超音波流量計|3種類と測定用途・比較基準・主要メーカーをご紹介
  • 最終更新日:2024年4月5日
流量計にはさまざまな種類がありますが、中でも超音波を使用して流量測定をする機器が超音波流量計と呼ばれています。

しかし、超音波流量計は製品ごとに特徴が異なっています。そのため、目的や現場の用途に合わせた機械を選ぶことが重要です。

この記事では、一般的な超音波流量計の特徴と価格帯、構造の解説から、種類別のメリット・デメリット、選定基準、そして主要なメーカー一覧まで紹介しています。

導入検討前に情報を整理しておくことで、最適な機械選びが可能となるので、ぜひ最後までご一読ください。

超音波流量計とは?測定の特徴・原理と価格帯を紹介

超音波流量計の特徴・原理と価格帯

まず最初に、超音波流量計の基本的な特徴・原理と価格帯について説明します。

超音波流量計の基本的な特徴・原理

超音波流量計は、測定対象となる物体内部を伝播した超音波の速度や周波数変化を調べることで、流量の測定ができる計測機器です。

超音波とは、人間の耳には聞こえない、非常に高い周波数を持つ音波のことを指します。医療の分野(例えば、妊娠中の赤ちゃんのエコー画像)や、物の距離を測るセンサーなど、様々な用途で使用されています。

超音波流量計のメリットとしては、圧力損失がないこと、機械的駆動部がないこと、クランプオン型があること、測定精度が高いこと、計測結果の応答が早いことなどが挙げられます。一方で、超音波流量計の注意点としては、直管部が必要なこと、固形物や気泡の影響を受けやすいことなどが挙げられます。

超音波流量計は、次のような一連の流れで動作します。

超音波流量計動作の流れ

  1. 超音波送信器が流体に向けて超音波を発信する
  2. 発信された超音波は、流体とその中に含まれる物質(固体粒子や気泡など)と相互作用する(ドップラー方式では反射された超音波の周波数変化を利用し、伝搬時間差方式では超音波の伝播時間の差を利用)
  3. 上記の相互作用に基づき、超音波受信器が反射を受信後、流体の流速が計算される(ドップラー方式は反射された超音波の周波数変化から、伝搬時間差方式は超音波の伝播時間の差から流速を求める)
  4. 流速と流体が流れる管の断面積を元に、流量算出。これにより、特定の時間における流体の総量を測定する

超音波流量計の価格帯

超音波流量計の値段は、種類や性能によって大きく異なりますが、一般的には数万円から購入が可能です。

例えば、価格帯を次の三区分に分けることが可能です。参考にしてください。

超音波流量計の価格帯

低価格帯:約2万円~約20万円
特徴:基本的なドップラー方式の流量計や簡易な伝搬時間差方式のモデルが主に見られます。小規模な用途や比較的単純な流体の測定に適しており、装置の機能は基本的なレベルに留まります。水処理施設や簡単な工業アプリケーションで使用されることが多いです。

中価格帯:約20万円~約100万円未満
特徴:より高精度で安定した測定が可能な伝搬時間差方式の流量計が一般的です。これらは、温度や粘度が変化する流体や、中規模から大規模な産業用途に適しています。改良されたデータロギング機能や通信インターフェース(Ethernetや無線LANなど)、複数の測定チャネルを持つ製品が含まれます。

高価格帯:おおよそ100万円以上
特徴:非常に高い精度を提供する高度な伝搬時間差方式や、特殊な条件下での使用に適した高機能モデルが含まれます。極端な環境条件下(高圧力、高温度、高腐食性流体など)での使用や、非常に正確な測定が必要な科学的研究や高度な工業プロセスでの使用に適しています。高度なデータ分析機能、複数の測定パラメーター、耐久性などが特徴です。

ここまで、超音波流量計の基本的な特徴・仕組みと価格帯について説明しました。次の章では、超音波流量計の基本構造を解説します。

基本的な特徴と仕組みを押さえた上で構造を理解することで、種類別の特徴が理解しやすくなります。ぜひ続けてお読みください。

超音波流量計の基本構造を解説

超音波流量計の基本構造

超音波流量計は、超音波センサと制御電子回路、流量計本体から構成されています。

超音波センサは、超音波を発生させる送信器と超音波を受信する受信器から構成されます。このセンサは、配管に直接取り付けるインサート型や、配管の外側に取り付けるクランプオン型などが存在します。

  • 超音波センサ
  • 電子制御ユニット
  • 流量計本体

超音波センサ

超音波を送信したり、流体やガス中で超音波の伝播に起こる反射や散乱を検出したりする装置です。以下の2つが存在します。

超音波送信器(トランスデューサー)

特定の周波数の超音波を流体に向けて発信する部品です。超音波は流体の密度や流れの速さに影響を受けるため、送信された超音波の挙動を分析することで、流体の流速や性質を推定することができます。

超音波受信器(トランスデューサー)

送信器から送られた超音波が流体中を通過し、反射または変化した後に戻ってくるのを受信するのが受信器です。この受信した超音波のデータを分析することで、流体の流速や性質を正確に測定します。

電子制御ユニット(EUC)

超音波送受信器からのデータを受け取り、流量や流速などの計算を行う電子装置です。電子制御ユニットは、受信した超音波データの時間差や周波数変化を分析し、流体の特性に基づいて正確な測定値を導き出します。高度なアルゴリズムと処理能力を備え、基本的にはリアルタイムでのデータ処理が可能です。

流量計本体

送受信器を搭載し、流体が通過する管やチャネルの部分です。本体は流体の流れに干渉することなく超音波の送受信ができるように設計されています。

ここまで、超音波流量計の基本構造について説明しました。

超音波流量計の基本構造はこれで押さえられましたが、この構造部分の変動によって、超音波流量計の種類が異なってきます。次の章では、3種類の超音波流量計を確認し、各メリットとデメリットを説明します。

3種類の超音波流量計と用途・メリットとデメリット

超音波流量計の種類とメリット・デメリット

ここからは、超音波流量計の種類とそれぞれのメリット、デメリットについて解説します。超音波流量計は、大きく分けて次の3種類に分けることができます。


伝搬時間差方式

流体の流れに対して斜めに配置された超音波トランスデューサーを使用し、上流と下流の伝搬時間の差から流速を計算し、流量を求めます。不純物のない純水に適しています。

メリット

  • 高精度の測定が可能
  • 大口径の配管でも設置が容易
  • 圧力損失が少ない

デメリット

  • 上流直管部や整流器が必要
  • ノイズによる影響を受けやすい
  • 気泡などの影響を受けやすい

ドップラー方式

流体中の気泡や固形物に当たって反射した超音波の周波数変化を測定し、それから流速を計算して流量を求めます。汚れた水や不純物の多い流体の測定に適しています。

メリット

  • クランプオン型が存在
  • 配管を傷つけない
  • 圧力損失が少ない

デメリット

  • 気泡などの少ない流体の測定には不向き
  • 計測結果の誤差が大きくなる傾向

シング・アラウンド方式

超音波が流体中を往復する際の周波数差を測定し、その差から流速を計算して流量を算出します。超純水または純水の測定に適しています。特定の条件下での使用に限るため、市販されているものはあまり多くありません。

メリット

  • 高精度の測定が可能
  • 小口径の配管、低流速の流体に最適
  • 圧力損失が少ない

デメリット

  • 上流直管部や整流器が必要
  • 計測速度がそこまで速くない

ここまで、超音波流量計の基本構造について説明しました。

超音波流量計の基本構造はこれで押さえられましたが、この構造部分の変動によって、超音波流量計の種類が異なります。次の章では、3種類のレオメーターを確認し、各メリットとデメリットを説明します

5つの比較基準|超音波流量計の選定方法

超音波流量計の選定基準

ここからは、超音波流量計を選ぶ際の選定基準を解説します。機械の導入に際して、検討すべき事項は以下の5点です。


配管の直径

配管の直径が大きくなると、超音波の伝搬距離が長くなり、測定精度が低下する可能性があります。また、配管の直径に合わせて超音波の周波数や角度を調整する必要も出てきます。

例えば、大口径の配管だと、流体の流速は遅くなり、超音波のドップラー効果が小さくなります。超音波の伝搬時間の差は大きくなるので、測定精度が向上する可能性があります。

一方で、超音波の伝搬距離が長くもなるため、測定誤差は発生しやすくなります。それに合わせて、超音波の周波数や角度を調整する必要があります。

配管の直径が大きい場合は伝搬時間差方式が適しています。直径が小さい場合は伝搬時間差方式やドップラー方式(粒子や気泡が多い流体の場合)が適しています。

流体の特性

流体の粘度、純水度合いなどの違いによって、適切な超音波流量計の種類が変わります

例えば、流体の粘度が高い場合、流れが層流に近くなり、超音波の伝搬に影響を与えることがあります。高粘度の流体では、超音波の伝搬速度が遅くなり、伝搬時間差式超音波流量計の測定誤差が増加する可能性があります。

また、流体中に固形物や気泡が含まれている場合、ドップラー式超音波流量計が有効です。固形物や気泡は超音波を反射し、流速に応じた周波数変化(ドップラー効果)を生じさせます。しかし、反射体が少ない場合は測定が困難になることがあります。

一方、流体が純水で、反射する固形物や気泡が含まれていない場合は、伝搬時間差式超音波流量計が適しています。この方式は、流体自体の超音波伝搬特性を利用して流速を計測するため、粒子や気泡の有無に依存しません。

流体の温度

流体の温度が高くなると、超音波の伝搬速度が増加し、測定誤差が発生する可能性があります。また、流体の温度変化により配管の熱膨張や収縮が起こり、超音波の伝搬距離や角度が変わることがあります。したがって、流体の温度に合わせて、温度補正が必要です。

温度が上昇すると、流体の粘度が低下し、流速が増加します。これにより、ドップラー式超音波流量計のドップラー効果が強まり、測定精度が向上することがあります。

一方、温度が低い場合は、超音波の伝搬速度が減少し、測定誤差が減少する傾向にあります。配管の熱膨張や収縮も少なくなり、超音波の減衰や散乱も減少します。

高温の場合はドップラー式超音波流量計が適していることが多いですが、低温の場合や温度の変化が少ない場合は伝搬時間差方式が適しています。温度補正機能を備えているモデルであれば、伝搬時間差方式であっても、温度変化による影響を最小限に抑えることができます。

流体の流速

流体の流速が速くなると、超音波のドップラー効果が増し、測定精度向上の可能性があります。一方で流速が遅すぎると、超音波の伝搬時間差が小さくなり、誤差が増加します。流速変化は、流速分布や流れの乱れを引き起こす可能性があります。よって、適切な超音波の周波数や強度の選択が必要です。

伝搬時間差方式では、流速が速いと伝搬時間差が小さくなり、精度が低下する可能性があります。流速上昇は、乱れや流速分布の変化をもたらすことがあります。流速が低いほど伝搬時間差が大きくなり、精度向上が期待できます。

ドップラー式超音波流量計の場合、流速が高いほどドップラー効果が強まり、精度が向上します。一方で流速が遅いとドップラー効果が弱まるため、精度低下の可能性があります。流速が低すぎると、伝搬が妨げられることもあります。

流体の圧力

流体の圧力が高くなると、超音波の伝搬速度が増加し、測定誤差が生じやすくなります。また、圧力変化により気泡やキャビテーションが発生し、超音波の伝搬を阻害することがあります。そのため、流体の圧力に適応するためには、超音波の周波数や強度を慎重に選択する必要があります。

高圧下では、流体の密度が増し、音速が上昇します。これにより、伝搬時間差方式の超音波流量計で測定精度が改善することが期待されます。一方で、ドップラー式の流量計では、高圧により超音波の周波数変化が小さくなり、精度が低下する可能性があります。

低圧の状況では、超音波の伝搬速度が下がり、測定誤差が減少します。ドップラー式では、圧力が低いほど周波数変化が大きくなり、精度が向上しますが、伝搬時間差方式では、低圧により音速が減少し、測定精度が低下する場合があります。

以上、超音波流量計を選定する際の基準5点を紹介しました。次の章では、超音波流量計を製造するメーカーを一覧で紹介します。続けて読むと、貴社にとって適切なメーカーがわかりますので、是非ご一読ください。

超音波流量計を製造している主要メーカー5社

超音波流量計の製造・販売企業

ここからは、超音波流量計を製造している主要企業を紹介します。貴社の導入条件を整理し、比較基準の5点を確認した後は、実際に超音波流量計を製造している企業を探しましょう。

主要な超音波流量計のメーカー5選


ソーキ

ソーキは、1989年4月に設立された計測機器・測定機器のレンタル・販売を行う会社です。ISO9002、ISO9001認証を取得しています。

ソーキでは、伝搬時間差方式とドップラー式の超音波流量計を扱っています。

強みは、配管工事や設置工事不要で手軽に流量測定が可能なレンタルサービスの提供です。レンタル期間中の故障や不具合には無料で対応し、迅速な交換や修理を保証します。

半導体工場の薬品流量管理、水処理施設の汚水流量管理、食品工場の飲料流量管理など、幅広い業界で利用されています。

オーバル

オーバルは、1949年創業の流体計測機器の専門大手です。同社は、独自のオーバル歯車技術を用いて、高精度な流量計を提供しています。

オーバルが扱う伝搬時間差方式の超音波流量計は、流体や気体の流速に比例する超音波の伝播時間差を利用して流量を測定します。

一方、オーバルのクランプオン式ドップラー超音波流量計は、配管工事や設置工事不要で、容易に流量測定が可能です。マルチパスタイプの超音波流量計は、複数のセンサを使用して高精度な測定を実現し、厳しい要求に応えます。

石油・化学業界での液体やガスの流量管理、食品・医薬品業界での清浄流体の流量管理、半導体・液晶業界での薬液の流量管理、冷暖房施設での消費熱量計算など、多岐にわたる分野で利用されています。

横河電機

横河電機は、1915年に設立された計測機器・制御機器・情報システムの製品とサービスを提供する、日本の産業界をリードするグローバル企業です。

特に、伝播時間差方式の超音波流量計において、横河電機は業界を牽引しています。

横河電機の超音波流量計は、高精度で安定した流量測定を可能にすることが最大の強みです。さらに、クランプオン式の超音波流量計は、配管工事や設置工事が不要で、容易に流量測定を行うことができます。マルチパス方式の採用により、より高精度な測定要求にも対応可能です。

横河電機の製品は、水道・下水道での水量管理、石油・化学業界での液体やガスの流量管理、食品・医薬品業界での清潔な流体の流量管理、半導体・液晶製造業界での薬液の流量管理、冷暖房施設での消費熱量計算など、幅広い業界で信頼されています。

富士電機

富士電機は、1923年に設立された計測機器・制御機器・情報システムの製品とサービスを提供する会社です。長年にわたり、産業界全体の技術革新を支えてきました。

富士電機が扱う伝搬時間差方式とドップラー式の超音波流量計は、それぞれ不純物が少ない清潔な流体や、不純物が多い流体や汚泥・排水の流量測定に適しています。この技術の多様性が、幅広いアプリケーションへの適応を可能にしています。

特に、富士電機のクランプオン式超音波流量計は、飽和蒸気流量の測定に革命をもたらしました。設置や配管工事が不要で、蒸気の効率的な利用や省エネルギー対策を大幅にサポートします。

富士電機の超音波流量計は、水道・下水道、石油・化学、食品・医薬品、半導体・液晶製造業界など、多岐にわたる分野でその精度と信頼性により高い評価を受けています。

愛知時計電機

愛知時計電機は、1898年に創立されました。水道メーター、ガスメーターを中心に、流体計測技術に基づいた計測機器やセンサー・システムの開発と製造を手掛けるメーカーです。

伝搬時間差方式の超音波流量計を含む幅広い製品ラインナップを揃えており、液体用および燃料ガス管理用の超音波流量計を提供しています。

愛知時計電機の超音波流量計の独自の強みは、配管内の流速分布を直接計測する技術の研究開発にも力を入れている点です。これにより、極めて正確な流量計測が可能となり、さまざまな産業での効率化に貢献しています。

純水製造設備の生産量管理、半導体製造設備の純水使用量管理、排水処理設備の処理水移送量管理、食品産業や小規模炉での燃料ガス使用量管理など、多岐にわたる業界で愛知時計電機の超音波流量計が活躍しています。