ピースピッキングロボット

ピースピッキングロボット

ピースピッキングロボットは、物流現場におけるピッキング作業の自動化を実現する技術として注目を集めています。「人手不足で出荷作業が追いつかない」「ミスなく確実に商品を仕分けたい」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ピースピッキングロボットの基本的な定義から、ハンドの種類ごとの特徴、人手作業との比較によるメリット・デメリット、導入時の選び方のポイントまで、専門的かつ実践的に解説します。

さらに、編集部が厳選したおすすめのピースピッキングロボットメーカーも紹介していますので、導入を検討する上での具体的な判断材料としてご活用いただけます。

当記事を通じて、自社に最適な選定のヒントを得ていただければ幸いです。

また、JET-Globalでは、ピースピッキングロボット以外にもピックアンドプレースを解説しています。ピックアンドプレース全体について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

目次

ピースピッキングロボットとは? 定義や導入事例を紹介

ピースピッキングロボットとは? 定義や導入事例を紹介

ピースピッキングロボットとは、物流倉庫などにおいて、人手に代わって商品や部品など個々のアイテム(ピース)を自動でピッキングし、指定の場所に移動させるロボットです。

人間によるピッキング作業と搬送ロボット(AGV・AMR・GTP)を使ったピッキング工程の自動化とは異なり、ピースピッキングロボットは「つかむ」動作そのものを自動化します。

ピースピッキングロボットは、AIやロボットビジョン(画像認識)と連携し、形状・材質・置かれた向きがバラバラな商品の中から、指定された1点を正確につかみ取ることが可能です。

AIの学習によって未知の商品への対応力も高まり、近年その精度とスピードが向上しています。

実際の導入事例としては、EC物流倉庫での商品仕分け、自動倉庫内の出荷準備、部品工場における組立ラインへの供給作業などが挙げられます

次に、ピースピッキングロボットの性能を左右する重要な構成要素「ハンドの種類」を見ていきましょう。

ピースピッキングロボットのハンドの種類を紹介

ピースピッキングロボットのハンドの種類を紹介

ピースピッキングロボットの中核を担うのが「ハンド(エンドエフェクタ)」です。対象物の大きさや形状、材質によって最適なハンドは異なります。ここでは主要な4種類のハンドについて、それぞれの特徴と他の方式との比較を解説します。

把持型

把持型は、指のような構造を持ち、機械的につかむ方式のハンドです。形状が一定でしっかり握れる物体に適しています。モーターで開閉する2指・3指構造が一般的で、グリップ力と制御のしやすさが特徴です。

メリット

  • 把持力の調整がしやすい
  • 繊細な操作が求められる部品にも対応できる
  • 繰り返し精度が高く、安定したピッキングが可能

デメリット

  • 形状が不定形な物体には対応しづらい
  • 調整や治具が必要な場合があり、汎用性に欠ける
  • 把持時に対象物を破損するリスクがある

吸着型

吸着型は、真空や圧縮空気を利用して対象物に吸着して持ち上げる方式のハンドです。表面が平滑で軽量な物体に適しており、紙箱やビニール包装品のピースピッキングに広く利用されています。

メリット

  • 構造がシンプルで小型軽量
  • 高速なピッキングが可能
  • 表面を傷つけずに取り扱える

デメリット

  • 凹凸のある物体には吸着できない
  • 重量物のピッキングには不向き
  • 吸着力の低下による落下リスクがある

ラバーアクチュエーター型

ラバーアクチュエーター型は、柔らかいゴム素材を空気圧で変形させて対象物を包み込むようにつかむハンドです。不定形や壊れやすい物品に特に有効です。

メリット

  • 幅広い形状や素材に柔軟に対応できる
  • 壊れやすい商品でも安全につかめる
  • 物体ごとの専用設計が不要なケースが多い

デメリット

  • 構造が複雑でコストが高い
  • 把持精度がやや劣る場合がある
  • 耐久性に課題がある場合がある

特化型

特化型は、特定の形状・用途のために設計された専用ハンドです。靴・衣料品・電子部品など特異な製品のピースピッキングに使われます。

メリット

  • 特定の製品に対して高精度・高効率なピッキングが可能
  • 工程全体の自動化設計に組み込みやすい
  • 対象物ごとに最適化された設計

デメリット

  • 用途が限定されて汎用性がない
  • 製品変更時に再設計が必要になる
  • 開発・導入コストが高い

以上がピースピッキングロボットの主要なハンドの種類です。次は、これらの人手作業と比較した際のピースピッキングロボットのメリット・デメリットについて詳しく解説します。

人手作業と比較した際のピースピッキングロボットのメリット・デメリットを解説

人手作業と比較した際のピースピッキングロボットのメリット・デメリットを解説

ピースピッキングロボットは、人間の代わりにピッキング作業を担うことを目的として導入されます。ここでは、人手作業と比較した場合に得られる導入効果と、その一方で発生しうる課題について、両面から整理します。

導入によるメリット

ピースピッキングロボットの導入には以下のような具体的なメリットがあります。

  • 作業の自動化による人手不足の解消
  • 24時間稼働による生産性の向上
  • ミスや取り違えの削減

慢性的な人手不足に悩む物流現場において、ピッキング作業をピースピッキングロボットに置き換えることで、労働力確保の負担を軽減できます。また、ロボットは昼夜を問わず安定して稼働可能なため、作業効率を高めることもできるでしょう。

さらに、AIとビジョンセンサを活用することで、人為的な誤ピッキングや取り違えが減少し、出荷品質の安定も期待できます

導入によるデメリット

一方で、ピースピッキングロボット導入にあたっては以下のような注意点やデメリットも存在します。

  • 初期導入コストが高い
  • 現場への適応に調整が必要
  • メンテナンスやトラブル対応の体制が不可欠

まず、ピースピッキングロボット導入においては、本体に加えて、ビジョンシステムや制御装置など周辺設備の投資も必要となるため、初期費用が大きくなります。

さらに、倉庫内のレイアウトや取り扱う製品の種類によっては、ロボットがうまく機能しない場合があり、導入前の綿密な検証が必要でしょう。

加えて、導入後も定期的な点検やトラブル時の迅速な対応体制が必要であり、人的・技術的リソースの確保が求められます。

このように、ピースピッキングロボットは多くの利点を持ちながらも、導入の成否を左右する要素が複数存在します。次は、それらを踏まえて、導入前に確認すべき選び方のポイントを見ていきましょう。

導入前に確認したいピースピッキングロボットの選び方

導入前に確認したいピースピッキングロボットの選び方

ピースピッキングロボットはさまざまな現場で活用されていますが、その性能を最大限に活かすには自社の運用環境に合った機種を選定することが不可欠です。ここでは、選定時に注目すべき3つのポイントを詳しく解説します。

製品の形や重さに合ったハンドが使えるか

ピースピッキングロボットの選定ポイントとして、製品の形や重さに合ったハンドが使えるかを確認することが挙げられます。

もし不適切なハンドを使用した場合、商品がうまく掴めなかったり、壊してしまったりといった問題が発生し、作業の効率や品質に悪影響を及ぼします。

特に袋詰めされた食品や、柔らかいパッケージの商品が多い現場では、グリッパーの柔軟性や形状への追従性が重要な判断材料になるでしょう。

最適なハンドが使えるピースピッキングロボットを選定できれば、多様な商品を正確に掴むことができ、ミスやトラブルを減らすことが可能になります。

商品を見分ける画像認識性能

ピースピッキングロボットの導入においては、商品を見分けるカメラやAIといった画像認識の性能をチェックすることも大切です。

この選び方は、商品点数の多さや入れ替わりの頻度、照明環境などが認識精度に影響を与えるため、それらの現場要因を踏まえた判断が求められます。

認識性能が不十分な場合、正しく商品を特定できずに誤認識が発生したり、対象物が認識できず作業が停止したりしかねません。特に新商品が頻繁に追加されるアパレル倉庫や日用品を扱う拠点では、AIの適応力と認識精度がボトルネックとなるケースが多く見受けられます。

高性能な認識システムのピースピッキングロボットを導入することで、商品変更や入れ替えにも柔軟に対応でき、スムーズな運用が可能になります。

ピースピッキングロボットの処理スピード

また、ピースピッキングロボットの選定においては、1時間に何個ピッキングできるか(処理スピード)を確認することも見逃せないポイントです。

必要なスピードは、1時間あたりの注文数やシフト時間、現場の業務量のピークタイムなど、運用現場の実情によって左右されます。

もし処理能力が不足していた場合、注文の遅延や出荷トラブルが発生し、サービス品質の低下やクレームにつながる恐れがあります。特にEC倉庫のようにセール時や繁忙期に一時的な高負荷がかかる現場では、処理能力に余裕があるピースピッキングロボットを選ぶことが不可欠です。

処理スピードに十分な余裕があれば、急な注文の増加にも対応でき、人員を増やすことなく安定した出荷体制を維持しやすいでしょう。

以上のように、選定に際しては上記の3点を見極めることが重要です。次は、導入を検討している方に向けて、信頼できるメーカー情報をご紹介します。

【編集部厳選】おすすめのピースピッキングロボットメーカーを紹介

【編集部厳選】おすすめのピースピッキングロボットメーカーを紹介

ピースピッキングロボットの導入にあたり、信頼できるメーカーを選ぶことは成功の鍵を握ります。ここでは、編集部が厳選したおすすめのメーカーを紹介し、それぞれの強みや導入事例について詳しく解説します。

※JET-Globalの問い合わせフォームに遷移します。
※一部メーカーとは提携がない場合がありますが、ユーザー様に最適なご案内ができるよう努めています。

ムジン / Mujin

メーカー名 ムジン / Mujin
設立年 2011年
本拠地 東京都江東区
概要 知能ロボットと制御ソフトのメーカー

ムジンは2011年設立の東京都江東区に本社を構える、知能ロボットと制御ソフトのメーカーです。多品種ピッキングを短期間で導入可能とする点が強みです。

同社が開発するPickWorkerは、複雑な設計を必要とせず、現場に合わせた柔軟なロボット展開を実現します。

特に、深いコンテナ内やSKUが混載された状況でも高い成功率を維持しつつ連続ピッキングを行える軌道生成技術が魅力です。

FANCL関西物流センターASKULバリューセンター関西など、業界大手の物流拠点への導入実績があります。

ファナック / FANUC

メーカー名 ファナック / FANUC
設立年 1972年
本拠地 山梨県南都留郡
概要 総合FA・産業用ロボット大手

ファナックは1972年設立、山梨県に本社を構える産業用ロボットのリーディングカンパニーです。豊富なロボットラインナップと、iRVisionやiRPickToolを活用したサービスの提供力に定評があります。

ピースピッキング分野ではCRX-10iAと3DVビジョンせセンサを組み合わせたピッキングセルを展開しており、安全性と操作性を両立した協働ロボットシステムです。

こちらは、3Dビジョンを搭載し、タブレットだけで簡単に多品種ピッキングができる点が現場導入のしやすさにつながっています。

イギリスのごみ選別施設アメリカの食品製造ラインなど、海外の多様な現場にも幅広く採用されています。

安川電機 / Yaskawa Electric

メーカー名 安川電機 / Yaskawa Electric
設立年 1915年
本拠地 福岡県北九州市
概要 Motomanロボットとモーション制御の老舗

安川電機は1915年設立の北九州市に本社を構える老舗のロボットメーカーです。AIビジョン「Alliom」をはじめ、独自技術を搭載した柔軟なピッキングセルを短期間で構築できる点が強みでしょう。

提供するModular Piece-Picking Solution(Motoman × RightPick)は、現場のレイアウトに合わせて自在に構成可能です。

モジュール化されたセル構造とAIハンドの組み合わせで、ばらつきのあるSKUにも対応できる柔軟性と拡張性を備えています。

安川ロボット村物流・EC向けには海外パートナー経由で導入が進んでいます。

デンソーウェーブ / DENSO WAVE

メーカー名 デンソーウェーブ / DENSO WAVE
設立年 2001年
本拠地 愛知県知多郡
概要 小型産業ロボットとQR技術の専門メーカー

デンソーウェーブは2001年に設立され、愛知県を拠点に小型ロボットや認識技術を提供している企業です。協働ロボット「COBOTTA PRO」や、視覚・制御統合型のスマートピッキングソリューションを展開しています。

主力製品のCOBOTTA PRO Automatic Picking System(ROBOTTANA)は、限られたスペースでも高精度に作業可能です。

3Dビジョン・グリッパ・制御を一体化したCRC9制御により、透明物や小物のピッキングを省スペースで実現できる点が評価されています。

AGV連携による部品供給デモiREX 2023での自動補充セル食品盛付けラインなど、実用化の幅が広がっています。

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