搬送ロボット

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搬送ロボットは、物流や製造業、医療現場などで、物品の自動運搬を効率化する画期的な技術です。搬送ロボットを導入すると、作業の精度や安全性を向上させるだけでなく、24時間稼働し、作業の高速化と効率化が期待できます。

特に、AIやセンサー技術を活用した自律移動機能が搭載されたロボットは、複雑な環境でも柔軟に対応可能です。搬送ロボットの導入は、労働力不足の解消や作業環境の改善にも貢献します。

この記事では、搬送ロボットの種類や特徴、導入事例を詳しく解説し、おすすめのメーカーも紹介します。搬送ロボットの導入を検討されている方はぜひご一読ください。

目次

搬送ロボットとは? 特徴や活用例などを解説

搬送ロボットの特徴と活用先

搬送ロボットとは、工場内にある物品の移動や搬送のフローを自動化するための産業用ロボットのひとつです。製造業、物流業、医療現場などで多くの活用が進んでいます。これらのロボットは、従来の人手による運搬作業を効率化し、安全性や精度を向上させることができます。

特徴としては、24時間稼働が可能である点、作業の高速化・効率化が実現できる点、人手不足の解消や労働環境の改善に貢献する点が挙げられます。また、センサー技術やAIを活用した自律移動が可能なロボットも登場しており、より複雑な作業や環境にも適応しています。

搬送ロボットの種類ごとにメリット・デメリットを解説

搬送ロボットの種類とメリット・デメリット

この章では、搬送ロボットを「地上走行型」「天井吊り下げ型」「ドローン型」の3種類に分類し、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。搬送方法や設置環境に応じて最適なタイプを選ぶことで、作業の効率化と安全性向上が期待できます。

地上走行型

地上を走行して荷物を搬送するタイプのロボットで、倉庫や工場などで広く活用されています。ここでは、AGVとAMRの2種類を紹介します。

AGV(Automated Guided Vehicle)

AGVは、決められたルートに沿って走行するタイプの搬送ロボットです。磁気テープや誘導線、QRコードなどをガイドにして動作します。

メリット

  • ルートが固定されており、安定した運搬が可能
  • 長時間の稼働が可能で、人手を削減
  • 荷物の運搬における安全性が高い

デメリット

  • ルート外の移動ができず、柔軟性に欠ける
  • レイアウト変更時に対応が難しい
  • 導入時に初期コストがかかることがある

AGVについてより詳しく知りたい方は、AGVに特化した以下の記事をご覧ください。

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AMR(Autonomous Mobile Robot)

AMRは、センサーとAIを活用して自律走行するタイプの搬送ロボットで、リアルタイムで周囲を認識しながらルートを決定します。

メリット

  • 障害物を回避して柔軟にルート変更が可能
  • 施設レイアウトの変化にも対応しやすい
  • 複雑な環境でも高精度な搬送が可能

デメリット

  • 高度なセンサーとAI制御により、初期導入コストが高い
  • 導入後の設定・運用に専門的な知識が求められる
  • 動作制御においてメンテナンスが複雑になることがある

AMRについてより詳しく知りたい方は、AMRに特化した以下の記事をご覧ください。

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天井吊り下げ型

天井レールを走行し、上部から搬送を行うロボットです。クリーンルームやスペースの有効活用が求められる環境に適しています。

メリット

  • 床面スペースを有効活用できる
  • 人との動線を分離でき、安全性が高まる
  • クリーンルームなど特殊環境にも対応可能

デメリット

  • 天井設備やレールの設置にコストがかかる
  • 導入後のレイアウト変更が難しい
  • 天井構造によっては設置が困難な場合もある

天井搬送ロボットについてより詳しく知りたい方は、天井搬送ロボットに特化した以下の記事をご覧ください。

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ドローン型

ドローン型は、上空を飛行して物品を搬送するタイプのロボットで、工場や倉庫内の空間を活用しながら、人や設備と干渉せずに荷物を移動させることができます。地上の通路が混雑している現場や、縦方向の搬送が必要なケースにおいて活躍します。

メリット

  • 地上の障害物や作業員の動線に影響されずに搬送できる
  • 棚上や2階など、上下階への搬送に対応可能
  • 既存の通路や設備の改修が不要な場合がある

デメリット

  • 積載量が限られ、大型や重量物には不向き
  • 飛行安定性の確保や安全対策に配慮が必要
  • 屋内でも上空スペースや天井構造に制約を受ける

搬送ロボットの用途|病院での使用例を詳しく紹介

搬送ロボットの病院での具体例

搬送ロボットは工場での使用が多くの場合イメージされやすいですが、ほかにも病院での利用も進んでいます。病院での搬送ロボットは、物品や医薬品、検体などの移動作業を効率化する重要な役割を果たします。例えば、テムザックの自動搬送ロボット「DeliRo」は、病院内で薬剤や検体を安全かつ迅速に搬送します。

これにより、医療スタッフは物品を手動で運ぶ手間から解放され、患者ケアに専念できるようになります。さらに、このロボットは自動でエレベーターを呼び、ドアを開ける機能を備えており、病院内での移動がスムーズに行えます。

また、三菱電機が提供する搬送ロボットも、病院内の物品搬送を効率化するために導入されており、特に医療現場での作業負担を軽減しています。ロボットは複数のフロアを自動で移動し、薬剤やサンプルを搬送するため、スタッフの移動時間が大幅に削減され、病院内での業務効率向上が期待できます。

参考①:下野新聞「獨協医大病院が自走型搬送ロボット導入 「ドッポー1号」お披露目、約600人分の検体を運送」, 最終閲覧日2025/4/1.
参考②:tmsuk「リリース|病院向け「自動搬送ロボット」を淡海医療センターへ全国初導入」, 最終閲覧日2025/4/1.
参考③:三菱電機「院内搬送ロボット活用ソリューション」, 最終閲覧日2025/4/1.

ウエハ搬送ロボットとは? ここまで解説したロボットとの違い

ウエハ搬送ロボットと搬送ロボットの違い

搬送ロボットの中には、ウエハの搬送に特化した搬送ロボットも存在しています。このウエハ搬送ロボットは、半導体製造業において要求される水準を満たしている点で、非常に重要な役割を果たしています。というのも、ウエハの表面に微細な傷がつくことを避けるため、搬送ロボットには特別な設計が求められるからです。ウエハは非常に薄く、繊細なため、その取り扱いには極めて高い精度が必要です。

ウエハ搬送ロボットは、クリーンルーム仕様であり、空気中の微粒子からウエハを保護することができます。また、ロボットの動作には振動管理が非常に重要で、わずかな振動でもウエハに影響を与える可能性があるため、振動を最小限に抑える技術が必要です。こうした技術を採用して、半導体製造のニーズに応えられるよう製造されているのがウエハ搬送ロボットです。

搬送ロボットの選び方|導入の際の比較ポイント

搬送ロボットの選び方

搬送ロボットなどの産業用ロボットを導入する際には、基本的にSIerに依頼をすることが多いですが、相談するにあたって基本的な知識がないとスムーズな導入に支障が生じます。この章では、搬送ロボットを導入するにあたって押さえておくとよいポイントをまとめています。

運搬する物のサイズ、重量、搬送距離、工場内のレイアウト

搬送ロボットの選ぶ際は、運搬する物のサイズや重量、搬送距離、ラインの柔軟性、そして工場内のレイアウトに適したタイプを基準として検討することが重要です。これらはすべて、搬送する製品の特性や、工場内のスペース制約、他設備との干渉回避、さらに将来的なライン拡張の可能性といった複数の要因に依存して決定されます。

選定を誤ってしまうと、搬送効率の低下を招き、製造ライン全体の流れが滞る原因となります。その結果、作業の停滞や手戻りが発生し、生産性が下がるとともに、余計なコストが発生する恐れがあります。特に、ライン構成が複雑であったり、特殊形状の部材を扱う現場においては、搬送ロボットの仕様選定を慎重に行いましょう。

適切な選定を行えば、作業工程の自動化が進み、人的ミスの削減、工場内スペースの有効活用、そして運用コストの抑制といった多面的な効果が期待できます。

稼働環境の安全性や、他の機器との相互運用性、メンテナンスのしやすさ

稼働環境の安全性や、他の機器との相互運用性、さらにはロボットのメンテナンスのしやすさを重視することも大切です。これらの選定基準は、工場内での機器の配置やメンテナンス体制、使用する環境、さらには従業員の技術力や教育の状況といった要因によって大きく左右されます。

これらの観点を考慮せずに搬送ロボットを導入してしまうと、安全性の問題が生じる可能性や、他の設備との非効率な連携、メンテナンスコストの増加といった問題が発生し、全体的な運用に支障をきたすことがあります。したがって、過酷な環境や、メンテナンスに手間がかかる設備が多い場合には、これらの要因を特に重視して選定することが重要です。

適切に選定された搬送ロボットを導入することで、機械の故障リスクを抑えつつ、安全で効率的な生産環境を実現し、長期的に安定した運用が可能となります。

導入後の柔軟性やスケーラビリティ

可搬重量、速度、精度、必要な搬送能力に加えて、導入後の柔軟性やスケーラビリティも重要です。なぜなら、この選定は企業の成長計画や、今後の製品ラインの拡張予測、さらには新技術の導入に対する適応能力といった要因を考慮した上で決まるためです。

これらの観点を十分に考慮せず短期的な要件だけで選定した場合、将来的な需要の増加や新たなライン追加に対応できなくなり、結果として追加投資や機器の再導入が必要となる可能性があります。したがって、事業拡大や新たな生産ラインの追加を見据えている場合には、柔軟性やスケーラビリティを重視して機種を選定することが重要です。

適切な搬送ロボットであれば、将来的な変更や需要増にも対応可能な運用範囲が確保され、長期的にコストパフォーマンスが向上し、拡張性のある生産体制を維持できます。

JET-Global編集部がおすすめする搬送ロボットメーカー

搬送ロボットのおすすめのメーカー

ここでは、搬送ロボットを開発・製造しているおすすめのメーカーを紹介します。搬送ロボット導入を検討していて、どのメーカーが良いのか検討する際にぜひここにある情報を活用してください。

ラピュタロボティクス / Rapyuta Robotics

メーカー名 ラピュタロボティクス / Rapyuta Robotics
設立年 2014年
本拠地 東京都江東区
概要 ロボットプラットフォーム開発企業

ラピュタロボティクスは、2014年に東京都江東区に創業されたロボットプラットフォーム開発企業です。世界最先端の制御技術および人工知能技術を活用したクラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」を提供し、多様なロボットを統合して制御できる能力に強みを持っています。

ラピュタロボティクスは「ラピュタPA-AMR(ピッキングアシストAMR)」という搬送ロボットを製造しています。ラピュタPA-AMRは、他のメーカーと比較して、群制御技術により、複数のロボットが効率的に動作し、業務の生産性向上が可能という強みがあります。

具体的な導入業界としては、物流業界で、自動化ソリューションとして大手事業会社に導入されています。

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※一部メーカーとは正式な提携がない場合がありますが、ユーザーの皆さまに最適なご案内ができるよう努めています。

村田機械 / Murata Machinery

メーカー名 村田機械 / Murata Machinery
設立年 1935年
本拠地 京都府京都市
概要 自動化機器メーカー

村田機械は、1935年に京都府京都市に繊維機械メーカーとして設立された、自動化機器メーカーです。世界に誇る技術力と、幅広い知識を持つ従業員による多様な製品開発力に強みを持っています。

村田機械は、「スマートAGV Premex XIO」という搬送ロボット(AGV)を製造しています。このスマートAGV Premex XIOは、他のメーカーと比較して、複数のAGVを同時に制御することで生産性向上を実現できる点や、立体式AGV倉庫での省スペースな保管が可能である点が特徴です。

具体的には食品・飲料、医薬品などの分野で活用されています。

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※一部メーカーとは正式な提携がない場合がありますが、ユーザーの皆さまに最適なご案内ができるよう努めています。

ヤマハ発動機 / Yamaha Motor

メーカー名 ヤマハ発動機 / Yamaha Motor
設立年 1955年
本拠地 静岡県磐田市
概要 輸送用機器および産業用ロボットメーカー

ヤマハ発動機は、1955年に静岡県磐田市に設立された、輸送用機器および産業用ロボットメーカーです。グローバルに展開する研究開発体制や、独創的な先進技術力に強みがあります。

ヤマハ発動機は、リニアコンベアモジュール「LCMR200」や「eve auto」といった搬送ロボットを製造しています。これらの製品は、他のメーカーと比較して、高速かつ高精度な搬送が可能で、生産性の向上に貢献できる点や、設備のコンパクト化と省スペース化を実現しながら、多品種対応を容易にする点が特徴です。

これまで導入されてきた業界としては、主に製造業や物流業などが挙げられます。

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Locus Robotics / ローカスロボティクス

メーカー名 Locus Robotics / ローカスロボティクス
設立年 2014年
本拠地 アメリカ マサチューセッツ州
概要 自律移動ロボット(AMR)メーカー

ローカスロボティクスは、2014年にアメリカ・マサチューセッツ州に設立された自律移動ロボット(AMR)メーカーです。そして、高度なナビゲーション能力を活かして倉庫内のピッキング作業を効率化し、人間との協働によって生産性を向上させる点に強みがあります。

ローカスロボティクスは、「LocusBots」や「Locus Origin」といった搬送ロボットを製造しています。これらのロボットは、他のメーカーと比較して、高いナビゲーション能力により、複雑な倉庫環境でも自動化を可能にする点や、高度なメンテナンスおよびリサイクル技術によってロボットの寿命を延ばし、ESGに配慮した運用ができる点が特徴です。

具体的な導入事例としては、DHL Supply Chain、GEODIS、Radial、VF Corporationなどの大手企業で活用されています。

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