J-AGRI 展示会レポート~農業の自動化のイマとミライ~
今回JET-Roboticsの駒木が取材したのは、2025年10月1日~3日にかけて、幕張メッセで開催された「J-AGRI(農業WEEK)」です。JET-Roboticsとしては初の“農業”展示会レポートです。会期中は、農薬散布ドローンや果樹園向け地上走行ロボット、そして既存機を“ロボット化”する後付けシステムなど、スマート農業のいまが集約されていました。
本記事では、「ロボットだけにとらわれない“自動化の現在地”」という視点で、J-AGRIで見た注目展示をレポートします。J-AGRIは年2回(5月:グランメッセ熊本/10月:幕張メッセ)開催の農業・畜産の総合展です。
今回訪問した場所
J-AGRI(農業WEEK)
- 場所:幕張メッセ(千葉)
- 開催期間:2025/10/1–10/3

「J-AGRI」で見えた、農業自動化の現在地

会場では、開発中~販売中まで多様なロボット/自動化装置が並びました。実用化が進むカテゴリとして「路地野菜・水田向けの農薬散布ドローン」と「果樹園向けの地上走行ロボット(搬送・散布・除草)」が特に目立ち、収穫ロボットは「開発中~一部地域で実運用」という段階の出展が中心でした。
そもそも「自動化装置」と「ロボット」の境界は曖昧です。人手→自動化装置→ロボットと段階的に進化していく事例も多く、いまの自動化を知ることは、次のロボット化の可能性を読むうえで大きなヒントになります。
除草ロボットの現在(ラジコン型と自律型)|SNSolutions/玄海農財通商
写真:会場にあった展示機(イメージ)
韓国メーカーSNSolutionsの除草ロボットを、玄海農財通商のブースで確認。出展機はエンジン搭載の遠隔操作(ラジコン)型で、人が操作する前提のソリューションです。単純ながら負荷の大きい「雑草処理」を効率化する実装段階のアプローチと言えます。担当者によれば、自動走行モデルや、早朝・夜間運用を見据えた静音性の高いバッテリー走行型も開発中とのこと。※詳細仕様は未公表。SNSolutionsはAI認識を用いた自律除草の研究開発を公表しています。
既存の除草機を“ロボット化”する後付けシステム|東日本計算センター
※画像はイメージです
東日本計算センターは、ラジコン仕様の除草機に取り付けて自動走行化できるプラットフォームを出展。高精度3Dマップ×ネットワークRTK×画像認識AIを活用し、草刈り機の自動運転を実現するコンセプトを紹介していました(同社発表)。既存装置を活かすアプローチは投資最適化の観点で魅力的で、(価格は未確認のため筆者の想像)フルロボットより初期費用を抑えられる可能性も感じました。
斜面での収穫に強い、“歩いてついてくる”搬送ロボット|かぞDXファーム&ロボッツ

かぞDXファーム&ロボッツのブースでは、車輪やクローラではなく多脚で歩行するタイプの搬送ロボットを確認。人の後ろを追従しながら斜面地でも安定搬送できる設計で、荷台は常に地面と水平を保つ機構を採用。みかん畑や茶畑といった傾斜地での運用にフィットする印象でした。※同社は一次産業向けロボットの開発・農作業受託も展開。
“植物工場での自動化のカタチ”苗の植え替えの自動化|椿本チエイン

椿本チエインは、苗の移植・定植工程を自動化する装置を展示。対象は主に室内(植物工場など)で、栽培パネル仕様に応じてハンド数を最適化し、コンパクトな装置サイズで省人化・高速化を図るというもの。植物工場の運用効率を押し上げる“屋内自動化”の代表例として注目しました。
展示の要点(ダイジェスト)
- 除草ロボットは「遠隔操作」から「自律」へと段階的に移行中:RC型の普及と、自律化(RTK・3Dマップ・AI)へのシフトが併走。
- “後付け”で既存機を活かす発想が台頭:投資額・運用変更を抑えつつ自動化に踏み出せる。
- 屋外=搬送・除草、屋内=育苗・移植の自動化が進展:利用環境に応じたロボティクスの適用が拡大。
まとめ
J-AGRI 2025は、「作業の一部を自動化→将来的にロボット化へ」という進化の筋道が目立ち、特に除草分野はラジコン型の実装成熟と自律化が同時進行していました。屋内では苗の移植といった工程自動化が着実に前進。自動化装置とロボットの境界は目的ベースで溶け合い、現場最適から段階的に拡張していく——そんな未来像を強く感じた取材でした。
1社目(1/2):除草ロボットの現在(ラジコン型と自立型)|SNSolutions /エスエヌソリューションズ
| メーカー名 | SNSolutions /エスエヌソリューションズ |
| 設立年 | 2019年 |
| 本社 | 韓国・慶尚北道安東市豊川面 Cheonyeonforest-ro 7-19 Hwa-Inビジネスタウン301/302号 |
| 概要 | 遠隔操作型の除草ロボット「Dabear」などを展開。RTK等を活用した自律化にも取り組み。 |
1社目(2/2):除草ロボットの現在(ラジコン型と自立型)|玄海農財通商 / Genkai Agri-Tech Trading
| メーカー名 | 玄海農財通商 / Genkai Agri-Tech Trading |
| 設立年 | 2024年 |
| 本社 | 福岡県福津市中央5丁目6-30 |
| 概要 | 農業資材・機械に関するコンサルティングおよび企画・輸入・販売。 |
2社目:既存の除草機をロボット化するシステム|東日本計算センター / East Japan Accounting Center
| メーカー名 | 東日本計算センター / East Japan Accounting Center |
| 設立年 | 1965年 |
| 本社 | 福島県いわき市平字研町2 |
| 概要 | システム開発、システムインテグレーション、ソリューションサービス、セキュリティコンサル、BPOなどのICTサービス。 |
3社目:斜面での収穫でも安心、歩いて着いてくる搬送ロボット|かぞDXファーム&ロボッツ / Kazo DX-farm and Robots
| メーカー名 | かぞDXファーム&ロボッツ / Kazo DX-farm and Robots |
| 設立年 | 2019年 |
| 本社 | 埼玉県加須市琴寄115番地5 |
| 概要 | 農産物の生産・販売、ICT農機やドローンによる農作業受託、一次産業向けロボット/ITソリューションの開発。 |
4社目:苗の植え替えを自動化する装置|椿本チエイン / Tsubakimoto Chain
| メーカー名 | 椿本チエイン / Tsubakimoto Chain |
| 設立年 | 1941年 |
| 本社 | 大阪市北区中之島3-3-3中之島三井ビルディング |
| 概要 | 動力伝動製品、モーションコントロール、搬送システムなどの製造・販売。 |
今回訪問した場所
J-AGRI(農業WEEK)
- 場所:幕張メッセ(千葉)
- 開催期間:2025/10/1–10/3
