ジャイロセンサー
ドローンの安定飛行からスマホの画面回転まで、多彩なシーンで活躍するジャイロセンサーですが、「種類が多くてどれを選べばいいのか分からない」「メリットやデメリットを知りたい」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ジャイロセンサーの基本情報や種類、導入時に押さえたい選び方のポイント、さらに各メーカーの特徴まで徹底解説します。
精密な航空機用から日常機器向けのコンパクトタイプまで多岐にわたるラインナップを紹介しているので、あなたの用途に合った最適なジャイロセンサーを見つけてください。
とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。
目次
ジャイロセンサーの基本情報を解説
最初にジャイロセンサーの基本情報として、ジャイロセンサーとは何かと、仕組み・原理や構造を確認します。
そもそもジャイロセンサーとは?
ジャイロセンサーとは、慣性センサーの一種で、物体の角速度を測定する装置です。角速度とは回転の速さを示す指標であり、この値を検知することで、デバイスがどの方向にどの程度回転しているのかを正確に把握できます。
ジャイロセンサーは高精度であるため、ゲーム機の操作やスマートフォンの画面回転、ビデオカメラの手ブレ補正など、あらゆるシーンに応用されています。
現在では主にMEMS技術を用いた小型・低コストのジャイロセンサーが普及しており、多様な電子機器に組み込まれているのが特徴です。
また、ジャイロセンサーはコリオリ力という見かけの力を利用して動作する点も特徴で、この力を検出することで、わずかな回転でも捕捉可能となり、ミリ単位のブレまで高い精度で補正することができます。
ジャイロセンサーの仕組み・原理や構造を確認
ジャイロセンサーの仕組みを大まかに説明すると、まずセンサー内部に存在する振動子が一定方向に振動を続けています。
そこに回転が加わると、コリオリ力が発生して振動子がわずかに別方向へ変位し、この変位量を検出回路が読み取ることで角速度を計測します。
またジャイロセンサーの構造としては、振動子や検出電極などが一体化された小型のモジュールになっていることが多いです。
特に振動式ジャイロセンサーは圧電方式や静電容量方式が代表的で、圧電方式では振動子の微小な動きによって発生する電圧を、静電容量方式では振動子と電極の間で変化する静電容量を読み取り、ジャイロセンサーの角速度データとして出力します。
こうした仕組みによって、ジャイロセンサーはシンプルな構造でありながら高い精度と耐久性を両立しているのです。
ジャイロセンサーを7種類に分けてそれぞれの強みを紹介
ジャイロセンサーには多彩な方式が存在し、それぞれに異なる特徴と強みがあります。ここからは代表的な7種類のジャイロセンサーについて、活用されるシーンや優位性を交えながら解説します。
振動式ジャイロセンサー
振動式ジャイロセンサーは内部の振動子が一定方向に振動している際、回転が加わることで生じるコリオリ力を検出する方式です。
小型化と低コスト化が進みやすいため、スマートフォンやビデオカメラなど幅広いデバイスに取り入れられています。また、構造がシンプルでありながら高精度を実現し、機械的な可動部が少ないことで耐久性が高い点も魅力です。
機械回転式ジャイロセンサー
機械回転式ジャイロセンサーは内部に回転体を持ち、その慣性力をもとに角速度を検出します。
電磁ノイズに強く、長期運用にも耐えうる堅牢性を備えているため、航空機や船舶など高精度かつ安定性が求められる分野で活用されています。
流体式ジャイロセンサー
流体式ジャイロセンサーはセンサ内に封入された流体の動きを検出する方式であり、回転による流体の偏りを利用して角速度を測定します。
温度変化の影響を受けにくく、可動部が少ないため長期間の安定動作が期待できる点が強みで、自動車のカーナビゲーションシステムや航空機の姿勢制御などで活用されています。
ガスレートジャイロセンサー
ガスレートジャイロセンサーはセンサー内部のガス流が回転によって偏向する現象を捉え、角速度を測定します。
温度安定性に優れ、機械的な可動部が少ないため長期的な信頼性が高い点が特徴です。特に、航空機の姿勢制御や産業用ロボットなど、高い精度が欠かせない領域で利用されています。
光学式ジャイロセンサー
光学式ジャイロセンサーは光の干渉を利用し、サニャック効果によって回転を検出します。
内部に円形の光路を作り、光が逆方向に進む際の到達時間差を測定することで角速度を求める仕組みです。高い精度や長寿命、耐環境性に優れ、航空機の姿勢制御や潜水艦のナビゲーションなど、過酷な条件下でも安定した性能を発揮します。
リングレーザージャイロセンサー
リングレーザージャイロセンサーは正方形や三角形などの環状光路内を互いに逆方向へ進むレーザー光の干渉を測定し、極めて高い精度で角速度を検出します。
地球の自転レベルの微小な回転をも測定できるほどの超高精度と長期安定性を持ち、航空宇宙産業や海洋技術、特殊車両の制御システムなどで重要な役割を担っています。
光ファイバージャイロセンサー
光ファイバージャイロセンサーはコイル状に巻いた光ファイバーを伝播するレーザー光を利用し、サニャック効果で生じる干渉を検出する方式です。
小型化と軽量化を実現しながら高い精度を誇り、振動や温度変化の影響を受けにくい点も強みです。例えば、航空宇宙産業や海洋技術、さらに石油探索のための掘削機器制御など、精密な位置決めや方向制御が必要な場面で多用されています。
他のセンサーと比較した際のメリット・デメリットを紹介
ジャイロセンサーは回転や向きの変化を高精度に測定できる点が特徴ですが、同時に外部からの影響を受ける弱点も存在します。ここではジャイロセンサーのメリットとデメリットを紹介します。
ジャイロセンサーのメリット
ジャイロセンサーのメリットとしてまず挙げられるのは、高い精度で角速度を測定できることです。航空機や宇宙探査機といった精密な制御が求められる分野では欠かせない存在となっています。
次に、小型化と低コストを両立できる点も利点です。特にMEMS技術を取り入れたジャイロセンサーは、スマートフォンやビデオカメラの手ブレ補正など、多岐にわたるデバイスへの搭載が可能となりました。
そして、機械的な可動部が少ない構造のものが多いため耐久性が高く、ドローンや産業用ロボットなど、長期間の稼働を前提とする機器においても高い信頼性を維持できます。
ジャイロセンサーのデメリット
一方で、外部衝撃や振動の影響を受けやすいことはジャイロセンサーのデメリットといえます。測定結果が乱れる恐れがあるため、ダンピング機構やノイズフィルタを併用し、設置場所を慎重に選定することで対策が可能です。
また、温度変化によって精度が低下しやすい点も見過ごせません。これは、温度補償回路や一定の温度環境を保つ仕組みを整えることで、ある程度はリスクを抑えられます。
さらに、長期間の使用に伴ってドリフトが発生し、出力値が徐々にずれる可能性も指摘されています。そのため、定期的なキャリブレーションや他のセンサーとの併用を行うことで、こうしたずれを補正していきましょう。
ジャイロセンサーはどうやって選定すればよい?選び方を解説
ジャイロセンサーを導入する際には、用途や環境条件に合わせて最適な製品を選ぶことが重要です。ここでは、それぞれの選び方がジャイロセンサーの性能にどのような影響を与え、どのような視点で選ぶべきかを解説します。
温度安定性を見極める
温度変化が大きい環境で使用する場合、温度安定性の高いジャイロセンサーを選ぶことで測定精度が安定し、メンテナンスや補正の負担を軽減できます。
反対に、コストや小型化を重視する用途で常に同じ温度条件下で運用するのであれば、温度安定性がそれほど高くなくても問題にならないこともあるでしょう
ノイズレベルを考慮する
ジャイロセンサーのノイズレベルが低いほど、微小な動きや角速度の変化をより正確に把握できます。ドリフトや誤差の蓄積を抑えられるため、航空機や自動運転車のように高精度を要するシステムでは低ノイズが理想的です。
一方、ゲームコントローラーやスマートフォンの画面回転などでは、若干のノイズがあっても実用上問題になりにくいため、コストや消費電力を抑えた高ノイズ寄りのセンサーを選択することも視野に入れるべきでしょう。
バイアス安定性を重視する
バイアス安定性が高いジャイロセンサーは、長時間使用してもドリフトが起きにくく、頻繁なキャリブレーションの手間がかかりません。
宇宙船や航空機など長期間連続稼働が要求される用途では、信頼性の面からバイアス安定性が特に重要となります。
一方、スマートフォンやフィットネストラッカーなど短時間の姿勢検出を目的とする場合は、バイアス安定性がやや低くても問題なくコストを抑えられるケースがあります。
角速度に対する感度をチェックする
角速度に対する感度が高いセンサーは微小な動きでも的確に捉えられるため、VRヘッドセットや高性能ドローンの姿勢制御など繊細な動作が求められる分野で活躍します。
ただし、感度が高いほど周囲の振動やノイズに影響を受けやすくなるため、駆動環境や温度補償などの対策が必須です。
逆に、自動車の横滑り防止機能やスマートフォンの画面回転など、大きな動きの検出に限られるならば、感度の高さよりも安定した測定やコスト面を優先する方が適切となる場合もあります。
耐衝撃性を検討する
過酷な環境下や衝撃が多発する現場で使用する場合、耐衝撃性に優れたジャイロセンサーでなければ故障リスクが高まります。
産業用ロボットやスポーツ機器のように物理的な衝撃が頻繁に加わる用途では、耐久性の高さが測定精度の安定と長寿命につながる大きな要因です。
反対に、比較的落下や衝撃の心配が少ないオフィス機器や家電製品のような場面では、耐衝撃性が低くても十分であり、その分コストや重量を抑えられるメリットがあります。
ジャイロセンサーのおすすめメーカーを紹介
本章では、ジャイロセンサーの代表的なメーカーを取り上げ、それぞれの製品ラインナップや導入事例を通して特徴を解説します。
セイコーエプソン
会社名 | セイコーエプソン株式会社 |
扱っているジャイロセンサーの種類 | 振動式ジャイロセンサー、車載用ジャイロセンサー、コンボセンサー |
納入事例 | 自動車業界、カメラやスマートフォン、産業機器など |
会社概要 | 水晶デバイスに強みを持ち、温度特性や耐振動性に優れた高感度のジャイロを提供 |
セイコーエプソンは水晶デバイス技術を活かし、高感度かつ安定した性能を発揮するジャイロセンサーを生産しています。
自動車の横滑り防止装置やスマートフォンの手ブレ補正など、多様な分野に製品を展開しており、特に独自構造の振動式ジャイロセンサーは低ノイズかつ広い温度範囲でも安定した動作を実現します。
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多摩川精機
会社名 | 多摩川精機株式会社 |
扱っているジャイロセンサーの種類 | 振動式ジャイロセンサー、光ファイバージャイロ、リングレーザージャイロ、レートジャイロ |
納入事例 | 航空・宇宙、自動車、産業機器、民生機器など |
会社概要 | 長野県飯田市に本社を置き、高精度センサーを軸に多岐にわたる事業を展開 |
多摩川精機は1942年に設立されて以来、精密機器メーカーとしてジャイロセンサー技術を磨いてきました。
高精度な干渉型光ファイバジャイロや航空機向けのリングレーザージャイロなどを提供し、航空・宇宙や自動車の姿勢制御、産業用ロボットなど幅広い用途で採用されています。
また、MEMSジャイロの分野でも高分解能と低ノイズを実現し、民生機器から重工業まで柔軟に対応しています。
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村田製作所
会社名 | 株式会社村田製作所 |
扱っているジャイロセンサーの種類 | MEMS技術を用いた振動式ジャイロセンサー(SCHA600シリーズ、SCC3000シリーズなど) |
納入事例 | 自動車、建設機械、ロボット、医療機器、航空機など |
会社概要 | 電子部品のリーディングカンパニーとして、幅広いセンサ技術を展開 |
村田製作所はMEMS技術を活用した小型・高性能ジャイロセンサーを得意とし、自動運転向けシステムや医療用ロボットなど高精度を要する場面で数多く採用されています。
加速度センサとのコンボ製品も展開しており、取り付けスペースに制約があるデバイスでも複数の計測機能を一体化できます。製品ラインナップは広く、自動車から産業機器まで信頼性の高いソリューションを提供し続けていることが強みです。
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日本航空電子工業
会社名 | 日本航空電子工業株式会社 |
扱っているジャイロセンサーの種類 | 光ファイバージャイロセンサー、低コストMEMS-IMU |
納入事例 | 航空宇宙、自動車、産業機器など |
会社概要 | 航空宇宙分野に強みを持ち、高精度な電子部品の開発に注力 |
日本航空電子工業はコネクタ技術や電子機器で培ったノウハウを活かし、高精度の光ファイバージャイロセンサーや低コストのMEMS-IMUを提供しています。
航空宇宙向けの製品では厳しい環境下でも精度を維持できるよう設計されており、自動車や産業機器でもその高い技術力が評価されています。
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共和電業
会社名 | 共和電業株式会社 |
扱っているジャイロセンサーの種類 | 振動式ジャイロセンサー(3軸、複数感度ラインナップ) |
納入事例 | 航空宇宙、自動車、ロボット工学など |
会社概要 | ストレインゲージや圧力センサなど計測機器全般を手掛ける日本企業 |
共和電業は計測機器分野で長い歴史を持ち、ストレインゲージ技術などで培った精密計測のノウハウを活かしています。
多様な感度レンジに対応するジャイロセンサーを開発し、航空機や自動車での挙動解析、ロボットの姿勢制御などに貢献しています。特に耐衝撃性に優れた製品が多く、過酷な環境下でも安定して計測を行うことができる点が特徴です。
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