARセンサーは、レーザー光の位相の変化を基に距離を測定するLiDARシステムです。最大の特徴は動く部品を使用せず、レーザーの放射方向や受光部を電子的に制御するので耐久度が高いことです。- 寿命が10年から20年程度と長く、丈夫である
- 高速スキャンと高い応答性
- 数ミリメートル~数十マイクロメートル程度の高計測精度
- 数百メートル離れた物体も正確に検出できる
- サイズが小さいためコンパクトで組み込みやすい
メリットが多い一方で、光位相式LiDARセンサーのシステム設計は複雑であり、高度な技術が要求されるというデメリットもあります。また、1キロメートル以上離れた場所の測定や急速に動く動体や環境の検知など、苦手なシーンもあるので注意が必要です。
光位相式ソリッドステートLiDARの活用例
- 自動車の運転支援や自動運転の際、道路の障害物や他車の検出
- ドローンのナビゲーションや衝突回避
- 工場や倉庫の環境3Dマッピングやロボットアームの精密操作にまつわる検出・識別
光位相式ソリッドステートLiDARは、これらの特性から多岐にわたる用途での利用が期待されており、今後の技術的進化とともにさらなる展開が予想されます。
MEMS式LiDARセンサー
MEMS式LiDARは、微細加工技術を活用して作られた小さなミラー、MEMSミラーを用いてレーザー光の走査方向を制御する先進的なLiDARセンサーです。MEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの略語で、微細加工技術によって集積化したデバイスを指します。(出典:Wikipedia)このMEMSミラーは、ミリ秒以下のスピードで動作する上、他のLiDARセンサーと比べてサイズが1/10程度とコンパクトです。これらの特性を生かし、ドローンやAR/VRなど小型でありながら高速スキャンが必要な機械に搭載されています。
- レーザーの方向をミリ秒以下のスピードで素早く動かせる
- 従来のLiDARセンサーよりサイズや重量が1/10程度
しかし、MEMSミラーの微細な構造上、物理的な衝撃に対して脆弱であるという問題点が考えられます。
ミラーの動きには物理的な限界があるため、スキャン可能な範囲には制約が生じることもあります。さらに、極端な温度や振動などの外部環境に影響を受けやすい特性も持っています。
MEMS式LiDARセンサーの活用例
- 自動車の運転支援と自動運転
- 家庭用ロボット掃除機や玩具
- ドローンのナビゲーションや衝突回避
機械的回転方式スキャニング
機械的回転方式スキャニングLiDARセンサーは、物理的な部品、例えばモーターやミラーを使用してレーザー光の方向を変え、環境をスキャンするLiDARシステムです。- 360度のレーザースキャンが可能
- 自動車やロボット掃除機、産業用ロボットなどの市場に採用されている実績と信頼性がある
一方、移動部品の摩耗や故障のリスク、そして大きなサイズがデメリットとして挙げられます。
レーザーを放射し、その反射を検出することで物体の位置や距離を計測する方式は他のLiDARセンサーと同じです。機械的回転方式スキャニングの場合、ミラーやレンズを利用してレーザー光の放射方向を変更し、多方向にスキャンを行うことができます。
機械的回転方式スキャニングの活用例
- 自動運転における360度LiDARで障害物検出、車線変更、駐車支援
- ドローンの障害物検出で安全飛行経路の自動計画
- 列車・鉄道の軌道の欠陥検出と安全運行、メンテナンスデータ収集
- 高精度地形マッピング、洪水リスク分析
- 工業用ロボットで環境認識、製品ピッキング、配置、精度向上
なお、現在、自動運転において最も支持されているのは機械的回転方式スキャニング方式です。
ここまで、LiDARセンサーの基本的な種類について説明しました。次の章では、スキャニング方式の違いについて説明します。スキャニング方式の違いによって、得られるデータの質と量が変わってきます。重要な箇所ですので、続けてお読みください。
空間マッピングに影響?2種類のスキャニング方式|LiDARセンサー
LiDARセンサーの技術には、さまざまなスキャニング方式が存在しますが、ここでは主要な「TOF方式」と「FMCW方式」について解説します。
TOF方式
LiDARセンサーの一つであるTOF(Time-of-Flight)方式は、レーザーパルスの放射から反射を検出するまでの時間を計測することで、物体までの距離を特定する手法です。このシステムでは、飛行時間と光の速度の組み合わせで、ターゲットまでの正確な距離を即座に計算します。- レーザーパルスの放射と反射時間から距離を計算する
- FMCW方式より部品数が2種類少なく、センサーの構造が単純
- 遠距離計測も実現可能
しかし、その一方で弱点も存在します。特に、霧や雨などの天候や、大気の乱れなどの外部要因によって計測精度が低下するリスクがあります。また、非常に高速で動くオブジェクトの計測や、複数の反射を識別するのが難しい場合もあります。
TOF方式の活用が想定される場面は例えば以下の通りです。
TOF方式の活用例
- 大規模エリアの地形や標高を高速で計測・測量
- ドローンの空中からのリアルタイム距離計測による飛行経路調整
- 自動車の運転支援や自動運転時の環境スキャンに活用
FMCW方式
FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式は、連続波レーザー技術を利用した距離計測システムです。この方式では、連続的に周波数が変調されるレーザーを放射し、反射したレーザーの周波数との差を計測することで、物体までの距離を特定します。加えて、この方式はドップラー効果を活用することで、物体の速度も同時に計測できます。
- 反射信号の周波数シフトの解析により、距離と物体の速度を同時に計測
- 数マイクロメートル程度の距離計測精度で物体の距離を非常に高い精度で計測
- 物体の相対速度の計測が可能
- 他の方式と比較して外部ノイズに対して強い特性
FMCW方式の活用が想定される場面は例えば以下の通りです。
FMCW方式の活用例
- 自動運転車における障害物の正確な位置や動きの検出
- 製造ライン上の製品の位置や速度をリアルタイムで監視・計測
- ドローンの航空測量
ここまで、LiDARセンサーのスキャニング方式の違いについて説明しました。次の章では、LiDARセンサーを搭載する事例を紹介します。事例を知ることで、LiDARセンサー使用時のイメージがつきやすくなります。貴社の製品にLiDARセンサーの搭載を検討している場合は、ぜひ続けてお読みください。
自動運転などLiDARセンサー搭載の開発・実用事例
LiDARセンサーはその高精度な3Dマッピング能力を活かして、多岐にわたる分野での機械や装置に搭載されています。これらの機械は、LiDARの技術を利用して、より高度な環境認識やナビゲーション能力を持つことができます。
ここでは特に注目を集めている自動車(自動運転)、ドローンと物流・倉庫ロボットについて解説します。
自動車(先進運転支援システム・自動運転)
ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の進化の中で、LiDARセンサーはその中心的な役割を果たしています。自動車に搭載されるLiDARセンサーは、その環境認識能力を駆使して、道路上の安全な運転をサポートします。LiDARセンサーを自動車に搭載することで、ADASや自動運転において以下のことが可能になります。
- 他の車両、歩行者、自転車などの障害物のリアルタイム検知
- 予期しない障害物の検知、レーンの認識、交差点や出口の正確な検知
- 非常に高い精度での距離計測
- 夜間、低照明環境、雨や霧などの天候変動下でも確かなデータ取得
自動運転にLiDARセンサーの搭載することを研究している企業と研究内容の例は以下の通りです。
自動運転の具体的な事例
- WaymoがAlphabet(Googleの親会社)の一部として、多数のLiDARセンサーを使って先進的な自動運転技術の研究・開発を実施
- Uberが自動運転技術の研究を進めており、LiDARセンサーを活用した環境認識技術に取り組み中(参照:自動運転Lab)
ドローン
LiDARセンサーを搭載したドローンは、高精度な3Dマッピングのための強力なツールとして認識されています。組み合わせによっては、上空300メートル程度からの広範囲な計測や、通常アクセスが困難な地域での計測が可能です。ドローンにLiDARセンサーを搭載することで、以下のことが可能になります。
- 数日間かかっていた地上の測量が数時間で終わる
- 地上計測に比べてより100倍近くもの詳細なデータ取得
- 山岳地帯や湿地など厳しい地形や条件における上空からの計測
LiDARセンサーとドローンの組み合わせが活躍する具体的な事例は以下の通りです。
ドローンの具体的な事例
- 木の高さ、密度、生育状態の計測、資源管理や生態系研究
- 洪水リスク評価のための計測
- 地下遺跡や古代の土地形状のデータ収集
- 電力線、道路などの状態確認・問題点の早期発見や維持計画策定
- 採掘状況や残存資源量の計測
物流・倉庫ロボット
物流や倉庫のロボットにLiDARセンサーを搭載することで、倉庫内の機材や荷物を効率的に運べるようになります。これらのロボットは、数多くの商品や機材が配置されている環境で効率的に動作する必要があります。LiDARセンサーを搭載すると、このような環境での高精度な環境マッピングや障害物回避が可能です。
物流や倉庫の領域でLiDARセンサーを搭載するメリットと活用するシーンの例は以下の通りです。
- 障害物や棚の正確な位置把握が可能
- 作業中の人や他のロボットなどを即座に検知し、回避
- 光の強弱に影響されず、夜間や低照明条件でも高精度なデータ取得が可能
LiDARセンサーと物流・倉庫ロボットの組み合わせが活躍する具体的な事例は以下の通りです。
物流・倉庫ロボットの具体的な事例
- アイテムを正確に識別し、効率的にピックアップ
- 倉庫内の商品を自動的に運搬
- 在庫の最適化とスペース利用の効率化が可能
- 事故や障害物のリスクを最小化
ここまで、LiDARセンサー搭載の事例を紹介しました。次の章では、LiDARセンサーを用いるメリットと注意点を説明します。LiDARセンサーを導入する際は、注意点に納得した上で、メリットがあるかどうかを見極めることが重要です。続けてお読みください。
LiDARセンサーの用途・メリットと注意点
LiDARセンサーは超音波センサーなど他の種類と比べて高解像度な情報を取得できますが、導入する上での注意点もあわせて確認しておく必要があります。
ここではLiDARセンサーを導入するメリットと注意点を解説します。
LiDARセンサーのメリット
LiDARセンサーは、その独特の技術特性と高い性能によって、多岐にわたる用途で利用されています。LiDARセンサーを活用する際の主なメリットは主に以下の3つです。
3次元イメージを取得できる
LiDARによる3次元イメージの取得は、現代のセンシング技術の中でも特に注目される領域の一つです。この技術は、レーザーを用いて環境の詳細な距離データを取得し、それを3次元空間上にマッピングすることで、周囲の環境を非常に高い精度で再現します。
LiDARはレーザーパルスを放射し、その反射を検出することで物体までの距離を計算できます。この一連の動作を高速で繰り返すことで、物体の形状、サイズ、位置、方向など、環境に関する多くの情報を正確に提供することが可能です。
LiDARセンサーは超音波センサーに比べて、以下の明確な3つの強みを持っています。
- LiDARレーザーは905ナノメートルや1550ナノメートルという非常に短い波長なので高精度なマッピングが可能(超音波と比べておよそ9,500倍ほど細かい)
- レーザーは電磁波の一種なので、機械波である超音波より広い範囲での検知が可能
- 硬く平坦なもの以外にも柔らかい物体や吸音素材の対象にも有効
このようなLiDARの特性は、3次元イメージの取得において非常に強力です。
長距離の検知が可能
LiDARセンサーは高速で精密なレーザーパルスを放射することで、遠くの物体までの距離を正確に計測できます。例えば、超音波センサーは数メートル先の情報までしか検知・計測できない一方で、LiDARセンサーは数百メートル先の道路や建物を、センチメートル単位で計測することができます。
一方で、超音波センサーは超音波で計測するため空気中で減衰しやすく、数センチから数メートル程度までしか計測できません。仮に300メートル離れた場所の道や建物を検知・計測できたとしても、数メートル単位でのズレが発生する可能性があります。
総じて、長距離の検知・計測が必要な場合は、レーザーを用いたLiDARセンサーが適しています。
悪天候の影響を受けにくい
LiDARセンサーは悪天候に対する耐性が高いことも魅力です。光学技術を基盤とするLiDARは、視覚にとって困難な状況、例えば霧や雨の中でも、物体の位置や形状を精確に識別する能力を持っています。超音波センサーなどは音で検知・検測を実施します。しかし、音は空気中の水分や気温の変化により空気の密度や音速が変動するなど、超音波は環境の影響を受けやすいです。そのため、霧や雨、真夏の気温の影響で正確な検知計測が難しいです。
一方、光は気温や湿度など外部環境の影響を受けづらく、安定してその役割を果たしてくれます。悪天候など外部環境が悪い中でも、超音波センサーよりも優れた一貫性のあるデータ収集が可能です。
ここまでLiDARセンサーのメリットを3つご紹介しました。次のセクションでは、LiDARセンサーを導入する上で理解しておくべき注意点、デメリットをご紹介します。LiDARセンサーを導入する上で発生するトラブルや懸念を回避したい方は、ぜひ次の章も併せてお読みください。
LiDARセンサー活用時の注意点
LiDARセンサーは多くの用途において高い精度と性能を提供しますが、確認しておくべき注意点もあります。主なデメリットは以下の3つです。データ量が多い
LiDARセンサーは、その高解像度と高精度の特性から、短時間に大量のデータポイントを生成します。その結果、データ量が多く、1TBのHDDか32GBのSSDストレージやIntel Core i7以上のCPUなど大量のデータを処理できる機器や管理要件が必要になります。
大量のデータを保存・処理できる機器は一般的なものより高く、超音波センサーなど一般的なセンサーよりもコストが高くなってしまう可能性があります。特にリソースに制約がある環境やアプリケーションにおいては、データ量の多さとそれに伴う要件は考慮すべきデメリットとなります。
一方で、超音波センサーなど他のセンサーでは取得しきれないほど高精度な情報を得られるので、詳細な地形情報や自動運転に必要な場合は、このデータ量に対応した機械設計をすることがおすすめです。
消費電力が多い
LiDARセンサーは高精度の3D環境マッピングによる大量なデータ処理が必要である分、電気の消費が激しいです。そのため、デバイス自体が発熱しやすく、センサーの表面温度は10度以上高くなることもあるため、周囲機器の故障リスクが上がることがあります。
その一方で、LiDARセンサーを使えば他のセンサーでは得られない高精度なマッピングや数百メートル先の長距離検知が可能である点が魅力です。
特に、超音波センサーと比べると取得できるデータが高精度で、同じマッピングをするとしても飛行時間を10%程度削減できます。長距離の検知計測が可能な上、悪天候に対する耐性があるため、利点に対する消費電力量はトレードオフとして考えて置く必要があります。
価格が高い
LiDARセンサーは高品質なレーザーや高速フォトディテクタなど先進的な技術を用いた部品が必要なため、超音波センサーと比べて10倍以上の値段(単価100万円以上)になってしまうことがあります。そのため、予算が取れない場合は導入が難しいことがあり、超音波センサーなどで代用する必要が出てきます。
一方で、超音波センサーと比較すると取得情報量が多く、超音波センサーでは対応できないドローンを使った高精度な3Dマッピングや障害物が多い自動運転など環境で活躍します。
ここまでLiDARセンサーのメリットと注意点をご紹介しました。LiDARセンサーが貴社の用途に必要な機能を持っている場合は適切な投資を行うことで、LiDARセンサーのメリットを最大限享受できます。
次の章では実際にLiDARセンサーを比較する方法をご紹介します。LiDARセンサーを比較して貴社に最適なものを選びたい方は、ぜひ最後までお読みください。
選定方法は?7つの比較基準| LiDARセンサーの選び方
LiDARセンサーは、その高い精度と詳細な3Dマッピング能力から様々な分野での利用が増加しています。しかしながら、単一のLiDARセンサーがすべての用途に適しているわけではありません。
以下の7つのポイントは、適切なLiDARセンサーを選択する際の考慮点として非常に重要なものです。
スキャニングする空間の範囲
LiDARセンサーの選択において、スキャニングする範囲は非常に重要な要因の一つとなります。LiDARセンサーが検知計測できる範囲が広いと汎用性が高まる一方で、センサー自体の価格が上がったり、用途に対して不必要な範囲の情報まで取得したり、コストパフォーマンスが落ちたりします。例えば、機械的回転方式スキャニングは360度スキャンできるため、ソリッドステート式スキャニングの対応範囲が大きく異なります。
機械的回転方式スキャニングLiDARセンサーは、360度の環境を一度で測定可能です。一方で、物理的な動作でスキャン効率が悪くなり、障害物検知が遅れたり測量精度が落ちたりします。
ソリッドステート式スキャニングLiDARセンサーは、高速な情報処理と迅速なスキャニング能力があることが特徴で、精密なスキャニングが可能です。ただし、機械的回転式と比べてスキャニング範囲が限定的になります。
以上を踏まえて、次のような使い分けをすることが多いです。
スキャニング範囲での使い分け
- 遠距離の物体や建物を計測する場合:機械的回転式LiDARセンサー
- 速く精密な計測が必要な場合:光位相式LiDARセンサー
- 価格やサイズなど他の要素を優先させる場合:MEMS式LiDARセンサー
スキャニングの速度
LiDARセンサーの選択において、スキャン速度の優先順位を明確にすることは非常に重要です。スキャニングの速度は、センサーがどれだけ迅速に環境をキャプチャし、データを生成することができるかを示す指標として用いられます。例えば、スキャニングが高速の場合、動的な環境や動くオブジェクトの追跡に力を発揮します。このため、自動運転車やドローンのリアルタイムナビゲーションに用いられることが多いです。一方、大量の3D点群データを生成するため、ストレージや処理に課題があります。また、電力も多く消費する傾向です。
スキャニングが低速だと、より詳細かつ精密な3Dマッピングやデータ取得が可能になります。環境モニタリングや高精度データを要求する研究・実験に最適なのは、低速スキャニングができるLiDARセンサーです。ただし、低速が原因となるデータ取得時のタイムラグや遅延の可能性は考慮すると良いです。
一般的な傾向として、スキャンの速度に対するLiDARセンサーの種類は以下の通りです。
スキャニング速度と種類
- 精密かつ高速なスキャン:機械的回転式LiDARセンサー
- 低~中程度の精密さの高速スキャン:MEMS式LiDARセンサー
- 精密かつ低速スキャン:光位相式LiDARセンサー
レーザーの波長
LiDARセンサーの選択の際、注目すべきは使用するレーザーの種類です。レーザーの波長によって、物質との相互作用や浸透能力が異なり、得られる情報や計測の精度に影響を与えます。例えば、LiDARセンサーに搭載されることの多いレーザーは以下の3種類です。
- 近赤外線レーザー (NIR)
- 緑レーザーのLiDARセンサー
- 中赤外線レーザー (SWIR) のLiDARセンサー
近赤外線レーザー (NIR) のLiDARセンサーは、人の目には見えないレーザーで安全性が高いです。また、大気中での反射率が高いので長距離の検知・計測が可能となります。広範囲の地形測量や都市・森林の大規模3Dモデリングでよく使用されます。
次に、緑レーザーのLiDARセンサーです。緑レーザーは、水中での透明度が高いのが特徴です。そのため、沿岸や河川での地形測量、水中の障害物探知などに使用されます。
最後に、中赤外線レーザー (SWIR) のLiDARセンサーの特性です。このレーザーは物質の化学的特性の識別に特化しています。細やかなエッチングやマーキングが求められる場面で使用されるため、鉱物の識別・マッピングなどに使われます。
レーザーの強さ
LiDARセンサーのレーザー強度が強ければ遠くの物体を検出しやすく、弱ければ近接する物体に対して安全で効率的に動作します。例えば、強度の強いレーザーを使用するLiDARセンサーであれば、数百メートル先まで検知ができます。高解像度の3Dマッピングも可能なため、大規模な地形測定に適用できます。一方で、人の目への直射など安全性には懸念があります。また、高額になる傾向です。
他方、強度の弱いレーザーを使用するLiDARセンサーは消費電力が低く、発熱の可能性も低いなど、公共の場所や家庭などで安心して使用が可能です。ただし、検知距離や解像度に制限があります。また、高解像度の3Dマッピングや環境変化への適応は苦手とします。
サイズ
LiDARセンサーの使用目的や取り付ける場所、必要な性能や精度、そして予算に応じて、適切なサイズを選択することが重要です。大型LiDARセンサーは航空機や大型ドローンを使用した土地測量や地形解析などに最適です。逆に、小型のLiDARセンサーは小型ドローンやロボットの障害物検出、倉庫など狭い室内の測量や自動運転の補助センサーに適しています。
大型のLiDARセンサーは、高性能・高解像度であることが多いです。また、測定精度が安定しており、データにムラがなくなるのも特徴です。これらから、詳細なデータ取得に最適だと言えます。一方で、特に移動体への取り付けが困難なことが多いです。また、価格も高い傾向にあります。
小型のLiDARセンサーは、取り付けに関しての自由度が高いです。また、低価格・省エネルギーなため、ドローン地形測量などに用いられています。ただし、大型のものと比べて回路は複雑になるため、計測能力は下がります。また、低コスト量産の影響で耐久性も引くです。
価格
LiDARセンサーの価格は、そのスペックや性能に直結しており、高価なものほど高性能な特性を持つことが一般的です。しかし、高価なものだけが良いわけではなく、用途や要件に応じて適切なコストのセンサーを選択することが求められます。高価なLiDARセンサーであれば、高性能で信頼性の高いことが多いです。先進的な機能も備わっていることが多いため、高い解像度や長距離測定に最適です。また、耐久性も高いことが多いです。しかし、初期費用やメンテナンス費が高く、電力消費量が多いことには注意が必要です。
反対に、安価なLiDARセンサーは初期投資が低く、故障した際の損益リスクも低くなります。一方で、3Dモデリングや自動運転用途に必要な性能や解像度は得られません。また、簡易的な設計なため、耐久性が低いです。
価格を決定する要因として、LiDARセンサーの内部部品が挙げられます。それぞれの部品例と説明、それらがコストにどのように影響するかを次に示します。
コストに影響する部品例
- レーザー発振器:出力の強さと価格が比例
- 光検出器 (Photodetector): 感度と価格が比例
- ガルバノミラーやMEMSミラー: スキャニング速度と価格が比例
- 光学レンズ: 高品質や特殊材料を使用したものは高価
必要な認証の取得
製品にLiDARセンサーを導入する場合、それが対象とする市場や地域の認証や規格の確認は極めて重要です。必要な認証を取得できていないと特定の国でLiDARを使用できない、もしくは制限されることがあります。認証が必要な理由は次の3点を挙げられます。
- LiDARが放出するレーザーが人や環境に安全なのを確認するため
- 国や地域による輸入や販売の許可条件を満たすため
- 消費者やビジネスパートナーに製品の信頼性や品質をアピールするため
もし、仮に認証を取得しないままLiDARセンサー使用の製品を販売してしまうと、次のような事態が発生してしまうかもしれません。
潜在的なリスクの例
- 輸入制限や販売制限により、製品供給の阻害
- 後から製品が安全基準を満たしていないと判断されるリスク
- 市場からの製品回収や販売停止命令の可能性
- 製品に関連する事故や問題が発生した場合の法的責任
- 企業の信頼やブランドイメージへの悪影響のリスク
このようなトラブルを避けるためには、事前に市場や地域の認証や規格をきちんと確認し、適切な手続きを通じて認証を取得することが不可欠です。これにより、製品の安全性や信頼性を確保し、市場進出をスムーズに進めることが可能となります。
以上がLiDARセンサーを比較する上で必ず比較すべきポイントです。この7つの点を踏まえて、LiDARセンサーを製造するおすすめのメーカーをご紹介します。
自社の用途に最適なLiDARセンサーを製造するメーカーをお探しの方は、ぜひこのままご覧ください。
LiDARセンサーを製造しているメーカー5選と比較を紹介
LiDAR技術は近年、自動運転車やドローン、地形測定などのさまざまな分野での利用が拡大しており、この背景には、世界各地のメーカーが高性能なセンサーを開発していることが挙げられます。
以下では、世界で注目されているLiDARセンサーのメーカーや提供企業を5社ピックアップして紹介します。これらの企業は、それぞれ独自の技術や製品を持っており、求めるLiDARに合わせてと合わせる企業を選ぶことがおすすめです。
製造しているLiDARセンサーの種類を比較して、貴社の用途にマッチする企業を選定しましょう。
主要なLiDARセンサーの企業5選
光位相式 LiDARセンサー |
MEM式 LiDARセンサー |
機械的回転方式スキャニング LiDARセンサー |
|
---|---|---|---|
コニカミノルタ | × | × | ◎ |
光響 | ◎ | ◎ | × |
ビーイーエー ジャパン |
◎ | ◎ | × |
オプテクス エフエー |
◎ | ◎ | × |
オースター | × | × | ◎ |
コニカミノルタ(Konica Minolta)
コニカミノルタは、光学技術を活かしたLiDARセンサーを開発しています。同社のLiDARセンサーは、自動運転車やロボット、ドローンなどの分野で採用されています。同社は検知に適した光位相式LiDARを製造し、最高0.03ミリメートルの解像度で情報を取得できます。
最大300メートル先まで検知・計測できるため、コニカミノルタのLiDARセンサーは自動運転車やロボット、ドローンなどの分野で採用されています。
光響(Kokyo)
光響は、2009年に設立された日本のLiDARセンサーメーカーです。東京都港区に本社を置き、世界中に拠点を展開しています。同社は検知に適したMEMS式LiDARセンサーを製造していて、0.03ミリメートルの解像度と最大300メートルの測定距離を実現しています。
数十万円程度のLiDARセンサーも製造していて、業界内ではコストパフォーマンスが良い製品を製造していると評判です。
高性能かつ低コストなLiDARセンサーを展開し、自動運転車、ロボット、ドローンなどの先進技術分野での採用が進んでいます。
ビーイーエージャパン(BEA Japan)
ビーイーエージャパンは、1965年にベルギーで設立されたBEAの日本法人で、日本でLiDARセンサーを開発・製造・販売している会社です。機械的回転方式LiDARセンサーやMEMS式LiDARセンサーの製造も行っていますが、特に光位相式LiDARの分野では長年の経験と実績を持ち、高い技術力を有しています。
同社の光位相式LiDARは、特にドローンを用いた測量やAGV(無人運搬ロボット)、自動運転などに使われています。
オプテクス・エフエー(OPTEX FA)
オプテクス・エフエーは、京都に本社があるレーザー変位センサの開発・製造・販売で長年の実績を持つ企業です。レーザー変位センサは、LiDARセンサーにも応用されています。同社のLiDARセンサーの強みはレーザー変位センサの技術力で、測定精度は±0.1ミリメートル程度です。一般的なLiDARセンサーは±1ミリメートル程度なので、オプテクス・エフエーのLiDARセンサーは平均より10倍程度、精度が高いことになります。
そのため、同社のLiDARセンサーはロボットの自律走行や物体認識、3D地図やモデルを作成するための測量で活用されています。
オースター(Ouster)
オースターは、2015年アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコで設立された先進的なセンサーメーカーです。マッピングに適した機械的回転方式LiDARセンサーを製造していて、360度検知できる製品を製造しています。
センサー自体は小型・軽量で、平均して手のひらサイズ、1.5キログラム以下のものを取り扱っています。
最大400メートルの検知距離、0.03ミリメートルの解像度を実現しており、特に検知・計測距離においては他社より優位です。
オースターのLiDARセンサーは、自動運転車からロボット、農業やインフラ関連の産業に至るまで幅広い分野での導入が進んでいます。