シーム溶接ロボット
シーム溶接ロボットは、鋼板やパイプといった長尺部材の連続溶接に適した産業用ロボットで、均一で高精度な接合が求められる製造現場におすすめです。
しかし、対象物の材質や形状、生産環境に応じて最適なロボットを選ばなければ、溶接品質のばらつきや生産効率の低下につながるリスクもあります。
この記事では、シーム溶接ロボットの基本的な仕組みや導入メリットに加え、具体的な選び方のポイントをわかりやすく解説。また、業界で信頼される代表的なメーカーとその特徴についても紹介します。自社に最適なロボット導入のために、ぜひ参考にしてください。
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シーム溶接ロボットとは? 特徴や活用分野、メリット・デメリットなどを解説
シーム溶接ロボットとは、連続的な溶接作業を自動化するための産業用ロボットで、母材の接合部に沿って連続的に抵抗を用いた溶接を行います。
主に鋼板や円筒状部材など、長尺で連続した溶接ラインが求められる場面で使用され、自動車やタンク、パイプライン製造などの分野で広く導入されています。
人手による連続溶接では均一性の確保が難しい一方で、ロボットによるシーム溶接は一定の速度と圧力で安定した接合品質を維持できる点が特徴です。
シーム溶接ロボットのメリットとデメリットは以下のとおりです。
ここまで、シーム溶接ロボットの特徴とメリット・デメリットについて紹介しました。次の章では、シーム溶接ロボットと関係のある、溶接ロボットの種類を解説します。
シーム溶接ロボットには並列の関係にある溶接ロボットがほかにも3種類あります。シーム溶接ロボットを選択する前に知っておくとよい情報ですので、そもそも溶接ロボットを導入するかどうか検討されている段階の方はぜひお読みください。
シーム溶接ロボットと並列関係にあるほかの種類を解説
シーム溶接ロボットには、並列の関係にある溶接ロボットがほかにも主に3種類存在します。それぞれの溶接ロボットについて、その特徴とメリット・デメリットをここでは解説します。詳しい説明については各溶接ロボットの個別記事をご参照ください。
アーク溶接ロボット
アーク溶接ロボットは、電極と母材間にアークを発生させ、その熱で金属を溶融・接合するロボットです。多関節ロボットにトーチを装備し、自動車部品や建設機械部品のような複雑形状にも対応可能です。
アーク溶接ロボットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

スポット溶接ロボット
スポット溶接ロボットは、電極で加圧しながら電流を流すことで金属の局所を溶接するロボットです。自動車の車体骨格の組立工程など、大量生産における繰り返し作業に適しています。
スポット溶接ロボットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

レーザー溶接ロボット
レーザー溶接ロボットは、高出力のレーザー光を照射し、金属を瞬時に溶融させて接合する溶接ロボットです。高精度な薄板加工や微細な部品の接合に適しており、電子部品や精密機器の分野でも採用が進んでいます。
レーザー溶接ロボットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

ここまで、溶接ロボットの種類について紹介しました。次の章では、シーム溶接ロボットを選ぶ際のポイントについて説明します。
導入を検討する際の考慮ポイント|シーム溶接ロボットの選び方
シーム溶接ロボットの導入を検討する際、多くの企業はSIerや販売代理店と連携してプロジェクトを進めるのが一般的です。しかし、導入を円滑に進めるためには、事前に最低限の知識を持っておくことが重要です。そこで本章では、シーム溶接ロボットを選定・導入するうえで押さえておきたい主要なポイントをわかりやすく解説します。
ロボット本体の技術仕様
シーム溶接ロボットを選定する際は、対象製品の形状やサイズ、必要とされる溶接精度といった複数の要因に基づいて、選定基準が変わってきます。
例えば、溶接位置の精度、ロボットの可動範囲や速度、さらにはシーム溶接における品質を一定に保つための機能(たとえばトーチの保持精度や温度管理機能など)を十分に考慮せずに選定を行った場合、溶接品質が不安定になります。
結果として、稼働効率の低下、メンテナンスコストの増加、不良品の増加といったリスクが生じ、生産ライン全体に負荷を与えかねないので注意しましょう。
特に、高精度な溶接が求められる製品や、長時間の連続運転を行う生産体制、複雑な形状や多様な素材を扱う工程では、この項目を重視しましょう。
適切に選定されたシーム溶接ロボットを導入することで、溶接品質の維持、不要なダウンタイムの抑制、長期的な運用コストの削減、さらには全体の作業効率の最適化が期待できます。
加工対象との適合性
使用する電流や電圧の要件に適合するか、ロボットの可動範囲が求められる工程に対応しているか、さらに安定した溶接条件を提供できる制御システムが搭載されているかといった点も重視する必要があります。
これらは、溶接対象となる部品の特性(たとえば薄板か厚板か)、求められる精度(たとえば仕上がり品質)、および設備の稼働環境(温度や湿度など)によって大きく左右されます。
こうした観点を考慮せずにシーム溶接ロボットを選定すると、溶接の不良や品質のばらつきが増加し、製品の不良率が高くなる可能性があります。その結果、納期の遅延や顧客からのクレームの増加といった事態を招きかねません。
この点に慎重になることで、より一貫した品質の溶接が実現でき、長期的には生産効率の向上と安定した製品供給を維持することが可能となります。精度が求められる自動車部品や航空機部品の製造現場、または品質を一定に保ちながら大量生産を行う製造ラインにおいて特に重要です。
設置環境と運用耐性
作業環境における温度や湿度への対応力、ロボットの長期間にわたる耐久性、さらに必要とされる溶接速度および精度に適したトーチやフィードバック機能を選定することが重要です。
以上のような検討項目は、使用する部品の材質(金属や合金の種類)、要求される溶接速度(高速かつ精密な対応が求められるかどうか)、そしてロボットが稼働する環境の厳しさ(高温・低温、粉塵や湿気の多さ)といった要因により決定されます。
これらを考慮せずに機種を選定した場合、溶接不良や品質のばらつきが発生しやすくなり、その結果として不良品率が増加し、生産ライン全体の効率が大きく低下する恐れがあります。
一方で、適切な仕様のロボットを選定すれば、溶接プロセスの安定性が向上し、トラブルや手直しの発生を抑えることができ、生産効率と製品品質の両面で優れた成果が期待されます。
高精度で安定した品質が求められる精密部品の製造現場や、温度変化や湿気などの影響を受けやすい過酷な環境下でのロボット運用を行う工場においては、この項目をしっかり検討しましょう。
編集部おすすめのシーム溶接ロボットメーカー
本章では、シーム溶接ロボットを手がけるメーカーの中から、JET-Global編集部が注目する企業をご紹介します。ここまでの内容で、シーム溶接ロボットの基本的な理解は深まったかと思いますが、実際にどのような企業が製造に携わっているのかまでは把握しづらいこともあるでしょう。そんなときは、以下のメーカー情報を参考に、選定の第一歩としてお役立てください。
不二越 / Nachi-Fujikoshi
メーカー名 | 不二越 / Nachi-Fujikoshi |
設立年 | 1928年 |
本社 | 東京都港区 |
概要 | 切削工具・ベアリング・油圧機器・産業用ロボットなどを手掛ける総合機械メーカー |
不二越は、1928年に東京都港区に設立された、切削工具・ベアリング・油圧機器・産業用ロボットなどを手掛ける総合機械メーカーです。素材開発から製品化まで一貫して手掛けることができる体制を整えており、とりわけ特殊鋼の内製化により材料特性を最適化できる点に強みがあります。
不二越はロボット本体にST210F-01を使用したロボットシーム溶接機を製造しています。3000Hz MFインバータ溶接トランスを採用することで従来品と比較して重量を40kgから9kgへと78%軽量化しているほか、溶接速度に応じて電流と加圧力を自動で最適化できるため、アルミニウムなど異種材料の接合にも対応できるのが強みです。
具体的な導入事例としては、自動車業界や家電製造、さらにエネルギー関連分野など、金属部品の高精度な接合が求められる産業分野での活用が進んでいます。
電元社トーア / DENGENSHA TOA
メーカー名 | 電元社トーア / DENGENSHA TOA |
設立年 | 1935年 |
本社 | 神奈川県川崎市 |
概要 | 抵抗溶接機・シーム溶接機を中心とした総合接合機メーカー |
電元社トーア は、1935年に神奈川県川崎市に設立された、抵抗溶接機・シーム溶接機を中心とした総合接合機メーカーです。同社は、長年の実績と信頼により、国内の抵抗溶接機市場でトップシェアを誇る点に強みがあります。
電元社トーアは、MOTOMAN-SP210(安川電機)を使用したロボットシーム溶接機を展開しています。大電流・高速回転下においても安定した溶接品質を保ちつつ、メンテナンスフリーを実現している点が特徴です。さらに、ロボットによる加圧・回転の一括制御や電極径の自動計測機能などを備えていることも強みです。
同社のロボットシーム溶接機は、自動車産業をはじめ、鉄道や製鉄業界など、幅広いものづくり分野に導入されています。
以上、おすすめのシーム溶接ロボットメーカーを紹介しました。ここまで読み進めて、さらに詳しいことを知りたい方は以下のボタンよりJET-Globalに問い合わせてみてください。専門家にお繋ぎします。
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