ロボットコントローラ
近年、産業用からサービスロボットまで急速に普及が進むなか、ロボットの正確で効率的な動作を支える要となるのが「ロボットコントローラ」です。
とはいえ、多彩な種類やメーカーが存在するため、何を基準に選べばよいのか悩んでいる方も多いでしょう。
導入コストや安全性、互換性など、考慮すべきポイントが多いだけに、正しい知識を持たないまま選択してしまうと、想定外のトラブルや余計な費用が発生する可能性があります。
本記事では、ロボットコントローラの基本から選定のポイント、そして具体的なメーカーまで幅広く解説しますので、導入でつまずかないためのヒントを見つけてください。
とりあえず話を聞きながら考えたい方やすぐにメーカーへ問い合わせをしたい方は、以下のボタンからお問い合わせください。担当者におつなぎいたします。
目次
ロボットコントローラの基本情報を解説
本章ではロボットコントローラの基本情報を紹介します。まずはロボットコントローラの概要を確認しましょう。
そもそもロボットコントローラとは?
ロボットコントローラとは、ロボットの動作を制御するための装置です。ユーザーが記述したプログラムの指令をもとに、ロボット本体の各関節やアクチュエーターがどのように動作すべきかを決定します。
命令をただ送るだけではなく、実際の動作状況やセンサー情報をリアルタイムで反映させながら制御していく点に特徴です。
従来は産業用ロボットに用いられるイメージが強かったですが、家庭用やサービスロボットの領域でも活用が進んでおり、今後さらに一般化が進むと考えられます。
プログラマビリティが高いため、用途に応じて多様な動作パターンを設定できることもロボットコントローラの強みです。
どうやって動いている?ロボットコントローラの仕組み・原理や構造
ロボットコントローラはプログラム入力とセンサー入力をもとに、内部の制御アルゴリズムがリアルタイムでロボットの動作を算出します。
算出された指令はモーターなどのアクチュエーターに伝えられ、ロボットの各部が正確かつスムーズに動くように調整されます。
この一連の流れを高速でおこなえるため、ロボットは複雑なタスクにも柔軟に対応可能です。
内部構造としては、高性能のCPUやメモリが搭載されており、大量のデータを処理しながら動作の指令を出します。
また、外部機器やネットワークと連携する通信モジュールや、安全に動作を停止させるための安全回路なども備えられています。
こうした構造的な特長を知っておくと、導入時やメンテナンスの際に適切な判断ができるようになるでしょう。
ロボットコントローラを10種類に分けてそれぞれの強みを紹介
一口にロボットコントローラと言っても、その種類は様々です。また、ロボットコントローラは種類ごとに特徴が異なるため、それぞれの違いを把握しておくと良いでしょう。
そこで本章では、ロボットコントローラを10種類に分類し、それぞれの特徴を解説します。
PLC(Programmable Logic Controller)
PLCは産業用オートメーションに広く使われるコントローラーであり、高い信頼性と耐久性を備えています。
プログラムの変更が容易で複雑な制御にも柔軟に対応できることが強みで、自動車製造や食品加工、化学工場などさまざまな分野で組立ラインや包装機の制御を担っています。
現場の環境条件に強い設計がなされているため、長期間にわたる安定稼働が期待できる点も特筆すべきポイントです。
CNC(Computer Numerical Control)
CNCはコンピュータ数値制御装置として機械加工の分野で広く活用されています。
複雑な形状や高い精度が要求される加工を自動で実行できるため、航空宇宙産業や金属加工、自動車部品製造などで重宝されます。
プログラムを使った自動化が進んでいることに加え、高精度な制御によってムダが少なく安定した品質を確保できることが強みです。
DCS(Distributed Control System)
DCSは分散制御システムとも呼ばれ、大規模なプロセス制御を必要とする現場で力を発揮します。
中央制御だけでなく複数の装置をネットワークで繋ぎ、それぞれに制御機能を持たせることでシステム全体の冗長性を高め、高い信頼性を実現します。
石油精製や発電所、化学工場など長時間稼働を要求される現場での運用に適しており、運転監視や緊急時の切り替えもスムーズに行える点が強みです。
SCADA(Supervisory Control and Data Acquisition)
SCADAは監視制御とデータ収集を行うシステムで、大規模インフラや工場などの遠隔監視に多く導入されています。
リアルタイムで膨大なデータを収集し、離れた場所からでも全体の状況を把握したり操作したりできるのが強みです。
例えば、水処理施設や電力系統、製造現場などで稼働状況を効率よくモニタリングし、異常発生時に迅速な対応を可能にします。
HMI(Human Machine Interface)
HMIは操作パネルやタッチスクリーンを通じて人間と機械を繋ぐインターフェースです。
直感的に操作できるよう設計されることが多く、グラフィカルな表示やリアルタイム情報の見える化によってユーザーの負担を軽減します。
自動車製造や食品加工、発電所などで扱いやすさと作業効率の向上に貢献しており、トラブルシューティングやメンテナンス作業時の人的ミスを減らす効果も期待できます。
PAC(Programmable Automation Controller)
PACはPLCとPCの機能を兼ね備えたコントローラーとして、高度な制御とデータ処理を同時に行える点が強みです。
複雑なアルゴリズムや大規模システムにも柔軟に対応できるため、自動車製造ラインのロボットや製薬プロセスなど、多彩な場面で導入が進んでいます。
拡張性に優れていることから、将来的なシステム拡大や変更にも適応しやすいというメリットがあります。
モーションコントローラ
モーションコントローラはロボットや工作機械などの動きを高速かつ高精度で制御するための装置です。
多軸制御やリアルタイムフィードバック制御が可能で、半導体製造や医療機器、自動車製造など、精密な動きや協調動作が求められる現場で利用されます。
動作のスムーズさと再現性を高いレベルで追求できるため、生産効率や製品品質を向上させられる点が強みです。
ロボットコントローラ
ロボットコントローラはロボットの多軸動作をプログラム通りに実行する専用のコントローラーで、高度なセンサー連動により環境に応じた動作が可能です。
自動車や電子機器製造の組立ロボットだけでなく、食品加工の包装ロボットなど、あらゆる産業での導入が進んでいます。
安全機能や緊急停止などの保護機能を備えていることも特徴で、人間との協働を見据えた運用が可能になります。
サーボコントローラ
サーボコントローラはサーボモーターの位置や速度を正確に制御する装置で、高精度かつ安定した動作を実現可能です。
自動車製造の塗装ロボットや医療分野の手術支援ロボット、半導体製造装置など、動作の誤差を最小限に抑えたい分野で多用されます。
フィードバック制御に優れているため、細かい軌道修正や定位置保持が求められるシーンでも活躍します。
ビジョンシステムコントローラ
ビジョンシステムコントローラはカメラと連携して画像処理を行う装置で、物体の認識や検査を高精度に実行します。
自動車製造の部品検査や食品加工現場の異物検知、電子機器製造の基板検査などで用いられ、AI技術と組み合わせることで複雑な判定も可能です。
リアルタイム処理を得意とし、生産ラインにおける作業品質を大幅に向上させる強みがあります。
手作業で行う場合と比較した際のメリット・デメリットを解説
ロボットコントローラは産業現場において自動化を進める重要な装置として注目されています。しかし、従来の手動作業と比べると良い点ばかりではなく、導入時に考慮すべき課題も存在します。
ここではロボットコントローラのメリットとデメリットを解説していきます。
ロボットコントローラのメリット
まずはメリットから確認していきます。
生産性の向上
ロボットコントローラを導入すると作業の自動化と効率化が進み、同じ時間でより多くの製品を製造できるようになります。
例えば、自動車製造ラインの組立作業や食品加工工場の包装工程などでは、スピードアップと安定した稼働により生産性が向上する点が魅力です。
品質の向上
ロボットコントローラは高精度な制御が可能で、作業のばらつきを抑えられます。
半導体製造や医療機器の組立など高い精密度を求められる現場でも安定した品質を維持できるため、不良品の発生率が低下し、最終製品の信頼性を高める効果が期待できます。
安全性の向上
危険な環境や作業に人が立ち入らなくて済むようになるため、労働災害のリスクを低減できます。
特に、化学工場での危険物の取り扱いや建設現場での重機操作など、人が従事すると負担や危険が大きい現場で特にメリットを発揮します。
ロボットコントローラのデメリット
続いてデメリットも見てみましょう。
初期導入コストの高さ
ロボットコントローラ装置の導入には高額な投資が必要です。装置の購入費に加え、設置やプログラミング、操作トレーニングなどの費用もかかるため、すぐに導入するにはハードルが高い側面があります。
ただし、長期的に見れば省人化や生産性向上によるコスト削減効果が期待できるため、費用対効果を検討しながら段階的に導入することが望ましいです。
専門知識の必要性
ロボットコントローラの操作やプログラムの作成には専門的な知識が求められます。操作方法やトラブルシューティングを誤ると、生産ラインが停止するリスクがあるため、社員への教育やマニュアル整備が欠かせません。
ただ、ユーザーフレンドリーなインターフェースを備えた装置を選ぶことで、導入初期の混乱を減らすことができるでしょう。
メンテナンスとアップデートの必要性
ロボットコントローラは定期的なメンテナンスやソフトウェアのアップデートが欠かせないため、運用コストがかかるという課題があります。
長期的に稼働させるためにも、予防保全の観点でスケジュールを組み、必要に応じてリモートメンテナンスや自動アップデート機能を活用することが重要です。
導入後に後悔しないためのロボットコントローラの選び方を解説
ロボットコントローラは種類や製品数が多いため、正しく導入できないと自社の導入目的を達成できず、導入後に後悔することになりかねません。
そこで、本章では適切なロボットコントローラを選ぶための選び方を解説します。
精度を重視する場合
ロボットコントローラの精度はセンサーの品質や制御アルゴリズム、機械的な設計に左右され、高精度を求められる作業には重要な選び方の一つです。精度が低ければ生産物の品質や寸法管理に誤差が生じ、最終製品に影響が及びます。
特に、半導体や医療機器など厳密な制度管理が求められる現場では、精度の高いコントローラを導入することで不良率が低下し、信頼度の高い製品を供給できるようになるでしょう。
速度を重視する場合
コントローラの速度はモーターの性能と制御ソフトウェアの最適化が鍵を握り、高速生産ラインを構築する際には外せない要素です。
制御速度が遅ければサイクルタイムが延びてしまい、生産効率の低下やコスト増につながります。一方で高速制御を確保できれば、大量生産の現場や短納期対応が求められる業界でのスループット向上に寄与し、迅速かつ安定した稼働が実現できるでしょう。
耐久性を重視する場合
過酷な環境下や長期運転を想定するなら、堅牢な設計や高品質な部品を用いた耐久性の高いコントローラを選ぶことが大切です。
耐久性が低ければ故障リスクやメンテナンス頻度が増加し、そのたびに稼働停止や修理コストが発生します。そのため、長期間にわたる安定稼働を目指す現場では、耐久性の検討がトータルコストの削減と生産ラインの安定稼働につながるでしょう。
柔軟性を重視する場合
一つの生産ラインで多品種少量生産をこなす必要がある場合や、将来的に異なる作業内容へ切り替える予定がある現場では、柔軟性の高いコントローラが有利です。
プログラムのカスタマイズが容易であったり、多様なインターフェースに対応していたりすることで、突然の仕様変更にも即座に対応できます。
この柔軟性が低いと新たなプロジェクトに合わせた機能追加が困難となり、変更のたびにコントローラを買い替えるような非効率が発生します。
安全性を重視する場合
人との協働が多い作業環境や危険物を扱う現場では、安全機能が充実したコントローラを導入することでトラブルや事故を抑えられます。
例えば、センサー配置や緊急停止機能などが不十分だと、作業者や設備に重大なリスクが及ぶ恐れがあります。安全に配慮したコントローラを選ぶことで、従業員の安心感を高めるだけでなく、万一のトラブル対応や保険コストなども抑えられるでしょう。
互換性を重視する場合
既存の生産ラインや機器と連動させる際には、通信プロトコルやインターフェースの互換性が欠かせません。
互換性が低いコントローラを導入すると、システム全体の改修や大掛かりな工事が必要になり、稼働再開までの時間とコストが膨大になる可能性があります。
以上より、スムーズなシステム連携を図りたい場合は、必ず対応プロトコルやインターフェース仕様を事前に確認することが大切です。
拡張性を重視する場合
将来的なライン拡大や新機能の追加を見越している現場では、拡張性の高さが導入後の使い勝手を左右します。
モジュール設計が採用されているコントローラや、ソフトウェアアップデートで機能を追加できるタイプであれば、状況に応じて必要な要素を付け足していける利点があります。
逆に拡張性が低いコントローラを導入すると、アップグレードのたびに全面リプレースが必要になるリスクが高まります。
メンテナンス性を重視する場合
長期間にわたって安定稼働を続けるには、定期的なメンテナンスが欠かせません。設計がシンプルで部品の入手性が良いコントローラを選べば、保守点検や修理を短時間で済ませられます。
一方で、メンテナンス性が低い製品を選んでしまうと、故障時の対応に手間がかかり、停止時間が増加するため、生産スケジュールに影響を及ぼす可能性があります。
ユーザビリティを重視する場合
操作性の高いコントローラは、現場スタッフが短時間で習熟できるため、立ち上げから安定稼働までのスピードを上げられます。
インターフェースが複雑だと、操作ミスやトラブルが増え、現場スタッフの負担も大きくなります。特に新規導入時や経験の浅いスタッフが多い職場では、ユーザビリティを重視することで教育コストの削減とエラー防止につなげられるでしょう。
サポート体制を重視する場合
メーカーやサプライヤーのサポートポリシーと技術対応力は、導入後の安定稼働を左右する重要な要素です。
トラブル発生時に迅速なサポートを受けられないと、復旧までに時間がかかり、生産ダウンの影響が大きくなります。
新しいシステムや技術を現場に取り入れるなら、充実したサポート体制を備えたコントローラを選ぶことで、安心して運用を続けることができるようになります。
おすすめのロボットコントローラメーカー紹介!各社の強みはどこ?
国内外には多くのロボットコントローラメーカーが存在しますが、目的や導入環境によって適した製品は異なります。ここではおすすめメーカーの概要と強みを簡単に紹介します。
株式会社オーロテック
1938年創業の老舗企業で、長年にわたりロボットコントローラを製造してきた実績があります。
主力製品であるTS5000シリーズは高い信頼性と耐久性が特徴で、自動車製造業や電子機器製造業にも多く導入されています。安定稼働に重点を置きたい現場で選ばれ続けている点が強みです。
株式会社安川電機
1915年創業の大手企業として知られ、ロボットコントローラの分野では世界的に有名です。
YRC1000シリーズは高速な処理能力と柔軟なプログラミング性を兼ね備え、自動車製造業から食品加工業まで幅広い分野で活躍しています。多彩なオプションが用意されているため、多様なライン構成に対応しやすい点も魅力です。
株式会社TCC
1955年創業の企業で、パレタイジングロボットコントローラを主力製品として展開しています。
高精度と効率性を両立させた制御技術が特徴で、食品加工業や製薬業といった繊細な搬送が求められる現場での導入事例が豊富です。複雑なワーク搬送にも対応できる安定感が評価されています。
株式会社ヤマハ発動機
1955年創業の大手メーカーでありながら、ロボットコントローラの開発でも存在感を示しています。
RCXシリーズは高速かつ高精度な制御が可能で、自動車製造業や電子機器製造業での採用が進んでいます。モーター技術のノウハウを活かした動作の安定性は、長時間稼働が必要なラインで特に有効です。
株式会社オムロン
1933年創業の大手企業として、幅広い分野に制御機器を提供してきた実績があります。
NXシリーズは高い信頼性と柔軟なシステム構築を可能にしており、自動車製造業や食品加工業で多く導入されています。ユーザーフレンドリーな設計も特長で、現場担当者の負担を軽減しながら高いパフォーマンスを実現可能です。
株式会社平田機工
1946年に創業し、産業用ロボットを中心に製造してきた企業です。
HNCシリーズは高速かつ高精度な制御が魅力で、自動車製造業や電子機器製造業など品質管理が厳しい分野でも採用されています。独自の技術開発と豊富な導入事例を活かし、生産ラインの効率化をサポートしています。
株式会社シヤチハタエンジニアリング
2019年創業の新興メーカーで、ロボットコントローラ開発に積極的に取り組んでいます。
SECシリーズには高度なAI機能が搭載されており、自己学習を通じて最適な動作パターンを導き出す点が強みです。医療機器製造業や物流業界での導入事例が増えており、新技術を採用した自動化に興味がある企業から注目されています。
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