今回は、配膳ロボットの概要から導入のメリット、さらに選定時に重要な比較ポイントまで詳しく紹介します。予算や用途に応じた最適なモデル選びの参考にしていただければ幸いです。
また、コストを抑えるための補助金活用法も解説しますので、導入を検討中の方はぜひご覧ください。
目次
配膳ロボットとは?仕組みをご紹介
配膳ロボットは、飲食店や病院、インターネットカフェなどで使用されるロボットです。主に食事の配膳や下膳を行うために開発され、人手不足を補うことや業務効率化のため、コロナウイルスの蔓延をきっかけとした非接触・非対面のニーズに応える上で導入され始めています。
このロボットは、自律的に走行するルートを決めながら料理やドリンクを自動かつ非接触で配膳したり、食事後の食器を大量に持ち運ぶことができます。周囲の環境を見ながら柔軟にルートを変更して目的地までたどり着くため、人間並みの配膳機能を持ち合わせています。
配膳ロボットの最大の特徴は、自律的に配膳するルートを決めて走行できることです。これを実現する上で鍵となっている主な技術は以下の通りです。
- タグナビゲーション式:店内に自律走行の目印となるタグを設置し、配膳ロボットが進むルート上の天井に位置マーカーを貼り付け、それをロボット上部に取り付けられた赤外線センサーが読み取ることで店内を走行
- SLAM (Simultaneous Localization and Mapping):LiDAR(Light Detection and Ranging)などのセンサーを使用して周囲の状況を把握し、移動量を推定しながら最適なルートを自律走行する
- 障害物回避センサーLiDAR:店舗内の環境地図を作成し、障害物をよけることが可能
- AI音声技術:一部の配膳ロボットに搭載されていて、施設内の案内や注文、会計のサポート、日常会話まで対応
3つのメリット | 配膳ロボットを活用すべき理由
アルバイトスタッフの代わりに配膳ロボットを活用すると、以下のようなメリットがあります。
- AIを活用していて効率的に稼働できる
- 精度が高い
- 衛生的である
- データ収集に役立つ
AIを活用していて効率的に稼働できる
配膳ロボットを活用すると24時間365日連続稼働が可能となり、業務の中断がなく高い稼働率を実現できます。そのため、人件費削減やスタッフの負担を軽減でき、特に夜間や休日の労働コストを大幅に削減できます。また、一貫したサービス提供が可能でミスの減少や顧客満足度の向上が期待できます。
精度が高い
配膳ロボットは高い精度で動作できるため、ヒューマンエラーを減らせます。これにより、サービス品質が向上し、業務の効率化が図られるだけでなく、スタッフ自身の負担も軽減され、コスト削減に繋がります。
衛生的である
配膳ロボットを導入すると非接触での配膳が可能なので、衛生的に食品を運べます。これにより、感染リスクが低減され、顧客は安心して食事を楽しむことができます。また、スタッフの安全も確保され、食品ロスの削減や業務効率の向上が実現します。衛生的な環境を提供することで、ブランドイメージの向上にも繋がり、顧客満足度が向上します。
データ収集に役立つ
配膳ロボットの導入により、作業データの収集が可能となり、業務の最適化や効率化に役立てることができます。データを収集・分析することの最大のメリットは、業務プロセスの改善する最初のきっかけを得られることです。これにより、配膳ルートや動作の最適化が可能になるほか、作業時間の短縮やコスト削減が実現し、顧客満足度も向上します。
また、予測分析を活用して需要予測や在庫管理が最適化され、柔軟な対応が可能となります。
配膳ロボットのデメリット
一方で、配膳ロボットを導入する際は以下の3点に注意する必要もあります。
- 初期コストがかかる
- 専門的な知識が必要
- メンテナンスが必要
初期コストがかかる
配膳ロボットの初期コストは高く、小規模ビジネスにとって大きな負担になる可能性があります。貴社で余裕を持った予算を設定する必要がある他、以下の対策を行うことでこのデメリットを軽減できます。- リースやレンタルオプションの利用
- 政府の補助金や助成金の活用
- 段階的な導入計画やROIの計算による投資回収率の明確化
- 共同購入やメーカーとのパートナーシップ、カスタマイズ
専門的な知識が必要
配膳ロボットの操作やメンテナンスには一定以上の知識が必要で、スタッフのトレーニングが求められます。この点は、以下のような対策で負担を軽減できます。- 包括的なトレーニングプログラムや継続的なサポート体制の整備
- 直感的なインターフェースの導入や詳細なマニュアルの作成・提供
- 定期的なアップデートとユーザーフィードバックの活用
メンテナンスが必要
配膳ロボットを安全に活用し続けるには、メンテナンスに時間とコストを掛ける必要があります。負担に感じるポイントもあるかもしれませんが、以下の点を抑えることで負担を軽減できます。- 予防保守の実施や迅速なサポート体制の整備
- スタッフに基本的なメンテナンススキルを習得させる
- 交換部品の常備
- リモートモニタリングの導入
- メンテナンス契約を活用する
6つの比較基準 | 配膳ロボットの選び方
配膳ロボットには様々なメーカーや機種がありますが、以下のポイントを抑えて比較することで、貴社に最適な配膳ロボットを導入できます。
- 積載量
- 配膳スピード
- ロボットのサイズ
- 稼働時間
- AIの性能
- 価格
積載量
積載量の変動は、ロボットの運搬能力に直接影響を与える。積載量が増加すると、一度に運べる食器や食事の量が増え、効率が向上します。その一方で、積載量が増えるとロボットのサイズや重量、バッテリー消費なども変化する可能性があるため、それぞれのメリットを比較してバランスを考える必要があります。積載量が多い場合のメリット
- 多くのアイテムを一度に運べるため、配膳の回数を減らし、効率を向上できる
- スタッフの負担が軽減され、他の業務に集中できる
- 大きなイベントや施設での使用に適している
積載量が少ない場合のメリット
- 初期投資が低く抑えられる
- 小さなロボットは限られたスペースでも運用可能
- 小型のロボットは操作が簡単で直感的であることが多い
- 故障時の修理が比較的容易でコストが低い場合がある
- 狭い場所や障害物が多い環境でも移動が容易
配膳スピード
配膳スピードの違いは、レストランのサービス効率に直接影響します。スピードが速くなると、注文から配膳までの時間が短縮され、顧客満足度が向上する可能性がある。一方で、あまりに速すぎると安全性に問題が生じることもあるため、貴社に最適なスピードを見極める必要があります。配膳スピードが速い場合のメリット
- 顧客の待ち時間が短縮され、サービスの質が向上
- ピークタイムの効率化により、より多くの顧客に対応可能
配膳スピードが遅い場合のメリット
- 安全性が向上し、事故のリスクが減少
- 機械の耐久性が向上し、長期的な運用コストを削減可能
ロボットのサイズ
ロボットのサイズによって、運用可能な環境や運搬能力が変わります。大きなサイズのロボットはより多くの食器や食事を運べる一方で、狭いスペースでは運用が難しくなる可能性があります。ロボットのサイズが大きい場合のメリット
- 大量の食器や食事を運ぶ能力が向上
- 効率的な配膳が可能
- 多機能を搭載するスペースが確保できるため、より高度なサービス提供が可能
ロボットのサイズが小さい場合のメリット
- 小さなスペースでも運用が可能で、狭い通路や小規模な店舗に適する
- 初期コストや維持費が抑えられるため、導入しやすい
稼働時間
用途によっては何度も充電できないこともあるので、一度の充電で稼働できる時間を確認する必要があります。稼働時間が長いロボットは、頻繁な充電の必要がなく、より長時間にわたってサービスを提供できます。稼働時間が長い場合のメリット
- 長時間の連続稼働が可能で、シフト調整や人員配置の柔軟性が向上
- 営業時間中の運用がスムーズになり、顧客へのサービス提供が途切れにくくなる
稼働時間が短い場合のメリット
- 充電時間が短いため、ロボットを迅速に再稼働させることが可能
- 初期コストが低く抑えられる傾向があり、導入しやすくなる
AIの性能
配膳ロボットにおけるAIの性能は、ロボットの効率性、正確性、柔軟性を大きく変えます。貴社に導入する配膳ロボットには、どれほどのレベルのAIが必要か決めてから、最適なレベルの配膳ロボットを導入することがおすすめです。AI性能が高い配膳ロボットのメリット
- 効率的なルート策定:AIが効率的なルートを策定することで、配膳時間が短縮され、業務効率が向上
- 柔軟な対応:高性能なAIは、予期しない障害物や急な変更にも迅速に対応
- 音声認識によるコミュニケーション: 高度な音声認識機能を持つAIは、顧客やスタッフと自然なコミュニケーションを取ることができ、顧客体験の質を向上
AI性能が低い配膳ロボットのメリット
- コストの低減:性能を抑えたAIロボットは初期導入コストが低く、特に小規模ビジネスや予算が限られている場合に採用しやすい
- シンプルな操作性:性能が低いAIは機能がシンプルであり、操作や設定が容易であることが多い
- メンテナンスの容易さ:故障やトラブルが発生した際の修理やメンテナンスが比較的容易で、専門知識が少なくても対応可能
価格
配膳ロボットを選定する際には、価格も重要なポイントです。予算と用途のバランスを考慮し、AIの性能だけでなく、サイズや動く速度などの仕様も検討する必要があります。適切な価格帯のロボットを選ぶことで、効率的な運用が可能となり、初期投資を抑えつつ最大限の効果を得られます。
ロボットの総合的な性能と価格を比較し、ビジネスのニーズに最適なモデルを選ぶことが成功の鍵です。
配膳ロボットを製造するメーカー6社
配膳ロボットを製造するメーカーには、以下の企業が挙げられます。
- Pudu Robotics
- OrionStar Robotics
- アイリスオーヤマ
- タニコー
- キングソフト
Pudu Robotics
Pudu Roboticsは、2016年に深センで創業された国際ハイテク企業です。商用サービスロボットの設計、研究開発、製造、販売を行っており、世界60か国以上で活動している。特に配膳サービスロボットの分野で注目されており、70,000台以上の出荷実績があります。
同社の配膳ロボットは、猫型のロボットとしても知られていますね。 Pudu Roboticsのロボットは、レストラン、病院、学校、オフィスビル、官公庁、地下鉄駅、待合室など、多岐にわたる業界で使用されている。
日本では、ガスト、しゃぶ葉、バーミヤン、サイゼリヤ、焼肉の和民、日高屋、和食さとうなどの飲食店や、シャトレーゼグループのゴルフ場、渋谷エクセルホテル東急、横浜保土ヶ谷眼科などで導入が進んでいる。
OrionStar Robotics
OrionStar Roboticsは、2016年9月に設立されたAIサービスロボット企業です。人工知能技術に基づいて次世代AIロボット製品を開発し、繰り返し作業から人間を解放し、仕事と生活をよりスマートで有意義にすることを目指しています。同社は、LuckiBotという配膳ロボットを扱っています。このロボットは自律走行タイプのサービスロボットで、高度なオートパイロット技術を使用して安全かつ効率的な配膳サービスを提供する。
3Dマップ作成機能、自動ナビゲーション、障害物回避機能を備え、最大積載量40kgで、一回の巡航で4つのテーブルに配膳可能です。
OrionStar Roboticsのロボットは、韓国ソウルのレストランや、ホスピタリティ業界などで導入されています。
高品質で導入しやすく、故障率が低いこと、優れたアフターサービスが提供されていることが評価されている。さらに、世界40カ国以上に48,000台以上のロボットを展開し、5億人以上の人々にサービスを提供しています。
アイリスオーヤマ
アイリスオーヤマは、飲食業界の人手不足や人件費高騰の課題を解決するために配膳ロボットを提供しています。これらのロボットは、業務の効率化や売上への貢献、サービスの質向上、感染対策としての非接触配膳ニーズに対応可能です。
アイリスオーヤマの配膳ロボットは、飲食店やホテル・旅館、小売店など様々な業界で導入されています。例えば、日本医科大学千葉北総病院では、新型コロナウイルス専門病棟で薬や備品等の物品運搬に活用されている。
タニコー
タニコーは、配膳ロボット「PEANUT」を製造している企業です。同社のロボットは、料理の配膳からテーブルを巡回しての下膳など、様々な業務を行い、人手不足の解消や店舗スタッフの負担軽減に貢献しています。タニコーの配膳ロボットは、飲食業界で注目を集めており、人手不足解消に貢献しています。
キングソフト
キングソフトは、AIサービスロボット「Lanky Porter」を提供している企業です。同社のロボットは、食事の配膳や案内誘導、広告宣伝など、多様な機能を備えている。また、博物館、図書館、ホテル、銀行、医療施設、学校、ショッピングモールなど、さまざまな施設での活用が可能です。和食ファミリーレストラン「和食さと」に合計151店舗に導入されており、飲食店やスーパーマーケット、病院、介護施設など、人の多い場所であってもセンシング技術によって障害物を回避し、あらゆるシーンで活躍しています。