AGV(無人搬送車)とは?3つの種類と導入するメリットと選び方、製造メーカー5社を解説
  • 最終更新日:2024年4月19日
AGV(無人搬送車)とは「Automated Guided Vehicle」の略で、、近年の物流業界やメーカーの倉庫管理の進化に伴い、その重要性が増しています。

低床型から追従型まで、運搬方法や誘導方式にはさまざまなものが存在し、一概にAGVといっても、その特性やメリット、デメリットは様々です。

無人搬送車の導入を検討する際、単純な比較だけではなく、倉庫や業界の特性、さらにはAMRとの違いまで詳細に理解しなければ、最大限の効果を発揮することが難しいでしょう。

物流や製造の現場での運搬効率や安全性を向上させるため、この記事では最適なAGVの選び方や代表的なメーカーを比較・紹介します。


AGVとは?5つの種類を解説

AGVとは?おすすめの種類と会社の選び方を解説

AGVとは無人で自動的に動作する搬送車のことを指します。

工場や倉庫などで、製品や材料を所定の場所から別の場所へ迅速かつ正確に移動させる役割を担っています。

その動作原理として、床に敷設された磁気テープやRFIDタグをガイドとして走行するものから、最新技術を駆使して周囲の環境を認識し、自律的に動作するタイプまで、多岐にわたる種類が存在します。

AGVの種類には、以下の2つがあります。


積載型AGV

積載型AGVは、さらに以下の4種類に分類することができます。


一般型AGV

積載型AGVとは、その名の通り、物品を上部に積載することができる特徴を持つAGVのタイプです。

このタイプのAGVは、その柔軟性から様々な形状や大きさの物品を運搬することができ、工場内や倉庫、さらには研究施設や病院など、幅広いシーンでの利用が見られます。

最大の魅力はその柔軟性です。様々な形状や大きさの物品を運ぶことが可能で、一度に多くの物品を運ぶことができる大きな積載スペースを持っています。この特徴は、効率的な物流作業を求められる現代の生産現場において、非常に大きな利点となっています。

主流となっている積載型AGVのサイズは以下の通りです。

  • 長さが1,000mm〜2,500mm程度
  • 幅が600mm〜1,200mm程度
  • 高さが300mm〜700mm程度

このレンジのAGVであれば、以下の大きさと重量の物体を運ぶことができます。

  • 大きさ:600mm×600mm×600mmから1,500mm×1,200mm×1,200mm程度
  • 重量:100kg~1,500kg

また、AGVを安全に走行させるには300mm〜500mm程度の余裕が必要です。

積載型AGVは、工場内での製品や部品の搬送、倉庫や物流センターでの入出庫作業やピッキング作業の補助、製造ラインでの部品供給や完成品の搬出、病院での薬や医療器具の搬送、そして研究施設での試験品や材料の搬送など、多岐にわたる用途で利用されています。

低床型AGV

低床型AGVは、その名の通り、他のAGVよりも非常に低い高さを持つタイプのAGVです。

低床型AGVの最大の特徴は、その高さが低いことです。これにより、限られた高さの空間や、他の機械や設備の下を通過することが可能となります。また、一部の低床型AGVには、荷物を持ち上げる機能が備わっており、積載や荷降ろし作業がさらに容易になります。

一般的に、低床型AGVのサイズは以下の通りです。

  • 長さ: 800mm〜2,000mm
  • 幅: 500mm〜1,000mm
  • 高さ: 100mm〜200mm

このサイズ感は、特定の環境や作業内容において、非常に有利となります。

安全な運用のためには、AGVの幅と200mm〜400mm程度の余裕もたせる必要があります。

低床型AGVが運べる物体の大きさは、積載スペースによりますが、一般的には以下の範囲です。

  • 大きさ: 500mm×500mm×500mmから1,200mm×1,000mm×1,000mm程度
  • 重量: 50kg〜700kg

特に低床型のAGVが活躍する場面は以下の通りです。

  • 工場内: 製品や部品の搬送、特に狭いスペースや高さの制限がある場所での搬送
  • 車製造: 車の組み立てラインでの部品搬送
  • 電子製品組み立て: 狭いスペースでの部品搬送
  • 製薬工場: 空間が限られた中での原料や製品の搬送
  • 自動倉庫: 高さの制限がある場所での製品の入出庫

平ボディ・重量級型AGV

平ボディ・重量級型AGVとは、特に重量のある荷物や製品の運搬に特化したAGVのタイプです。

このタイプのAGVの最大の特徴は、大重量の物品や製品を運搬する能力です。他のAGVと比較しても、その運搬能力は圧倒的です。

さらに、平ボディの設計により、運搬中の安定性が高まっており、様々な形状やサイズの物品を運搬する汎用性も持っています。

平ボディ・重量級型AGVの主流となっているサイズは、以下の通りです。

  • 長さ: 2,500mm〜4,000mm
  • 幅: 1,500mm〜2,500m
  • 高さ: 300mm〜600mm

AGVの幅に加えて500mm〜1,000mm程度の余裕が望ましいです。

平ボディ・重量級型AGVは、特に以下のような場面での使用が最適です。

  • 製鉄業界: 重量のある鋼材の運搬
  • 自動車製造: 車のフレームやエンジンなどの重部品の運搬
  • 航空機製造: 大型の部品や材料の移動
  • 港湾施設: コンテナや大型の荷物の移動
  • エネルギー産業: 重量のある機器や部材の運搬

特殊型AGV(コンベア型・フォークリフト型など)

特殊型(コンベア型・フォークリフト型など)のAGVとは特定の作業や業務に特化した機能を持つAGVのカテゴリーです。

このタイプのAGVの最大の特徴は、特定の目的に特化した設計と機能です。例えば、コンベア型AGVは、物品の自動的な積み下ろしを可能にするコンベア機能を持ちます。

その一方で、フォークリフト型AGVは、物品の持ち上げや移動を行うためのフォークを装備しています。その高度な自動化機能により、作業の効率化や人の介入を最小限に抑えることが可能です。

特殊型のAGVの例として、以下のような用途で使われるものが挙げられます。

  • 製造ライン: コンベア型AGVは、製造ラインでの部品の自動供給や運搬に活用
  • 倉庫: フォークリフト型AGVは、高所の棚からの荷物の取り出しや、重量物の運搬に最適
  • 自動車組立: 部品の運搬や取り付け作業に有効
  • 電子部品製造: 繊細な部品の運搬や配置に最適
  • 物流センター: 大量の荷物や製品の運搬、ソーティング作業

牽引型

牽引型のAGVは、さらに以下の2種類に分類することができます。


牽引型後部AGV

後部型AGVは、荷物を車両の後部に牽引する形で運搬する自動誘導車です。このタイプは、一度に多数のカートやトレーラーをジグを使って連結して、大量の荷物を効率的に運ぶことができます。

後部に荷物を接続することで、操舵性を保ちながらも大きな負荷を移動させることが可能です。

このタイプのAGVには、以下の特徴があります。

  • 多くのカートやトレーラーを連結できるため、一度に大量の貨物を運べる
  • 荷物の連結や解除が容易であるため、様々なサイズや形状の荷物に対応可能
  • AGV自体の機動性を損なうことなく、大きな荷物もスムーズに運搬可能

特に役立つ場面には以下のようなものが挙げられます。

  • 製造業において、部品や製品を工場の一部から別の部分へ一度に運ぶ場合
  • 荷物をターミナル間や飛行機への搭乗口まで運ぶ際、後部型AGVは複数のカートを連結して大量の荷物を一度に運べる
  • 物流センターや配送センターで、出荷する商品を仕分け後、出荷エリアまで運ぶ際

牽引型低床AGV

牽引型AGVとは、地面からの車体の高さが非常に低い、他のカートやトレーラーを引っ張る能力を持つAGVのタイプです。

牽引型低床AGVの最大の特徴は、大量の物品や製品を一度に輸送できる点です。さらに、トレーラーやカートの数や種類を変更することで、異なる運搬ニーズに瞬時に対応する柔軟性も持っています。

これにより、一度に大量の荷物を運ぶことができるため、運搬の効率が大幅に向上します。

一般的に、牽引型AGVのサイズは以下の通りです。

  • 長さ: 1,500mm〜3,000mm
  • 幅: 800mm〜1,500mm
  • 高さ: 300mm〜700mm

牽引型AGVが運べる物体の大きさや重量は、接続するトレーラーやカートのサイズや設計によります。一般的には、以下の範囲となります。

  • 大きさ: 2,000mm×1,500mm×1,500mmから5,000mm×2,500mm×2,500mm
  • 重量: 500kg〜2,000kg

特に、以下の場面での使用が特に適しています。

  • 大型工場: 生産ライン間の部品や製品の輸送
  • 物流センター: 大量の製品の入出庫や移動
  • 空港: 荷物や飛行機の部品の運搬
  • 病院: 大量の医薬品や患者の食事の運搬
  • 製造業界: 生産ラインでの部品の供給や製品の運搬

ここまでは、AGVの運搬方法による種類を解説しました。AGVは自動で移動する搬送車ですが、その移動方式には3つの種類があります。

以下のセクションでは、具体的にAGVを動かす3つの移動方式を解説します。


AGVの3つの誘導方式

AGVの移動方式

AGVには、さまざまなタイプが存在し、それぞれの業務や状況に応じて最適な選択が必要です。

以下では、AGVの主要な3つの種類の特徴や使用シーンを詳しく解説していきます。


経路誘導式(磁気テープなどで誘導)

経路誘導式AGVは、物理的なガイドライン、たとえば床に敷設された磁気テープやワイヤを使って、精確な経路を走行します。その結果、高度な安定性を持ちながらも、一定のルートを繰り返し確実に運搬作業を行うことができます。

最大の魅力はその安定性と簡便性です。経路誘導式AGVは、信号の喪失や誤差のリスクが低いため、連続的な運搬作業において非常に信頼性が高いと言えます。

また、新しいルートの追加や変更も、ガイドラインを変更するだけで容易に実施可能です。

しかし、その一方で、柔軟性の面での制約も存在します。ガイドラインを変更するには、新たな敷設や既存のガイドラインの変更が必要となり、それに伴う床の改修作業も考慮する必要があります。

経路誘導式AGVは、以下のような一定のルートを定期的に走行する必要がある場面での導入が増えています。

  • 大量生産工場や物流センター
  • 製薬工場など

自律移動式(センサーなどで誘導)

自律移動式AGVは、独自のセンサリング技術を駆使して、自らの判断で最適な経路を選択し移動する高度な自動搬送システムです。

このタイプのAGVは、レーザレーダーやカメラ、超音波センサーなどの先進的なセンサリング技術を用いて、リアルタイムでの周囲の状況認識を行います。これにより、物理的なガイドラインなしで、環境の変化に柔軟に対応しながら走行することが可能となっています。

最大の魅力は、その高い柔軟性と障害物回避能力です。物理的なガイドラインに依存しないため、急な経路変更や環境の変動に迅速に対応することができます。また、動的な障害物、例えば人や他の車両などをリアルタイムで検知し、適切に回避することが可能です。

しかし、その一方で高度な技術とコストが必要となる面もあります。高度なセンサリング技術や制御技術が求められるため、導入にはそれなりの初期投資や技術的な知識が不可欠となります。

自律移動式AGVは、以下のような柔軟かつ迅速な運搬が求められる多岐にわたる場面での導入が進められています。

  • 大規模な物流センター
  • 製造工程の中間輸送
  • 病院や施設内の輸送

追従式(人や他のAGVで誘導)

追従式AGVは、センサー技術を活用してオペレーターの動きをリアルタイムで捉え、その動きに合わせて迅速に移動します。これにより、オペレーターが目的地まで移動すると、AGVもそれに応じて同じ経路を追従してくるのです。

最大の魅力はそのシンプルさと柔軟性です。オペレーターの動きに自動的に反応し、特別な操作やプログラム設定が不要な点が大きな利点として挙げられます。

また、固定された経路を必要とせず、オペレーターの動きに即座に対応するため、非常に柔軟な運用が可能となります。

しかしその一方で、オペレーターの速度や動きに合わせて移動する必要があるため、一定の制約も伴います。特に複数のオペレーターやAGVが存在する状況では、追従対象の特定や適切な動作が難しくなる場合もあります。

追従式AGVは、以下のようなオペレーターの動きに迅速に対応することが求められる場面での導入が推進されています。

  • 倉庫内でのピッキング作業
  • 病院内での患者や医薬品の輸送
  • 製造ラインでの部品供給

ここまで、AGVの誘導方式について解説しました。AGVには、類似する機器がありますが、その違いはご存知でしょうか?

次のセクションでは、これらの違いを解説します。自社に最適な搬送車をお探しの方は、ぜひ次のセクションに読み進めてください。

AMR・RGVとの違いは何?

AGV,AMR、RGVの違い

AGV(自動誘導車)は、近年の物流や製造業界での自動化推進の中心となる技術として注目を浴びています。

このセクションでは、AGVとその他の移動システム、特にAMRとRGVとの違いに焦点を当て、それぞれの特性や利点、適用シーンを詳しく探っていきます。

AMRとの違い

AMRとはAutonomous Mobile Robot(自立走行搬送ロボット)の略称で、自動で人や障害物を回避するよう設計・開発されたロボットです。

AGVとは違い、AMRは高度な自律性を持っています。環境をリアルタイムで認識し、自律的に最適な経路を計算して移動します。

このため、障害物を自動的に回避したり、環境の変化に迅速に適応することが可能です。AMRは、物理的なガイドラインに縛られず、環境の変化にも柔軟に対応することができます。

AMRとAGVの最大の違いは、移動ルートの決め方です。AMRは自律的に最適な移動経路を決められることに対し、AGVの移動経路は事前に敷設された磁気テープやワイヤーなどの物理的なガイドラインによって決まります。

一方で、AGVには初期投資が低く、シンプルなタスクの自動化に適しているというメリットがあります。AMRは高度な技術やセンサーを必要とするため、コストが高くなることも考慮する必要があります。

RGVとの違い

RGVとはRail Guided Vehicle(有軌道誘導車両)の略称で、レール・軌道の上を走るシャトル型のロボットや搬送車を指します。(出典:Wikipedia

RGVの特徴は、固定の経路での移動です。RGVは、設置されたレール上を高速で移動します。これにより、高い再現性と予測可能な動作が実現されます。

そのシンプルな設計は、一定の動作を繰り返す大量生産ラインや、特定のルートを繰り返し移動する物流センターなどでの利用に適しています。

AGVはレールが必要なく、テープや磁気、センサーを活用した自由な経路設定が可能です。そのため、生産ラインのレイアウトが頻繁に変わる場面や、短期間のプロジェクトでの搬送作業など、変動の多い環境での利用に非常に適しています。

活用できる業界・場面

AGVの導入事例と場面

AGV(自動誘導車)は、これらの要求に応えるための先進技術として、特に以下の業界での導入が進んでいます。

  • 物流業界(倉庫)
  • 製造業界(工場・倉庫)
  • 病院

物流業界(倉庫)

物流業界、特に倉庫業務は、近年のオンラインショッピングの普及やEコマースの拡大に伴い、AGVの需要が上がっています

フォークリフト型AGVは、荷物の積み下ろしや移動に最適であり、積載型や平ボディ・重量級型AGVはそれぞれ、小さな荷物から大きな製品までの輸送を効率的に行います。

また、AGVの動きは磁気テープやレーザー、ビジョンガイドなど、さまざまな搬送方式によって制御されます。

AGVを導入することで効率化、生産性の向上、作業者の安全性確保、運用コストの削減が可能です。そのため、倉庫のレイアウトやサイズ、扱う貨物量にあわせて最適なAGVを選定する必要があります。

製造業界(工場・倉庫)

製造業界では、様々なタイプのAGVが用いられています。

フォークリフト型AGVは、部品や製品の取り扱いに適しており、製品や部品の積み下ろしや製造ライン間の移動を効率的に行います

一方、牽引型AGVは、大量の部品や材料を一度に輸送する能力を持ち、製造プロセスのスムーズな進行をサポートします。そして、コンベヤ型AGVは、製造ラインでの部品の供給や完成品の運搬を自動的に行うことができます。

製造業界でAGVを導入すると生産コストの圧縮ができるだけでなく、リードタイムの短縮や製造品質の向上、そして生産ラインの柔軟性の確保が可能です。

病院

病院でもAGVは活躍しています。食事カート型AGVは、患者さんへの食事の提供の効率化や、医療廃棄物や一般廃棄物の適切な処理をサポートします

さらに、医薬品や検体サンプルの運搬を担う医薬品・サンプル運搬型AGVは、病院内での迅速かつ安全な輸送が可能です。

病院でAGVを導入することで、作業の効率化や作業者の安全性確保・感染症のリスクを低減します。

患者の満足度の向上やスタッフの負担軽減が可能であるため、医療サービスの質向上に大きく寄与します。

ここまで、AGVの具体的な活躍場面を解説しました。次の章からは、AGVのを導入するメリットと、頭に入れておくべき注意点を解説します。

導入するリスクを最小限に抑えたい方は、ぜひ次のセクションを読み進めてください。

AGVを導入するメリット・デメリット

AGVの強みと弱み

AGV(無人運搬車)は便利ですが、それぞれの使用状況や目的によって、そのメリットとデメリットがあります。

メリット

AGV(無人運搬車)を導入するメリットには以下の3つが挙げられます。

  • 24時間稼働が可能
  • 安全性が向上する
  • 効率化

24時間稼働が可能

AGVは、一日中、休むことなく自動搬送できることが大きな特徴です。これにより、生産性の飛躍的な向上や、近年深刻化している人手不足問題の緩和が期待できます。

電力供給が続く限り、AGVは連続してタスクを遂行することができます。特に夜間や早朝など、人の活動が少ない時間帯も、AGVは同じ効率で作業を進めることが可能です。

例えば、Eコマースの物流センターではセール期間や年末年始など、注文が急増する時期があります。このような繁忙期において、AGVを有効活用することで、迅速な商品のピッキングや出荷作業を実現できます。

また、夜間にAGVを利用して商品の整理や移動を行うことで、昼間の作業の効率アップにつなげることもできます。

安全性が向上する

AGVは、先端技術を駆使したセンサーやカメラシステムを搭載しており、これにより作業現場の安全性が格段にアップします。

従来、手動での運搬作業においては、人の疲労や判断ミスなどによる事故のリスクが常につきまとっていました。

しかし、AGVの技術的進化により、リアルタイムでの障害物検出や自動的なルート変更など、高度な運搬作業を実現することが可能となりました。これにより、人間のミスによる事故の可能性が大幅に低減します。

例えば、大規模な工場や倉庫を想像してみてください。多数の労働者や機械が狭いスペースで活動している中、AGVは絶え間なくセンサーやカメラを利用して周囲の状況をチェックします。これにより、他の機器や労働者との衝突を予防し、安全な運搬を保証します。

AGVの導入は、作業場の安全性を飛躍的に向上させるだけでなく、事故や故障によるコストやダウンタイムを削減する大きな利点をもたらします。

効率化

AGVは、一貫性と正確性を持って繰り返しの作業を実行することができるのが大きな特徴です。これにより、業務の効率化とヒューマンエラーによる誤差の低減が可能となります。

従来、人による作業では、疲れや一時的な不注意などでのミスが避けられない場面がありました。特に繁忙期や夜間作業などでは、そのリスクはさらに高まります。

しかしながら、AGVはコンピュータ制御により、一定の品質で作業を続けることができます。これにより、業務の品質を均一に保ちながら、作業の効率化を図ることができるのです。

大手Eコマースの物流センターであれば、注文のピーク時に、人手では追いつかない商品のピッキングや出荷作業が発生することがあります。

このような状況下でも、AGVは正確に商品をピックアップし、適切な出荷先へと運搬します。出荷のミスや遅延を大幅に削減することができ、顧客の満足度向上にも寄与します。

AGVを導入することで、業務のスムーズな進行と高い品質を同時に保ちつつ、人手不足やヒューマンエラーの問題を大幅に軽減できるのです。

デメリット

AGV(無人運搬車)を導入することで以下のようなデメリットが考えられるので、注意が必要です。

  • 高い初期投資
  • 専門の技術者が必要
  • 人との連携の難しさ

高い初期投資

AGVは、確かに生産性や効率の向上に寄与する一方で、導入初期に高いな投資が必要です。

初期投資は機械の費用だけでなく、それを取り巻く環境やシステムの整備、従業員のトレーニングなど、多岐にわたるコストが伴います。

このような初期費用は、特に資金繰りの厳しい中小規模の事業者にとっては、大きな経営リスクとなり得ます。

中小規模の企業であれば、大手企業とは異なり、限られた資金での運営が求められる中で、AGVの高額な導入コストは重大な決断となります。

仮に導入後にトラブルや未予測のコストが発生した場合、その打撃は経営全体に影響を及ぼす可能性が高まります。

AGVの導入を考える際には、その初期投資と将来的なリターン、そしてそれに伴うリスクを慎重に評価し、経営の安定と効率化を両立させるための計画が必要です。

専門の技術者が必要

AGVを導入すると、AGVの保守・運用をできる人を育成する必要があり、業務上の負担になる可能性があります。

AGVは、連続的な稼働や高い精度の作業を実現する一方で、その複雑な技術背景から日常のメンテナンスやトラブル時の対応には専門的な知識が必要とされます。

そのサポートを行う技術者が不在の場合、AGVのポテンシャルを十分に活用することが難しくなります。

Eコマースの物流センターのような場所でAGVが導入された場合、注文が急増するピーク時においてAGVのスムーズな稼働を求めます。

しかし、万が一、AGVにトラブルが発生した場合、迅速にそれを解決するための専門技術者が必要になり、外部から人を呼ぶ余裕はありません。

AGVを導入する場合は、機械を導入するだけでなく、AGVを扱える人・運用できる人の育成が必要であることを頭に入れておきましょう。

人との連携の難しさ

AGVを導入することで、倉庫・工場内でのオペレーションを変更する必要があります。これにより、変更後の業務に慣れないうちは従業員同士の衝突が発生する可能性があります。

Eコマースの物流センターなど、高い効率が求められる場面だと、AGVが商品の運搬を担当します。その一方で、従業員が他の作業を担当する場合、双方の動きや作業範囲を正確に理解することが求められます。

AGVの動きやセンサーの反応を理解した上での作業が求められるため、これには継続的なトレーニングや教育が不可欠です。

連携に慣れることがでればAGVのポテンシャルを最大限発揮できるようになるので、自動搬送に対応できる業務フローとAGVの導入ポイントを調整・最適化する必要があります。

ここまで、AGVを導入するメリットとデメリットについて解説しました。次のセクションでは、貴社に最適なAGVを選ぶ上で考慮すべき7つのポイントを解説します。

自社に最適なAGVを導入し、最大限の業務効率化を達成したい方は次のセクションに読み進めてください。

最適なAGVの選び方 | 7つのポイント

AGVの選定基準7選

AGVには、様々な種類や誘導方式があります。選び方を間違えてしまうと貴社の工場や倉庫に合わない機械を選んでしまい、思うように投資金額を回収できない可能性があります。

以下の7つのポイントをおさえて、貴社に最適なAGVを選択しましょう。

  • 運搬する製品の大きさと重さ
  • 使用場所(工場や倉庫など)のレイアウトとサイズ
  • 稼働時間と充電時間
  • ソフトウェアの使いやすさとカスタマイズ性
  • 安全性
  • アフターサービス・メンテナンスサポート
  • 導入費用

運搬する製品の大きさと重さ

AGV(無人運搬車)の導入を考える際、その性能や機能だけでなく、運搬する製品の大きさや重さも重要なポイントとなります。特定のAGVがある製品を適切に運ぶことができるかどうかは、そのAGVの種類や設計に依存します。

貴社で運ぼうとしている製品・貨物のサイズにあわせて、まずはAGVの種類を選定しましょう。

対象物のサイズ 対応可能な重さ 必要な通路の幅
積載型AGV 600mm×600mm×600mm
から
1,500mm×1,200mm×1,200mm
程度
100kgから1,500kg AGVの幅
+ 300mm〜500mm程度
低床型AGV 500mm×500mm×500mm
から
1,200mm×1,000mm×1,000mm
程度
50kgから700kg AGVの幅
+ 200mm〜400mm程度
牽引型AGV 2,000mm×1,500mm×1,500mm
から
5,000mm×2,500mm×2,500mm
程度
500kgから2,000kg AGVの幅
+ 300mm〜500mm程度

工場のレイアウトとサイズ

AGVを選定する場合は、工場自体の大きさとレイアウトにあわせて選ぶ必要があります。

例えば小さな工場に大きなAGVを導入しても必要な小回りが効かず、レイアウト次第では、むしろ業務負担が上がってしまいます。

目安として以下のものを参考にAGVを選定することがおすすめです。

工場面積をもとにしたAGVの種類選定

  • 工場面積が10,000㎡以上の場合:適切なAGVの種類は平ボディ・重量級型や特殊型が最適
  • 工場面積が2,000㎡〜10,000㎡の場合:積載型や牽引型が最適
  • 工場面積が2,000㎡以下の場合:低床型が最適

工場面積をもとにしたAGVの種類選定

  • 線形レイアウト: 主に積載型や低床型が適しており、経路誘導式が最適
  • U型レイアウト: 牽引型や低床型が適しており、追従式が推奨
  • セル型レイアウト: 平ボディ・重量級型が最適で、自律移動式が良い
  • モジュール型レイアウト: 特殊型(コンベア型・フォークリフト型など)が適しており、経路誘導式が推奨

稼働時間と充電時間

AGVの選定は、単に搬送能力や速度だけでなく、稼働時間や充電時間といったバッテリー関連の要因も深く考慮する必要があります。その理由は大きく分けて以下の3つに集約されます。

  • 連続運用の可能性:ピーク時を想定したAGVのバッテリー性能で充電の心配不要
  • 充電の障害とダウンタイム:短い充電時間で生産性を維持
  • 電力コストの最適化:効率的かつコスト効果的な運用

効率的なAGV運用をする上で、24時間稼働が必要か、シフト制での運用かを明確にする必要があります。

例えば、積載型や平ボディ・重量級型のAGVは、持続時間の長さという特長を持ちます。そのため、長時間の運用を考慮する場面での選択肢として考慮することが望ましいです。

ソフトウェアの使いやすさとカスタマイズ性

使いやすいソフトが搭載されていたり、ソフトのカスタマイズが可能なAGVは、どの業界のユーザーにも使いやすく、運用効率が高いことが多いです。

ソフトウェアが使いやすいと、AGV自体の操作が直感的で研修時間を最小限に抑えられる上、操作エラーが少なくすみます。

その結果、製造業界ではソフトウェアの不具合や操作ミスによる生産ラインの停止や品質管理のミスを低減可能です。

例えば、製造業界での新製品の生産ライン導入の遅延、物流業界での新しい配送ルートの導入困難、病院での新しい治療法の導入遅延など、柔軟性が低いと発生する弊害が回避可能になります。

ソフトウェアの導入はコストが高くなるで、用途と予算の両方をクリアした上で、もっとも貴社が求める柔軟性を実現するAGVを選定する必要があります。

安全性

AGVの選定における安全性は、製造から物流、医療までの多岐にわたる分野での事故やトラブルの予防に大きく関わります。

安全性が高いAGVは他の機械や人との共存を円滑に行い、様々な状況下での事故を未然に防げます。

AGVに付随する安全機能には、以下のようなものが含まれます。
  • 感度の高いセンサー
  • 緊急停止ボタン
  • 速度制御機能
  • 警告音やライト
一方、最低限の安全性を持ったAGVは、周囲の環境を検知するセンサーや緊急時の対応機能、警告機能が不足することがあります

このようなAGVは、製造業界では作業者との衝突や生産ラインの停止、物流業界では荷物の破損や配送遅延、病院では患者や医療スタッフとの衝突や医療機器の損傷などのリスクが高まります。

このように、AGVの安全性は、その高い機能性と安全性を併せ持つことから、さまざまな分野での利用の拡大を支える要素となります。効率的に、かつ安全に作業を実施するためには、AGVの適切な選定が不可欠です。

アフターサービス・メンテナンスサポート

AGVを選ぶ際、アフターサービス・メンテナンスサポートは長期的な投資として必要な視点です。

AGVは高価な機器なので、トラブルや故障のリスクを最小限に抑えるために、定期的なメンテナンスや迅速なトラブル対応が不可欠です。

手厚いアフターサービス・メンテナンスサポートを提供するAGVは、定期的な点検・保守や24時間のサポート、迅速な部品供給、ソフトウェアアップデート、そしてオンサイトトレーニングなど、多岐にわたるタスクを効率的に、かつ安全に実施します。

一方、サポートが最低限なAGVはコストメリットはあるものの、限定的なサポート時間や部品供給の遅延、ソフトウェアアップデートの不足などのリスクを伴います

これは製造業界での生産停止、物流業界での配送遅延、病院での医療機器供給遅延など、業務の効率や品質に大きな影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

このように、AGVのアフターサービス・メンテナンスサポートは、その高い機能性と安全性を併せ持つことから、業務の効率化や品質向上を実現するための重要な要素となります。適切なサポートを受けることで、長期的な安定した稼働を期待することができるのです。

導入費用

AGVそ導入する際は、目先の導入コストだけでなく長期的なROI(投資対効果)を考慮する必要があります。

予算を超える機械の導入だけでなく、コストカットの結果、目的を達成できないAGVの導入は無駄な出費に終わってしまうためです。

例えば、製造業界の工場で自動運搬ができれば問題ないはずなのに、不要な機能である昇降装置をつけることで余計な出費を作ってしまうことになります。

また、物流業界において、安いAGVを導入した結果、低性能であるためにピーク時の荷物量に対応できず、却って労働コストが増加することもあります。

重要なのは、その高い機能性とコストパフォーマンスのバランスを考慮してAGVをを導入することです

ここまで、最適なAGVの選び方をご紹介しました。次の章からは、具体的なおすすめのメーカーとその比較をご紹介します。

貴社の工場や倉庫に最適なAGVを選定したい方は、次のセクションに読み進めてください。


AGVを製造するおすすめメーカー5社比較【2024年版】

AGVを製造するおすすめの企業比較

AGVを製造するメーカーとしてメジャーな企業は以下の5社です。それぞれを比較し、貴社に最適な機械を製造するメーカーを探しましょう。

  • ダイフク
  • エレメックス
  • スギヤス
  • 明電舎
  • リコー

ダイフク エレメックス スギヤス 明電舎 リコー
積載型
低床型
牽引型
平ボディ・重量級型
特殊型
フォークリフト型や
コンベア型など
経路誘導式
自律移動式
追従式

ダイフク

ダイフクは、1937年の創業以来、大阪市を拠点としながら、世界中にその技術とサービスを展開しています。 特にAGV、自動倉庫、コンベヤ、パレタイザーなど、一連の製品群は、物流の効率化と省人化に貢献しています。

1972年にAGVの開発に踏み出し、1975年には世界初のAGVを市場に送り出したダイフク。

その技術力は、多様な環境に対応できる制御技術、高精度な搬送技術、そしてメンテナンス性に優れた設計という三つの柱に支えられています。これにより、ダイフクのAGVは業界内でトップシェアを誇り、多くの企業や組織にその効果を実感してもらっています。

特筆すべきは、ダイフクのAGV。これは、横行・斜行を可能とする全方向移動型の無人搬送車で、さまざまな環境やニーズに応じた運用が可能です。

その活躍の場は、生産ラインから物流、さらには病院に至るまで多岐にわたります。

ダイフクの技術や製品に関するさらなる情報、または導入をご検討の際の相談など、具体的な疑問や要望があれば、お気軽に下のボタンよりお問い合わせください。

エレメックス

エレメックスは、1980年の創業から電気設備工事のプロとして、その名を確立してきました。群馬県太田市を拠点に、工場や倉庫の自動化システムに関する設計・製造・施工を専門としています。

そして、1997年にAGVの世界に足を踏み入れてから、中小規模の工場や倉庫に合わせたコンパクトで省スペースなAGVの開発に尽力しています。

その開発の歴史を振り返ると、1993年からAGVの開発に注力。当時、大型の施設での利用が主流でしたが、エレメックスは中小規模の施設でも導入できるよう、コンパクトなAGVの開発を推進しました。

そして、1997年にレーザー誘導方式の小型台車型AGVを発売し、その後も磁気テープやワイヤマーカー誘導方式など、多様なタイプのAGVを提供してきました。

エレメックスのAGVの魅力は扱っているAGVの種類も豊富さで、積載型から高所作業台車、さらには特殊搬送台車まで、多岐にわたるニーズに応えられるラインナップを誇ります。

スギヤス

スギヤスは、1937年の創業から物流機器の領域で一貫してその名を確立してきました。

愛知県高浜市を中心に、国内外にその高度な技術とサービスを提供しています。特に、AGV、自動倉庫、コンベヤ、パレタイザーといった製品群は、物流の更なる効率化と省人化に寄与しています。

1985年、スギヤスがAGVの開発の舞台に足を踏み入れ、6年後の1991年には初の製品を市場に出しました。それ以降も、多岐に渡るAGVのタイプを開発・提供し続けている企業です。

特に、スギヤスのフォークリフト型AGVは物流現場での貨物移動や棚上げ・棚下げや積み込み・積み下ろしなど多岐にわたるニーズに応えることができます。

明電舎

1924年の創業以降、電気機器の分野でその名を轟かせているのが明電舎です。東京都品川区を拠点に、世界各地にその先進的な技術とサービスを拡充しています。

特にAGVを中心とした製品ラインナップは、変圧器、配電盤、制御機器といった物流の核となる製品を提供し、業界の効率化と省人化への貢献が大きいです。

1985年、AGVの開発の新たな一歩を踏み出した明電舎は、5年後の1990年に初の製品を市場に投入。その後も、多岐にわたるAGVのタイプを継続的に開発・提供しています。

明電舎のAGVの製品ラインナップを挙げると、台車型、フォークリフト型、特殊用途型などがあり、これらは各々の環境や用途に合わせてカスタマイズが可能です。

リコー

1936年の創業から、情報機器や産業機器の分野でその名を轟かせているのがリコーです。東京都大田区を拠点としながら、世界中にその技術とサービスのネットワークを築いてきました。

特にAGVや変圧器、配電盤、制御機器といった電気機器の製造・販売では、物流の効率化と省人化の先駆者としての役割を果たしています。

1995年、新たな技術領域としてAGVの開発を開始したリコーは、わずか3年後の1998年に初の製品を市場に投入しました。以降、多様なニーズに応えるためのAGVを次々と開発・提供しています。

リコーのAGV製品のラインナップとしては、台車型やフォークリフト型、そして特殊用途向けのAGVなどが挙げられます。また、経路誘導式のシンプルな走行方式も、導入の敷居を低くする要因となっています。